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田舎のおっさんに泣いてキレた話

私の地元は新潟で、大学入学と共に上京してもう10年以上経つ。最近特に、地元にいることが窮屈に感じることが多くなった。

今回はそれが我慢の限界を超えた話。

今年の元旦。田舎でよく見られる光景だと思うが私の実家も例にもれず、狭い居間に入りきらないほど親戚が集まっていた。
ちょっとした特徴として言えることは2人いる従兄妹とは血が繋がっていなかったり、私の父親はその場にいなかったり、そして親戚でもないおっさんがその場にいたりすることだ。

親戚でもないおっさんと言ったがここではYさんとしよう。

Yさんは母の小学校からの同級生であり、母と同じ職場に勤めている。
普段母もよく飲んでいるし頼りにしている。
そして情けないことに両親が離婚している我が家は本当に貧乏で、
私が学生時代に一度金を借りていたこともあった。(もちろんもう返済済みである)
ここまでだとYさんはただいい人ということになるが、問題がある。
とにかく本当に口が悪いのだ。私や私の家族に平気で「馬鹿親子」「ブス」と暴言を吐いてくる。
私が思春期の時も「太った」「かわいくない」と言い続けて私を泣かせるような男だった。

普段私が東京で生活している時には最も避けているタイプの人間だと思う。
平気で人を傷つけることを言うが何となく可愛げもあるし仕事はきっちりやるタイプなのでなんだかんだで周りが許している。
ゆえに本人もそれでいいと思っているので変わることが一切ない。

今年の元旦もYさんは我が実家に母が作った郷土料理を取りに来て、
そのまま酒を飲むことになった。

すぐ帰ってほしい・・・と思ったが、母がお世話になっているし、離れて住む私の代わりに母を助けてくれる人であることも確かだ。
我慢せねばと思い、いつものように暴言を吐かれても手元のiPhoneを触って耐えていた。

「ユカリはかわいくない、かわいげがない」
「ブス」
「人間がなってない」

言い返すのもバカバカしいし一つ反論すれば憎まれ口が十倍になって返ってくる。何を言われても無視をするか「そうね」と作り笑顔を浮かべて流していた。

すぐに帰ったが上のいとこが連れて来ていた小学生の男子にも「生意気だ」「死ね」と言っているのが聞こえた時はさすがに咎めた。

私は実家では酒を飲みたくないので私と車を運転する従姉妹だけが素面で、
タバコを吸わないのはその場で私だけだった。私が全員に頼んで換気扇の下で吸ってもらう。煙いしうるさい。早く東京に帰りたい、一人になりたいとしか思えない時間だった。

ことの発端は、Yさんが従姉妹夫婦に「子作りはしているのか」と聞いたことだった。従姉妹と旦那さんは30代半ばで2人とも控えめな性格の穏やかな夫婦である。従姉妹が「うーん」と苦笑いをして話を逸らしたがYさんは続けようとしたところで、私は限界を迎えた。

「それは、Yさんには関係ないことでしょう?私たちにも関係ない。誰も何も言う権利はない話だよ」

「いや俺は純粋に、知りたいだけなんだよ」

「知る権利はないよ」

腹が立ちすぎて動悸がしてきた。
私は従姉妹夫婦が子供が欲しいかどうかは知らない。できないのかつくらないのか、まだいいと思っているのかも知らない。関係ないからだ。関係ないって、どうしてわかってくれないのだろうか。私の母がさすがに怒ってようやくその話題が終わった。

ちなみに、さっきからブスと言われているが私自身の顔立ちは家系の中で特異的にはっきりしていて、絶世の美人では全くないがはっきり言ってブスではない。まぁそんなことはともかく暴言を吐かれ続け普段絶対に言われることのないブスという言葉を浴び続ける3時間は、地獄でしかなかった。

少し席を離れた時、母とYさんが話しているのが聞こえた。

「ずっと不機嫌そうな顔をして、ユカリは本当に大人げない」
「でも今日はいつもよりマシだ」
「できるんだったら最後まで我慢すればいいのに」

母もYさんに若干同意しているのが聞こえて、キレた。久々にキレるという表現をあえて使いたくなるほど、キレた。

「ねえ、これ以上何を我慢すればいいの?こんなにうるさくて、煙たくて、ブスだって言われ続けて、今日ずっと我慢してたんだけど。何時間も。
私何でこんなクソみたいな男にブスって言われなきゃいけないの」

言いすぎた。のはわかるが、もうどうにも制御が効かなかった。ドライに考えれば世話になっているのは私ではなく母だし、金を借りていたのは過去だ。私にとってはただ暴言を吐いてくる男でしかない。

「聞き捨てなんねぇな。まさかお前自分のこと美人だと思ってんのか」

「・・・頭おかしいね」

ため息と涙混じりに出た言葉だった。

元旦まで忙しく働いて疲れている、酔っている、そんな言い訳が効かないほどモラルがない人間は頭がおかしいとしか思えない。

何故なら私だって東京で死ぬほど働く私の友達だって、限界に疲れているときもめちゃくちゃに酔うときもある。けれど絶対に、こんなふうに周りを不用意に傷つけたりはしない。

自分が社会人になったから余計にわかる。
この男は頭がおかしい。

「あたしたちはブスだけど、ユカリはかわいいよ、ブスじゃないわよ」

さすがに周りが制した。ただ「ユカリは口が悪い時もあるけど言うことは正しい」なんて言葉が聞こえた。

暴言を吐かれることが嫌で、拒否して、怒ることが、口が悪いことなのだろうか。

「私が美人だとかブスだとか関係なくて、ママにも、おばあちゃんにも、おばさんにも、XXちゃんにもブスって言うこと自体許せない」

涙ながらにこういったが、おそらく誰も聞いていなかっただろう。
こんな当たり前の主張が「生意気」とされる田舎に帰りたい、貢献したい、恩返ししたいと思えるほど私は徳が高くない。

怒りに震えて泣いていたら最後に「そんなに弱いんだったらさっさと結婚して誰かに支えてもらえ」と吐き捨てて、Yさんはその場でぐうぐうと寝た。

前回帰省した時に顔を合わせると「結婚したのか」としか話しかけてこない坊さんに呆れてこのnoteを書いたが、図らずも連作のようになってしまった。

「田舎に若者がいない」
「大学進学と共に上京して帰ってこない」
「嫁に出て行った」
と嘆く声をあらゆる地方で聞くことがあるが、
じゃあなぜ若者たちが田舎に帰ってこないのか残っている人たちは真剣に考えたことはあるのだろうか。

結婚や出産の自由、生き方の多様性、
プライバシーといった考え方を身につけてもらわない限り、この溝は一生埋まらないし誰も田舎に帰らないだろう。
少なくとも私の今の気持ちとしては結婚しても子供を産んでも帰りたくない。

都会で働く私は田舎のモラハラを許すことは絶対にできないし、
田舎の「口が悪いけどいい人」はもう私たちには通用しない。


今回はあまりに極端な例となってしまったが、
せっかく帰省しても独身だというだけで肩身が狭い思いをしている人、
早く子供を作れとプレッシャーをかけられている人、
子供1人じゃかわいそうと言われている人、いい加減、怒っていいんじゃないだろうか。

そう思って書きました。

遅くなりましたが、
本年もよろしくお願い致します。

お読み頂きありがとうございます。最近またポツポツとnoteを上げています。みなさまのサポートが私のモチベーションとなり、コーヒー代になり、またnoteが増えるかもしれません。