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SEVEN DREAM -第一の夢-

この夢の中で、わたしはアメーバだった。

ただ、どこか、水の中でゆらゆらと揺られている。すると不意にピアノの音が聞こえてきた。誰の曲だろうか、聞いたことがないような気がするけれど、懐かしい気もするそのメロディライン。その音に合わせて、かすかに水が揺れる。そこに浮いているわたしも自然と揺れた。

ああ、なんて美しいメロディなんだろう。ピアノの音はこれから世界を飛び回る飛行機だ。今はまだ、滑走路で飛び立つためのための助走を付けている。飛行機は少しずつスピードを上げ、その流線型の機体が風を流す。滑走路を囲む広い草原の、そこに生きている草の匂いが、わたしのところまで流されてくるようだ。
そのピアノの音はただ美しいだけではない。闘っているのだ。その証に、流れていった風には小さな火花が含まれている。

水がまた揺れた。それは先ほどよりも大きな揺れになった。だから、わたしも先ほどよりも大きく揺れた。そして、その水の揺れは、ピアノの音色がまさに飛び立とうとする瞬間に向けて、少しずつ大きくなった。水が揺れるままにわたしも揺れる。そのうちに、わたしは水の揺れに逆らって体を揺らしたくなった。だから試しに、ピアノのリズムに合わせて揺れてみた。するとどうだろう、心が少しだけ軽くなった。どうしてか分からないから、もう一回揺れてみた。すると、先ほどよりも心がもっと軽くなった。

わたしはそれが楽しくなって、もっと揺れてみた。すると、笑い声が聞こえた。見回してもここには誰もいない。ただ、水があるだけなのだ。
ああ、分かったぞ。水も踊っているのだ。だから揺れていたんだな。

私はただ、水たまりに浮かぶ、アメーバなのだ。
どこかの家、そのわずかに開いた2階の窓から、白銀のピアノの音が聞こえてくる。



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