ひかりJに感じる業界の歪み

【転載】この記事は、2017年1月20日にMediumにて公開した記事です。文脈を整えるため一部加筆修正を行なっています。内容は当時のものであり、現状と異なる可能性があります。

「ひかりJ」というものをご存知だろうか。"ひかり"から連想される通り、ブロードバンドサービスの一つだ。2015年8月7日から開始された、日本ネットワークイネイブラー株式会社(以下、JPNE)が提供する、NTT回線を使用した所謂『光コラボレーション』の一つである。

2015年に始まっていながら、私がこのサービスを知ったのはつい最近の話である。TwitterのTLで「KDDIからひかりJのDMが届いた」といったツイートが流れてきたのだ。

それ以前にもちょこちょこ名前は出ていたようだが、さほど大きな話題になる程でもなかった。

さて、ここで一つ疑問に思わなかっただろうか?そう、JPNEからではなくKDDIからDMが届いている(らしい)のだ。

日本ネットワークイネイブラー株式会社?

少なくとも私は聞き覚えがなかった。調べてみると、2010年2月24日に「ブロードバンドアクセスエクスチェンジ企画株式会社」という商号で、資本金20億円で設立されている。同年8月30日に現商号に変更され、この日が発足日になっている。

私が注目したのは株主で、記述順に『KDDI』『JPIX』『BIGLOBE』『nifty』『AsahiNet』『ARTERIA Networks』の6社になっている。このうち、BIGLOBEは2017年1月31日にKDDIの完全子会社となり、niftyも買収交渉に入っているとの報道がある。

株式の保有割合は表記がないためわからないが、報道が事実なのであれば、株主のうち実に半数がKDDIの子会社になることになる。

KDDIの固定回線戦略

KDDIは主力事業として、「au」ブランドでのサービスを行っている。主に個人向けで、現在はMNO(Mobile Network Operator)としてだけではなく、「auひかり」として固定回線の提供も行っている。

携帯電話回線と固定回線をセットで利用すると一定額の割引がされる「auスマートバリュー」というものがある。2012年3月から開始されており、2015年3月には一部プランの割引額が増額されるということもあった。

我が家の戦略

我が家は長らく携帯電話にau回線を使っており、使えるならばauひかりを契約して割引を受けるのが順当なところだが、団地の中で唯一使えない地区にあったためauひかりの契約すらできなかった。その後、新規に回線を引こうと考えるも、「KDDIの中で既に新規敷設は行わない方針になっている」との情報があり(確かにエリア検索でCATV回線のサービスに誘導される)、提供エリア的にも穴が空いたような状態であるため、新規敷設は難しいと判断せざるを得なかった。

auスマートバリューの開始から考え始め、4年経った2016年3月にauひかりの利用を断念し、今までの形を底から裏返すように、16年以上に渡ってauで使ってきた1回線を含む主要3回線を全てdocomoに転出させ、ドコモ光によって割引を受ける方針とした。NTTのフレッツ光はVDSL方式ではあるが通っているため、転用も工事なしで完了し、『!ばらさよ雄英』と言わんばかりに、何も問題はなかったように思えた。

ここで話は冒頭に遡る。「ひかりJ」は2015年8月7日に開始されており、3回線の総転出を決断した2016年3月の時点でも当然サービスインしているのだ。だが、その当時auショップでも案内はなく、違約金を払ってまで転出する羽目になった。

「ひかりJ」の存在意義

「ひかりJ」は先述の通りJPNEが提供するサービスだが、先ほど悔しがった事からも分かる通り、実はauスマートバリューの対象になっている。だがショップでの案内はなく、ITproの記事にも"ひっそりと"なんて書かれる始末。

この記事には光回線の切り替えについて「(集合住宅の場合)管理組合の承諾を得なければならないので難しい面があった」としているが、おそらく集合住宅への新規敷設はもうほとんど行われていないだろうと思う。それは管理組合などの話ではなくKDDI側の意思なのではないかとも思う。新規敷設をやめて既に敷設してあるエリア向けに営業をし、敷設されていないエリアにはNTT回線の光コラボレーションの仕組みを使って囲い込みを狙う戦略なのだろう。

だが、一つ不可解な点が生まれる。もし積極的な囲い込みをしたいのであれば、大々的に告知しているだろう、という点だ。記事では狙いを「転用の刈り取り」としているが、それでは知名度に難がありすぎる。何の案内もなかったのだ、他の客も同様であろう。

結びに

業界再編が続くIT界隈。サービス内容には戦略が見え隠れするが、どうにもグループ間で啀み合っているように写る。それはユーザーに利するものではなくなっていっているように感じられる。KDDIが手がける事業の一つである携帯電話業界は総務省の総無能な横槍で余計に不健全化しているように見えるし、このひかりJの件はその余波でもあるのだろうか。

ひかりJを見つけた時は、『何故案内しなかったんだ』と憤怒の念を覚えたが、既に後の祭りであるため、仕方ないと気を落とすしか出来ない。この指摘で少しでも改善に向かえば良いのだが、果たして。

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