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イニエスタは去っても Footballがライフワーク Vol.31

Jリーグは生誕30年、私は40年。アニバーサリーな2023年も、セカンドハーフに入った。先々週、アンドレス・イニエスタが神戸を去った。「バルサ化」のスローガンは張りぼてでしかなく、在籍最終年は構想からも外れた。バルサとスペインの至宝にとって、わがクラブでの経験が必ずしも理想的ではなかったことは、交代の際の表情からも見て取れた。それでも、満員のスタンドと、美しいコレオグラフィーやスペイン語も交えた情熱的なチャント。われらサポーターの敬愛は真実だったことが届き、あの日の光景が忘れ得ぬ思い出になったと信じたい。

先週は、Jリーグの各カテゴリーで首位攻防戦が連続した。先陣を切ったJ1では、2位・名古屋が首位・横浜Fマリノスをホームに迎えた。名古屋は先制後、GK一森純の見事なパントキックをエウベルに決められ、さらに藤田譲瑠チマのミドルを浴びて前半で逆転されたが、後半、キャスパー・ユンカーの得点でドローに持ち込んだ。翌日、J2首位・町田に2点をリードされて折り返した東京ヴェルディは、鹿島から2度目のレンタルとなった染野唯月が2ゴール。バスケス・バイロンの電撃移籍で因縁も生まれた相手から、大入りの国立で勝ち点1をもぎ取った。同じ日のJ3、2点を連取されハーフタイムを迎えた愛媛だが、後半は怒涛の4連続ゴールで富山を逆転し、首位交代を実現してみせた。計15ゴール、同一週に集中した3つの天王山が、いずれも白熱。こんな奇跡を目の当たりにすれば、イニエスタ・ロスで湿った心もすっかり梅雨明けした。

今季も、一部の地域を除きナイトゲームしか開催しようのない季節に入っている。日本の夏は、100年前に比べ平均気温が7度ほど上昇したという。過酷な条件には違いないが、興行の面では夏休みに入るこの時期を外す手は無いのだろう。J2の清水と千葉のゲームは、4万7千人を超える観客を集めた。これも3連休中日の効果か、オリジナル10同士の対戦は互いに2点を奪い合い、賑わいにふさわしいドローとなった。ビッグネームが去ったとて、リーグが育んだものは失われない。わが神戸も、この熱気の輪に加わり、首位戦線にとどまってもらいたい。そんな願望をもって、今宵の鳥栖戦に見入った。

PKによるビハインドは、ものの数分間だった。佐々木大樹のグラウンダーの折り返しをダイレクトでニア上へ叩き込み、同点。さらに、武藤嘉紀へ絶妙なスルーパスを通してジェアン・パトリッキの逆転ゴールを導く。終盤の2点目こそ取り消されたが、大迫勇也が好調を持続。前夜、川崎に敗れた横浜Fマリノスに代わり、神戸は再び首位に浮上した。負傷者続出で状況により酒井高徳を起用せざるを得ないセンターバック、大迫と武藤の生命線に問題が生じた場合の備え。不安要素は尽きないものの、期待せずにはいられない。ヴェルディから、フロンターレまで。10クラブで始まったJリーグは、年間優勝を成し遂げたクラブの数も10。節目の今年、11番目の王者が誕生してくれないものだろうか。イニエスタを感動させたサポーターならば、クラブに夢の成就を望んでもいいはずだ。



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