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ビッチと呼ばれて

私は最近結婚した。

盆や正月などで地元に帰っている時は「いい加減落ち着きなさい」というプレッシャーをひしひしと感じたものの、ここ東京においては30代の独身であってもそれなりに働いていればそこまで責められる風潮にない。

それに助けられていたかはともかく、私は「年取った時に一人だったら嫌だなとは思うけど、別に大した結婚願望はない」といつでもどこでも堂々と言い放っていた。周りの大人たちも「まだ3X歳でしょう?焦らなくてもいいもんね」と本心かどうかはわからないがそう言ってくれる人がほとんどだった。

しかしここ2年くらいで心境や生き方の大きな変化があり、そのタイミングで結婚したいと思った人が奇跡的に現れてくれたので私はあっさりと結婚した。

どう変化したかというと、2年前までの私は自分の自己実現やキャリアップだけを考えていたし、しかもそれを追求するほど自分が強くないことにも気付かず、いや気付いてはいるが認めたくなくていろんなものに逃げていたし依存していた。依存先は酒だったり恋愛だったり男性だったりセックスだったりだ。

はたから見れば「派手な女」「恋多き女」「遊んでいる」「ちゃらちゃらしている」という印象を持つ人が多かっただろうし、私自身も自分のことを「男性と同じように稼ぎ、遊ぶ女」だと思っていた。しかし、ある一人の男性に惚れてしまったことでそういったものが全て吹っ飛んでいった。

その男性と付き合っていた1年半で「しょうもない男たちには負けたくない」という、仕事の起爆力にしていた暴力的と言えるほどの熱量が消え去ってしまった。そんなことどうでもいいからこの人と一緒にいたいし愛されたい。他の男なんて、勝とうが負けようが好かれようが嫌われようが一切どうでもよくなってしまった。
激務と言えるような状況の中で熱量を無くした私は、一瞬で折れた。今考えても元々堪え難い環境だった。休職して退職し、熱量がさほど必要ないくらいの仕事に就いた。

私の全てを変えた男性と生まれて初めて本気で結婚したいと思った。これまで建前としては結婚を前提に付き合っていたり同棲していたこともあったがこれほど強い結婚願望が生まれたことに私自身が一番驚いた。しかし結局諸々が諸々あって、彼と結婚することは叶わなかった。
彼くらい好きになれる、もしくはその可能性がある人が現れたら一瞬で結婚しよう。好きだった彼のおかげで男女の不誠実から成る不安定な関係に色気を全く感じなくなった。そして彼との別れ際に言ったこの言葉だ。
「次に付き合う人と秒速で入籍する」

秒速とはいかなかったけどそれから1年未満で籍を入れた。Twitterの意地悪な人たちには「妥協して結婚したんですか」なんて言葉を投げかけられたりもするが、確かに人生を変えるまで好きだった男性と結婚できなかった時点で妥協していると見ればそう見えるかもしれない。けれどそこまで惚れていた男性を数ヶ月で踏ん切りをつけさせてくれた男性ってすごくないかい?と言いたい気持ちはあるが、意地悪な人たちにそんなことを返す価値はないからここに書いている。夫と付き合った当初から友人には「宝くじに当たったと思って大事にする。この人と結婚しなかったら一生しないと思う」と言っていたし今でもそう思う。

さて、タイトルの「ビッチ」だがもちろん“Bitch”のことで「尻軽女」「あばずれ女」を意味する。2年前くらいの私をよく知っている男性から影で「あのついにビッチも結婚したんですね」と言われていたことを知った。
また当時の私を知る別の男性に「結婚することにしたんです」と言っても「そんなこといってどうせまた遊びたくなるんじゃないの?」「すぐ離婚するでしょ」とまで言われた。それも1人ではなく3人に。ちなみに、過去に軽率な関係を持った男性は前の彼と付き合っていた時点で全員連絡を絶っているのでこういうことを言ってくるのは私と関係を持っていない男性たちである。これだけ書くと単に嫌われていたのではと思われるだろうが、私がちゃらちゃらしていた当時は彼らにはとても可愛がってもらっていた。それが私が結婚すると知った途端、この通りである。

ここからは私の想像だが、彼らはきっと「遊んでいる女」というものに本当は嫌悪感を抱いていてその女が結婚していわゆる「普通の幸せ」を手にすることが許せないんだろう。そういった言葉を投げかけてくるような男たちとも一切の連絡を断つことにしているが機会があればこれだけは言いたい。

私、あなたに何か迷惑かけましたか?

当時あらゆることに依存していてめちゃくちゃだった私と飲んでくれたり話を聞いてくれたりした女友達たちに「あのビッチが」と言われるなら甘んじて受け入れるが、もちろん彼女らはそんなこと言わない。いや違う、女は怖いから影で言っている?それは男性の妄想だ。
ここで男女論をあまり出したくないが遊んでいた男性が結婚したら「あいつも遂に落ち着いた」とか「年貢を納めた」なんて言われたりして、ここまで心ない言葉を浴びるだろうか。

そういう男性たちは誰も私がこの2年で何があったかなんて知らない。知らせるつもりもない。もしかしたら彼らが言うようにこの結婚はすぐにダメになってしまうかもしれない。先のことは誰にもわからない。もちろんそうならないように生きていくし、こんな呪いみたいな言葉をかけられる義理は一つもない。

ただ私は誰かが結婚すると報告してくれたら、例え何かを思っても、第一声はちゃんと「おめでとう」と言えるくらい精神を成熟させていたいなと思っている。

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