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「彼ら」への脅え 運動神経が悪いということ Vol.14

政治に関して、不偏不党と言えば聞こえは良いが、無知蒙昧で深く語ることができないので、政党名は伏せたい。とうに周知の話題でもあるから、個人名も書かないでおく。ただ、政治の動向を概観していると、ときどき自身が生きる世間と似通ったものが浮かび上がる瞬間があって、私にとってその最新の例が件のツイートに端を発する一連の騒動だ。

野党とはいえ、きわめて与党に近い政党の政治手法を指し、「弁舌の巧みさでは第1次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒトラーを思い起こす」と投稿した元首相。一方の元代表が司会を務めるネット配信番組では、もう一方の現職代表がゲストに招かれ〝直接対峙〟が演じられたと聞く。 抗議文まで提出した党はヒトラー呼ばわりによほど憤慨したかに見えるが、過去には前出の元代表自ら、時の与党が断行した消費増税について「全権委任法以上にひどい」とヒトラーを持ち出した前列があるのだから、真の狙いは今後の政局を見据えた相手のイメージダウンであろうことは、傍目にも察しがつく。

私には、とかく苦手なタイプの人が多い。「だって」が口癖の甘ったれた人には虫酸が走るし、溌剌とした人の熱量にもついて行けない。数多くの苦手な人のなかでも、最上位に入るタイプを一言で表すなら、差別的な人だと思う。言い換えるなら、相手によって顔や態度を使い分ける人。おそらく、この類の人が相手を判断する基準とは、感情や損得なのだろう。好きか嫌いか、自分にとって敵か味方か。「嫌いな敵」と認定された者にとって、これほど厄介な相手はいない。

このタイプの人たちが恐ろしいのは、世間でうまく立ち回り、ややもすればヒーローのようにもてはやされる可能性をも秘めていることだ。気に入らない相手には情け容赦が無くとも、気の合う相手や力を持つ相手には良い顔を見せるから、属する集団のなかでは相応の評判や好感度を獲得できるのだ。不出来なうえ、愛想を振りまく才能も無い私のような存在は、「彼ら」にとって邪魔でしかない。私がいつも脅えているのは、「彼ら」と似通った何名かの同僚が、順調にのし上がって直属の上司となる未来だ。このたびのヒトラー投稿をめぐり、政敵潰しに躍起になる集団にも、「彼ら」が重なって見えてならない。



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