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『ライ麦畑の反逆児』を観て

拝啓 田中啓史先生

※田中啓史先生とは「ライ麦畑でつかまえて」の著者であるJ.D.サリンジャー研究の権威である。サリンジャーに関する訳書や著書も多々ある。
こちらから、是非。↓↓

先生、お元気でいらっしゃいますか。大学のゼミでは1年目、2年目続けて先生のゼミを履修しておりました。その節はお世話になりました。

田中先生にとっては私はそのキャリアの中で関わった数万人の学生の一人に過ぎず記憶にもないと思いますが、私にとっては先生としてしっかりと記憶に残っている数少ない存在です。

ゼミ合宿にも参加しましたね。風呂でレズビアンのデブの女に執拗に追いかけ回されたり、夜中に宿を抜け出して当時付き合っている男と会ったりとさすが若かりし頃の私という程度にバカげたこともしていましたが、その記憶と同じくらい鮮明なのは先生が熱海に住んでいて、庭で育てている柚子から柚子胡椒を作るんだという話を聞いたことです。先生が熱海に住んでいらっしゃったのは晩年(と言うほどの年齢でもなかったと思いますが)サリンジャーが人里離れた場所に住んでいた影響だったのだろうか、とふと思ったりしました。
いずれにせよ、ゼミの合宿は私が想像していたような誰かが泥酔していたり男女がいかがわしい雰囲気になるような”大学の合宿”とは全く異なるもので、いい思い出になっています。

さて、私はその他多くの学生と同様、専攻していた英米文学とは全く関係のない職に就きました。しかしそこから10年経ち、Twitterで日々のことを綴っていたらそれを読んでくれる人が増え、そしてそれをきっかけにサリンジャーの生涯を描いた映画『ライ麦畑の反逆児』の試写会にお誘い頂きました。誘われた時は「うわぁ、サリンジャーもライ麦もあんまり覚えてないなぁ、なぜなら次の年に勉強したフィッツジェラルドが好きすぎて・・・」と少し焦りましたが映画を観るうちに『ライ麦畑でつかまえて』自体も思い出せたので楽しむことができました。

田中先生にも観てほしいなあと思いながら観ていましたが、先生はもう青学も退任されていて連絡する術がありませんので万が一見つけてくれることを願ってこちらに書いています。

作家引退後あれだけ取材されたり目立つことを嫌っていたサリンジャー自身、死後映画にされてしまうなんて皮肉なものだなぁと私個人的には思いました。
映画自体はサリンジャー役を演じた俳優よりもサリンジャーの恩師を演じたケヴィン・スぺイシーが個人的には良かったです。ただ、サリンジャーを読んだことがない友人や私の恋人を誘って観に行きたいほど面白かったかと言われると若干の疑問符が付きます。それでいうとQUEENファンではない人間までがっちりとつかんだ「ボヘミアンラプソディー」のようなわかりやすい構成とキャッチさがないとやっぱりヒットは難しいのでは?なんて思ったりしました。全然関係ない映画を並べてすみません。同時期に観たもので。

全然関係ないといえば、『The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)』を研究したレポートを出すはずが、全然関係ない作品をとりあげて書いたものを提出してしまい申し訳ありませんでした。
特に前期に出したレポートはほとんどが太宰治の『人間失格』やカミュの『異邦人』に触れて「大人になりきれない者たち」とひとくくりにして書いていたような気がします。金原ひとみの『蛇にピアス』も入っていたかもしれません。お察しの通り原文も訳書も読み切らないまま雰囲気で書きました。
それでもきっとオリジナリティを評価してくれたと信じていますが、一番上の「AA」の評価を付けて下さったこと、今でも覚えています。そのおかげで(?)10年経った今も書きたい文章を好きなように書くということができています。

最後になりますが、今回の『ライ麦畑の反逆児』はもちろんディカプリオが主演を果たした『華麗なるギャツビー』についてもお話お聞かせいただけたらうれしいので万が一こちらの記事を見つけたらご連絡ください。

それでは、どうかお元気で。

敬具


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