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一緒に飲んで一緒に生きろ

はじめに


昨日(7月20日)、「カリスマ」のドラマパート最新話が公開された。

一回前のドラマパートでは天堂天彦さんがブレイクしたので、二週間ぶりの更新となる。
2ndシーズンに入ってからの恒例行事として、このブレイク明けの回で「次は誰がブレイクするか」が露骨に提示される(猿川慧タームなら「里帰り」で6人を故郷に連れて行く、天堂天彦さんタームならタイトルがそのまま「天堂家」!)から、今回も誰がブレイクするのか、楽しみにしながら更新タイトルを見ていたのだが……「バスは来ない」。
誰の回なのか想像がつかないまま聞き始めた。

結果からいうと誰のブレイクかもわからない、いうなれば箸休めのような回であった。
でも「箸休め」という表現方法は良くない(内容とそれによってオタクが受けるダメージが少ないように見えてしまうから)。ダメージで言うならむしろ「総決算」というべき。7人が1st、2ndシーズン通してこれまで過ごしてきた結果できあがった関係性が丁寧に描かれ、じんわりといい気持ちになるような良い~~~回だった(個人の感想です)。
それでしっちゃかめっちゃかになっちゃって急遽こんなものを書いている。

色々言いたいことはあるんだけど全部ツイッターで実況したから気になる人はそっちを見てほしい。(書いてる人のアカウント→@Anagni1495)


一緒に飲もう

今回の話が面白かった理由はもう色々考えられるんだが、物語の中の行動がいちいち象徴的だったのも評価が高い一因かもしれない。
私は個人的にメタファーを効果的に使う作品が好きだ。いま放送している朝ドラも植物を使ったメタファーが破壊的にうまくて、最初の辺りを見ていないのに見始めている。
そして今回の更新はなんだかメタファーが多用されているように思えた。
「来るかもわからないバスを待つこと」「一人で歩いていくこと」「車(=外部存在)に助けを求めるも無視されること」など……聞いている途中も色々示唆的だな~と思っていた。
今回は終盤にふみやが発した「一緒に水を飲むこと」に限定した話をする。

https://twitter.com/amairo_mica/status/1681873170050224128?s=20

そうなんだよな~……分け合うことを選んだんだよな、伊藤ふみやが……

各人の対応といい既存の関係性といい、色々な変化が見えた回だったけれど、個人的にはふみやのこれが一番びっくりしたかもしれない。

「一緒に飲もう」で思い出したのが「同じ釜の飯を食う」という慣用句だ。

「同じ釜の飯を食う」は「生活を共にした親しい仲間であることのたとえ」であり、「他人同士ではあるが、いっしょに暮らして苦楽をともにする」ことを指す。そして#1で理解お兄さんが「私達は別に家族なわけじゃない、あくまでも赤の他人の共同生活なんだ」と語っているから、カリスマたちのシェアハウスストーリーは「同じ釜の飯を食う」物語であったというのは最初から一貫している。
しかし、「水を飲む」という行為は、先の言葉と同じかそれ以上に根源に迫るものであるように思える。文明は大河のもとに生まれ水をめぐる争いは何度も起こってきた。「72時間の壁」という人命救助で用いられるタイムリミットも、一般的に人間が水を飲まずに過ごせる限界が72時間であるところから決定されているらしい。
つまり一緒に水を飲むことは、単にその行動を超えて、「一緒に生きる」ことの比喩にもなっているんじゃないかと思う。

おわりに

ドラマパートの最後では、カリスマたちは来ないバスを待つことをあきらめ、歩いて行こうかとだるそうに言い合う。ここも少し思い出したことがあるので、引用してこの記事のおしまいにしようと思う。
太宰治の「走れメロス」の終盤、人質にした親友セリヌンティウスのもとにゆくのをあきらめかけたメロスが、泉の湧く音で目を覚まし、水を飲むシーンだ。

水を両手で掬(すく)って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。

太宰治「走れメロス」

メロスが水を飲んだあと、ふたたび友のもとに向かうように、この三か月怒涛の展開を繰り返した「カリスマ」も「バスは来ない」で少し休憩をはさんで、またパワフルに走っていくのだろう。
2ndシーズンはカリスマハウス以外の場所で築いた出来事に向き合いなおす展開が多いが、せっかく7人もいるんだから、対峙するのは当人でも、横に仲間が並んでいたっていいように思われる。

7人で一緒に水を飲んだんだから、7人で歩いて行けばいい。
そしてその先で、どうか7人で一緒に生きていってほしいと、傲慢にも願わずにはいられないでいる。

↑ここまで自分で書いておいて情緒がめちゃめちゃになっている。淡々と書き終われなかった。

もうなんか……なんかもうね、最近カリスマたちに対して「一生一緒にいてくれや……」以外の言葉がないんだよ、オタクは……

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