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4文小説 Vol.40

今月の空は新緑の映える薄曇り、忙しくなって余暇の過ごし方や優先順位の再考を迫られてもなお、亡父の月命日前後のお寺参りは変わらず続けていきたい。

「放てば手に満てり」、心を空にすれば豊かな境地が手に入る、父方の先祖の宗派である曹洞宗の開祖・道元禅師の教えで、合掌の所作はそれを象徴しているとの解釈もあるようだ。

「仕事なんて修行みたいなもんやから」不本意な人事異動により様変わりした暮らし、四苦八苦の日々をどう受け止めれば良いのやら、前部署の上司の言葉はごもっともとしても、腹落ちするのはやはり難しい。

「あった、やっと見つけた」お寺の帰り道、母がいつも探してきたものに感嘆する声を聞いて、心を空にすることの意味が、少しわかった気がした。

―四つ葉のクローバー



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