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アメリカの大学で教えてみないか(4):英語ってどうやって習うの?

そうは言っても留学するには英語が必要じゃない?
そんな簡単に喋れるようになるわけじゃないでしょ?
今回は「英会話」に絞ってそんな疑問にお答えします。

まず最初に書いておきたいこと。

*中学生になってから英語を話し始めてもネイティブの発音にはなりません。
*ネイティブの発音かどうかなんて内容があれば誰も気にしません。
*会話も書いたものも内容が肝心。

例えば僕はアメリカに住んで36年ですが、未だに英語には訛りがあります。あとの回で詳しく書く予定の、学生による「教員評価」でも「訛りがあるので、聞き取りにくい」っていうコメントが散見されます。

30歳と27歳の子どもたちは僕より英語を話してる期間は短いのに全然訛りがない。変だよねえ。

これは自分が何歳の時にとある言語を聞き、話し始めたかによるので、人によって違いはありますが、大人になってから外国語を話し始めたら訛りは抜けません。

そんなの気にしなきゃいいんです。ヘンリー・キッシンジャーっていう有能な国務長官がいましたが(95歳で存命です)、ユダヤ人ということで生まれ故郷のドイツから逃げてきたのが15歳の時で、未だにドイツ訛りバリバリです。全然気にしてない。

つまり、関西弁を直さない人がいるように、お国訛りなんて気にしないのが一番。特にアメリカで英語を学ぶ時に一番大事なのはここだと思います。そもそも、アメリカ人の6人に1人は海外生まれだし、18歳以下の子どもの1/4は海外生まれの親の元に生まれたって国だから、そんなの気にする方がおかしい。

僕の大学の学部長会議でも15人くらいいる中で明らかにネイティブじゃない英語を話すのが3人いるし(1人は僕ですw)、わかりやすく話せば誰も気にしないのがアメリカやカナダです。イギリスやオーストラリアは知らんけどw。

英語圏で生活してる人のほとんどは小学校での英語教育なんて反対です。発音なんかどうでもいいってわかってるから。それよりは論理的な思考と自分の考えを持つことの方がずっと重要。で、これはどの言語を使うかとほぼ無関係です。つまり、日本で国語をしっかりやると英語の読み書きもできるようになります。

僕の場合役に立ったのは、1回目の留学の時にあったスピーチクリニック。1対1で新聞とかを読んで間違ってたら直してくれるって奴。これは良かったです。ってのはとある単語を間違って発音してても自分では気がつかない。それを直してくれると同じ間違いを犯さないですから。僕の場合、fatherのaをfactのa(アとエの中間音)と同じように発音してて直されたのをよく覚えてます。あとbecauseは「ビコーズ」よりは「ビカーズ」に近い、とかね。こう言うのは(5分間とか)時間を決めてネイティブに注意してもらうといいかも。いつも注意されるとメゲるので、時間は限定しましょう。

僕は中高大学と英語全然好きじゃなかったです。しょーがなくてやってたけど面白いと思ったことない。未だにそう。暇な時に読むのはほぼ100%日本語だし、このnoteも日本語で日本向け。中学くらいから英語が好きだった奥さんは小説も英語で読みますが、そんなの信じられませんw。

だから初めてアメリカにきた時は、完璧に(!)英語喋れませんでした。7月4日の独立記念日に来たのですが、初めて会った寮のルームメートに"How're you doing?"って聞かれても、「Fireworks見たか?」って聞かれてもちんぷんかんぷん。だって、「調子はどうよ」は教科書では"How are you?"だし、花火は"Flower fire"じゃねーの?って思ってたくらいw。

ただし、最初から唯一ついて行けたのは授業でした。専門用語が多いからある意味次に何か来るか予想できるし、何より役に立ったのが受験英語です。僕が受験した時の英語のバイブルは「試験に出る英単語("でる単")」でしたが、未だに覚えてるのは最初の単語。Intellect(知性)でした。いい言葉です。他にもpsychology(心理学)とかがあったのを覚えてます。

こういう「大きな」単語(big words)は後で役に立ちます。普通に喋ってる時にちょこっと挟むと一気にレベルが上がる。ただ、「知性とは何ぞや(知能との違い)」「心理学とはどんな学問(精神医学との違い)?」っていう「基礎知識」は、日本にいる間になんとなくでいいのでわかってた方がいい。

最近よく聞くのが「帰国子女の英語は綺麗だけど、中身がない」ってやつで昔の宮澤首相も同じこと言われてました。宮澤さんは知らんけど、帰国子女って時々「母語」がない人がいるんだよね。つまり「知性」とか「心理学」ってなんだ?っていう「常識」を母語で学ぶ前に日本を離れちゃった。

これは辛い。

昔カナダのビクトリアで綺麗な白人のお姉さんに日本語で声をかけられたんだけど、これがおかしな男言葉なんだわ。「オレさまがビクトリア案内するが、貴様らついてこい」みたいな。聞き苦しいので、英語で話しかけたら「英語喋れない」って。じゃ一体何語が喋れるんだって思ったw。フランス語喋れたのかも知れないけど、相当奇妙でした。まあ、これは極端な例ですけど。

もとい。留学するのに英会話なんてできなくてもいいんです。受験英語で単語と文法をしっかりやってれば後でグングン伸びます。とりあえず最初はジャパグリッシュでいいので、ゆっくり喋ること。あとは字幕付きのテレビ番組見て真似する。

度胸があったらもっといいけど。僕はアメリカに行ってすぐ、食事時になると一人で座ってる学生に声かけてました。「一緒に食っていいか?」って。ちなみにナンパではなく、男子学生です。勘違いされると面倒なので。これはやってもやらなくてもいいです。実際、そんなに収穫は多くなかった。

「彼女/彼ができると英会話が一気に上達する」って言う俗説があります。これ多分ほんと。要するにいろんなシチュエーションで英語漬けになるし、彼女/彼も色々教えてくれる。ただし、経験から言って日本人男性が英語ネイティブの女性と付き合うのは、反対のパターンより難しいです。日本人男性がモテないとかだらしない、とかってのもありますが、社会学で言うところの"Status (in)congruency"、つまり「男が教えて女が習う」方がジェンダーの不平等と合致するのでうまく行きやすい、って言うのは大きい気がします。

さて、英語漬けになって半年くらいは頭の中で日本語と英語を翻訳して話します。だから、反応は鈍いし、すごく疲れます。ところがそのうち、英語で考えるようになります。バシッと切り替わるとは限らないけど、ある日気がついたらそうなってます。よく、英語で夢を見る、とか寝言を英語で言う、とかってのはこのレベルなのかも知れませんが、僕は基本夢を見ないし、寝言も言わないので残念ながらわかりません。

僕が英語をまともに喋れるようになったって実感したのは2回目の留学で半年、つまり合計で1年半経った時です。何かのパーティで7、8人を相手にして話したことがあったんです。パーティは話題がくるくる変わるので苦労することが多いんですね。「次の話題はこれ」っていうキーワードを逃すとついていけない。ところがこの時はついていけたのみならず、なんかの話がウケたんです。

その後の夏に、アラスカで1ヶ月間船に乗って「すじこ」を作ったことがあったのですが、船のオーナーと喧嘩した時も「あ、英語大丈夫だ」って思ったことがありました。船で鮭をさばいて冷凍しているアメリカ人やフィリピン人はオーナーに雇われてるので文句が言えない。日本から来てる漁師は雇用関係はないけど英語が喋れない。で、結局堂々と喧嘩ができるのは僕だけだったので、何十人の文句を代弁して大げんか。喧嘩ってボキャブラリーが必要なんですw。

その後で、オーナーが船底に隠してた数の子のバケツの塩に同じくしょっぱい、ちょっと黄色い液を足したのはご愛嬌ですw。

もとい。英会話ってのは必要に迫られれば誰でもある程度はやれるのですが、そこでモノを言うのが受験英語で学べる単語力と文法。これがないので在米30年でも英語しゃべれない、って人もいます。聞き取りは一人一人才能がありますが、字幕つきのテレビ番組や実際の会話で慣れるしかないです。準備段階でこれをやることもできますね。実際に話すのはもう経験しかない。場数を踏むしかないです。

英会話に関して言えば、「案ずるより生むが易し」ですね。ただし、英語の読解と英作文は全く別のスキルです。これはまたの機会に。

相変わらず長い文章をここまで読んでいただき、ありがとうございます。

見出し画像について:何年か前の卒業式です。真ん中は僕の前の学部長。パレスチナ系のアメリカ人ですが、高校と大学はカナダで出てます。左端は次期学部長候補筆頭。ちょっとした問題があったのですが、早く僕の後を継いでくれないかな。

お知らせ:明日から1週間、次男のいるデンバーに旅行します。わんこを連れて行くので片道18時間のドライブです。ここまで6日連続で更新して来ましたが、連日更新は多分途切れます。阪神の鳥谷の連続試合出場記録も途切れたことだし(関係ねーし)、ご理解を。

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人とは違う視点からの景色を提供できたら、って思ってます。