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いま、身近な風景を旅してみる。自分たちの住むまちを再発見するための「マイクロツーリズム」という提案。


昨年度から、森の京都DMOさんが事務局となり、地元・亀岡の宿泊・食・ものづくり・アート・文化体験に関わるみなさんとともに、この地ならではの体験プログラムや周遊プランの開発等を行なっている「亀岡アグリツーリズム振興協議会(「コミュニティツーリズム」の振興)」。わたしは、そこに事業コーディネーターとして関わらせていただいています。

先駆的に同ツーリズム(スローツーリズム、グリーンツーリズム etc...)の開発を進めていらっしゃる、京都市京北のROOTSのみなさんをはじめ、富山県南砺市のBed and Craftのみなさん、石川県輪島市の里山まるごとホテルの山本さんにお世話になりながら、すこしずつその輪郭をつくってきました。

わたしたちはそこに『Harvest Journey Kameoka』と名付け、亀岡で丹精こめて育てられているおいしい野菜だけでなく、この場所を訪れた方にも滞在を通してなにかを持ちかえってもらえるような、また、地域で暮らすわたしたちにとっても実りのあるような、そいういう旅のスタイルをつくっていきたいと思っています。

『Harvest Journey Kameoka』とは、京都・亀岡への滞在を通して、土地や人と出会い、つながりをつくる新しい旅のスタイルです。JR京都駅から快速電車で20分。静かな渓谷を抜けて、ゆったりとした時間を過ごしながら、地域の文化やものづくりを知り、採れたてのおいしい食べものを味わう。ここから「あなた」と「まち」を豊かにする旅がはじまります。
(※というようなイメージで下書きをしています。笑)

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食事・宿泊・体験がともなうことで地域にお金の巡りをつくり、ゆくゆくは、地域の若者(わたしを含めた)の新たな仕事をつくっていくことも念頭に入れています。まだ、始まったばかりなのであまり大きなことは言えませんが、やっとスタート地点に立ったような感覚で。

冒頭で「昨年度から」と書きましたが、わたしにとっては足がけ5年のプロジェクトになります。

なぜ、地域に紐づいたツーリズムを振興するのか。

普段、抽象的な書き方をすることが多いのですが、今日はその理由の1つについてご紹介していきます。

この状況において、しばらくインバウンド観光は見込めないものの、一般的なリサーチでは、欧米豪の方々の滞在一人あたりの支出は15〜21万円、滞在日数はおおよそ10〜15泊というデータがあるなかで、欧米豪の旅行者の滞在の嗜好を鑑みると、まだまだ地元にもチャンスがありそうだと感じています。

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一方で、お隣の観光都市「京都市」から快速電車で20分の亀岡市(嵐山だと10分!)でも、順調に観光客の数は増えているものの、日帰り観光客の消費額は1,603円にすぎず、宿泊を含めても大半が三大観光を目的に訪れている現状です。

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(▲上記資料はすべて仲山副市長より拝借)

数字の関係はあまり得意ではないのですが、それでもこれは向き合ったほうがいい数字だと認識しています。ただ、根底にあるのはもっとシンプルで、ある協議会のメンバーと立ち話をしていたときの「亀岡いいところやし、みんなでたのしく稼げたらいいよね!」ということだと思っています。

まずは、地元を“旅するように”暮らしてみる。

もともと、観光地をリストアップして巡るよりも、旅先にある暮らしや地域の文化に触れるような旅を好んできた方ではありますが、家に戻って思い出すのは、そこで見てきたはずの美しい建築や、おいしい食べ物よりも「そこで出会った人と何を話したか」ということでした。

そうして、旅先でできた友だちが「今度、日本に行くときはアンナに連絡するね!」とメッセージをくれるわけです。実際にやって来た友だちも、メインはやっぱり京都市内の滞在だったのですが、なかには亀岡まで遊びに来てくれる人もいて。彼女たちと一緒に巡った地元が、特別な場所になったあの日の感動は今でも忘れられません。

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わたしは、生まれも育ちも亀岡ですが、大学3年生まではバスケットボール一筋で、ほとんど地元のことを知りませんでした。

あいだの出来事を書きはじめると朝までかかりそうなので割愛しますが、ちょうど自分が地元に目を向け始めたときと、亀岡に移り住んだ方々がお店をオープンされるタイミングが重なり、「なんで亀岡でお店を始められたのですか?」と聞いてまわった記憶があります。(傍らで移住のお仕事をさせていただいているのも、この時のご縁だと思います。)

そこから、わたしの「地元再発見の旅」がはじまり、数珠つなぎで教えてもらった作家さんや職人さん、お店さんのもとを訪ねてお話を聞き、さまざまな企画に参加させていただいたり、自分自身でも企画をつくるようになりました。そんなみなさんと出会ったことで、地元の暮らしがどんどんたのしくなっていったのだと思います。だからこそ、このまちで出会ってもらいたい人たちのもとへ、訪れてもらうための導線をつくりたい。

まだ、うまく言葉にはできませんが、地元を旅していくなかで「日本の精神性」や「世界」ともつながるというおもしろい体験をさせていただきました。それが、この5年間の出来事です。その頃にはじめた「地元再発見の旅」はいまも続いています。

世界中の人たちと、お互いの関係性を「間借り」しあえるようなつながりをつくりたい。

『Harvest Journey Kameoka』を立ち上げるにあたり、アーティストの田中英行さんともたくさん議論を重ねてきました。お仕事を一緒にするのは今回がはじめてでしたが、地元にこんな人がいるのか!と衝撃を受けた方のひとりです。

わたし自身も、田中さんが昨年から取り組まれている「Artists' Retreat no-mu」に出入りさせていただくなかで、滞在したアーティストたちが亀岡のファンになってくれる現象を不思議に、そして嬉しく思いながらも、みなさんから見た「亀岡」をもっと知ることができたらいいなと思っています。

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そして、彼ら・彼女らも「今度は〇〇(自分の住む国)に来てね!その時はぼく/わたしが地元を案内するよ!」と言って、亀岡を旅立っていきます。

そんな風に、その人とその人が暮らす地域の関係性を「間借り」しあえるようなつながりをつくることで、遠くに親戚ができるような、「今度、知り合いの子どもがそっちに遊びに行くからお願いしていい?」と言い合えるような、そういう人の行き来が生まれていきそうな兆しを感じています。

自分たちの住むまちを再発見するための「マイクロツーリズム」という提案。

そのために、いま自分たちができることはなんなのか。何をどう足掻いても、この状況が明日もとに戻ることはないので、まずは自分たち自身が “身近な風景を旅する” ことからはじめてみるのはどうでしょうか。

日本のインバウンド観光を牽引されている「星野リゾート」の星野代表も、『インバウンドが戻るのは最後』だと述べられています。

1年〜1年半をかけて需要が戻ってくるかもしれませんが、その需要のあり方は大きく変わっているかもしれません。(ウイルスの拡大が)収束に近づくにつれて、ある日突然に需要が戻るわけではなくて、だんだんと戻ってくると私は想定しています。ここ10年話題となり成長してきたインバウンドの戻りは、おそらく最後の最後になるというのが私の感触です。

最後にいくつか、先ほどURLを貼った記事にある星野代表の言葉をお借りして、書きはじめたら止まらなくなってしまった(終わり方がわからなくなってしまった)本記事の締めに入らせていただけたらと思います。

そこで提案なんですけども、私は「マイクロツーリズム」を実践したいと思っています。地元や地域を観光していこうというものです。自分の家から10分、15分、30分、1時間の範囲を観光してみる。観光事業者も収束後の需要が戻ってくるときに、まずそこを狙ってみてはどうかという提案です。

自宅からから15分歩いたところにあるのは、お寺や神社、和菓子屋さん、麹屋さん、コンビニ2件と、15分でたどり着けたらパン屋さんと石材屋さん。それから、山と田んぼのいい風景。

30分だと、西国三十三所巡りのお寺、おもしろい住職さんのいるお寺、木工作家さんの工房、織物工房、酒屋。あとは、山と田んぼのいい風景。

1時間も歩けば駅に着く。旅先だと2,3時間は平気で歩いていることを考えると、結構なところまで旅ができそうです。移動手段が自転車だったら、もう少し範囲が広がるかもしれません。

この機会に地元の方々にもう一度地域の魅力を再発見していただくことがすごく大事だと思います。

地域の魅力を知ってもらわなければ、実は観光は強くならない。新型コロナウイルスで大変なダメージを受けているが、転んでもただでは起きない。日本の観光が復活するときには、地域の人たちがその地域の魅力を知っていることは、世界に日本の観光の強さをアピールできる大きな力になると思っています。

地元の人たちが地元を楽しむことが、いちばんの発信につながっていく。

それが巡り巡って、ツーリズム振興や関係人口を増やすこと、移住促進にもつながっていくと思うので、『Harvest Journey Kameoka』もそのきっかけのひとつになってくれたらうれしいです。

そんなことを思いながら、いまだからできそうな企画、すこし状況が落ち着いたときにやってみたい企画を考えているので、亀岡のみなさん、どうぞよろしくお願いします。

いまはどうしても、「地元」を再定義するために亀岡に特化してやっていきたい気持ちはあるのですが、もうすこし体制が整ったら、各地にいらっしゃる皆さんとも協力させていただきながら “自分たちの暮らしを豊かにする旅” を提案していきたいと思います。

「地元再発見の旅」に出る際はぜひ、今まで入ったことのなかったお店に立ち寄って、店主と話してみることをおすすめします。

徒歩圏内にテイクアウトができるお店がある人が羨ましいなと思いつつ、みなさんも近所を歩きながら、身近なところにある「新たな出会い」をたのしんでみてください。


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