照りつける日差し、生ぬるい空気。
乗っていた電車が急に途中の駅で止まった。今日はそれより先にはいかないらしい。
わたしは、知らないまちにいきなり放り出された。宿に戻りたいけれど、戻る術が見つからない。
シエスタの時間で通りには誰もいない。公的機関のようなところも閉まっている。住んでいるはずのひとに全く出会わない。
Wi-Fiを探してみたものの何1つ反応しなかった。まちをひたすら歩いてみたけれど、どうしていいかわからない。
最終的には交番を見つけ、英語が伝わらない相手に身振り手振り事情を説明し、彼のお友達が車で送ってくれたのだけど。
地名すらわからないまちだし、もう二度と訪れることはないと思う。
なのになぜか、急に記憶が蘇ってきた。照りつける日差し、生ぬるい空気、ちょっとトイレに行きたくなってきたわたし。
あのときのことを共通の思い出として語れるひとはもちろんいない。
でも、人生のなかでそういう時間をもっていることも「豊かさ」のひとつになるんじゃないかと思う。
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