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5レーンとハーフスペース マンチェスターシティvsトッテナム 2018/19CLベスト8

5レーンとハーフスペースとは?

2トップ+トップ下の前掛かり布陣で挑んできたトッテナム

ホームの第1戦を1点リードで終えたトッテナムは第2戦も失点0ベースで堅実に戦うかと思いきや、ソン·フンミンとモウラの2トップの下にエリクセンを置く4ー3ー1ー2という前掛かりの布陣で来た

シティのホームでディフェンス一辺倒になるのは逆にリスクが高いので
早い時間帯にアウェーゴールを奪いにいく姿勢が見える

またエリクセンをシティのアンカーギュドアンへのマーク役に当てられるのでビルドアップを封じショートカウンターを一気に決める為の3人を前残りにする戦術と思われる

方やシティはアウェーの第一戦のダブルボランチという慎重策が裏目に出た敗戦の反省からギュドアンのアンカーにデブライネを右のインサイドに起用
ホームで2点差以上で勝たなければならない当然の前掛かりシフト

デブライネがインサイドでプレーする事でシティはアンカーを経由しなくとも崩せる

何故なら3トップとインサイドハーフで5レーンを埋められるからSBが無理に上がらずに自陣に残って数的優位を確保できるからだ

このシティの先制点のシーンではエリクセンの守るゾーンには誰も入らず中央を迂回してデブライネにつないだ
自陣に4バック+アンカーの5人を残しているので3人のトッテナムの前プレは空転しているのが分かる

5レーンを駆使して5人で7人の守備を崩す

となれば敵陣では当然5対7の数的不利となっているが問題は数の差ではないのだ
スペースの埋め方なのだ

もともとトッテナムの中盤は3人しかいないので1人当たりの守備範囲が広くなってしまう
さらに最終ラインがアグエロ,スターリング,ベルナルドの3トップに引っ張られれば必然的に中盤との距離が離されてしまう

よって中盤にスペースが生まれやすい
特にボールを持っているデブライネに対峙しているデレアリの背後のハーフスペースはかなり空いてしまっている
前線の選手モウラもエリクセンも空き過ぎのハーフスペースを埋めようとせずに傍観
デブライネが股抜きで突破した瞬間にアグエロがそのスペースに下りて間受けを試みようとしている

CBが飛び出す勇気がなければスペースを埋められず身体の使い方の上手いアグエロは1対1の状況でそのキープ力を最大限に活かせれるわけだ

再びデブライネとスイッチしてアグエロが最終ラインを引っ張ればデブライネが仕掛けるスペースが生まれる
アグエロとシルバがライン上にいる以上トッテナムの最終ラインはボールにアタックできずにズルズルと下がってしまう
これで中盤の選手達を引き付ければ大外のスターリングには十分にスペースが与えられる
相手がピッチの幅を4人でしかカバーしない以上5人で埋めるシティは大外のどちらか1人は必ずフリーとなるのだ

スターリングがボールを受けた時点で最終ラインはここまで下げられていた
しかもスターリングはこの位置からでも決められるシュート力があるから大外でフリーにする利点があるのだ

これはグアルディオラがバルサの監督時代の最後のシーズンに大外に張るWGの起用がはまらなかったのとは真逆だ

そしてトッテナムの最終ラインは全くボールにアタックできずに失点した
シティの先制点の一連の流れは相手の最終ラインを塞き止めて手薄な中盤を崩し大外のフリーの選手につないで決めるという形だ
5レーンを5人で埋める事でこれだけ出来るという証明を示した

自信過剰が与えた同点

しかしギュドアンがサイドに流れている時にボールを失えば逆にがら空きのバイタルエリアを突かれ当然ピンチとなる
同点ゴールはバイタルエリアのカバーが間に合わない隙にデレアリにそこを奪われ中央突破を仕掛けられて生まれた

トッテナムの失点とは逆にシティの最終ラインはCBのコンパニがデレアリに釣り出され右SBのウォーカーも一度サイドに釣られ重心がそちらに移動している
その為に最終ラインに2人も侵入される間隔を作ってしまい
ラポルトはこの時点ではソン·フンミンを視界に捉えているが

モウラとデレアリがスイッチした瞬間にソンから眼を離してしまったのだろうが足元に優れるエデルソンというGKが最後尾にいるのに利き脚でない方で無理に前につなごうとするからだ
ソン・フンミンにプレゼントパスをしてしまう痛恨のミス

トッテナムの前プレにむざむざハマった痛恨の失点

デブライネがサイドの奥深くに流れる事で中盤にはまた大きなスペースが生まれしかもCBを引っ張り出して最終ラインにも穴を作っている絶好のチャンスだが今回はアグエロは中盤で受けようとせずベルナルドも中に切れ込もうとはしなかった
ギュドアンにはエリクセンがマークに付いているので自陣逆サイドのラポルトに展開したが

ところがラポルトが自慢のドリブルが勢いつき過ぎて対面のモウラにかっさらわれる痛恨のミス
恐らくつい先ほども失点を献上する痛恨のミスをした責任を感じ勢い余ってしまったのだろう
ギュドアンはモウラに付いて行かざるを得ない為にまたしてもがら空きとなったバイタルエリアをエリクセンに使われ逆サイドのソン·フンミンにまでつながれた

デレアリのフリーランがウォーカーを引っ張ったとはいえソンは見事としか言い様がないシュートでこの試合2点目

結果的にはトッテナムのエリクセンがギュドアンをマークするという役割に2トップという布陣が効を奏した
しかしせっかく中盤に大きなスペースを作ったにも関わらずそれを活用せずに中途半端に走ったシティの方にも問題がある

止められないアグエロ

しかし何と1分もしない内にあっさり同点にした

もしかしてアグエロは先程の失点の前にボールを受けに行かなかった事を悔やんでいたのか?
左サイドでのボール回しに近寄り過ぎじゃあないかと思うぐらい寄ってシルバと被りぎみだ
しかし今回はトッテナムの最終ラインも先制点のようにアグエロにスペースを与えては危険極まりないのでここまでスライドしている

そうなれば当然逆サイドのベルナルドにはこれだけのスペースが与えられる

しかし相変わらずトッテナムの中盤はエリクセンが最初の失点と同様にスペースのカバーに入ろうという気がまるで無いので中途半端な間隔が開いている
ここでボールを奪えずベルナルドに渡ればゴールに直進されるのに

狭いスペースでシルバから受けたアグエロは俺が何とかしてやると言わんばかりに強引に単独で内側に切れ込んできた
またしてもトッテナムの中盤の中途半端な間隔もしっかり利用された
更に先制点とは逆にデブライネが最終ラインを引っ張り今度は右サイドのベルナルドに渡って2点目が決まった

右SBウォーカーのドリブル

前線の5人だけでゴールを決めているようなシティだが右SBウォーカーもデブライネばりのドリブルを見せる

そのデブライネがアンカー脇まで下がって敵を引き付けてウォーカーにそのまま運べと指示しているのが分かる

かつてはトッテナムの右サイドの武器だったウォーカーのドリブル

ベルナルドがタッチライン際に張る事でウォーカーのドリブルスペースが生まれ逆サイドではスターリングがフリーとなっている
これも5レーンの活用効果だ

シティの3点目はこのウォーカーのドリブルがトッテナムの薄い中盤を切り裂いてファールを取って生まれた
ベルナルドのキープにソン·フンミンは転倒しそのタイミングで後方からデブライネが大外を駆け抜ける
ここも5レーンが活用されている

トッテナムの最終ラインは直線を形成しているにも関わらずデブライネの高速クロスに誰も反応できずファーサイドまで通されてスターリングに決められてしまった
これもデブライネのフィジカルが優れている故に大外からクロスを入れる意味があると言える

トッテナムの3失点を振り返ると全て最終ラインのDFがボールに触れる機会すら無く無力化されているのが分かる

4―4―2にシフトチェンジして守りに入ったトッテナム

アウェーゴールを2点奪取してトータルは同点だがこのままならトッテナムの勝利となる
この状況でポチェティーノは4-4-2にシステム変更
ソン·フンミンを左サイドにエリクセンを右に回して2トップとした
しかしこれはやるなら2点リードした時点でやるべきで後手に回っているのは否定できない
シティの追い上げが予想を越える勢いだったのかもしれないがポチェティーノとしては今からでもいいから守りに入ろうというのだろう
しかし根本的な問題の解決にはなっていない

2トップがボランチのマークに付いてもシティのCBラポルトのように自らドリブルで運ぶテクニックのあるDFがいればそのコースを空け渡してしまうのだ

結局2トップの1人がラポルトに食らい付けばアンカーのギュドアンがフリーになるだけでなく左サイドに相手を引き付ける事で中央にスペースが空いてくる

更に前線のアグエロが裏に抜ける動きする事で最終ラインを下げられギュドアンがボールを持って前を向けば中央に残されたデレアリは1人でこれだけのスペースをカバーしなくてはならなくなる

更にはアグエロが裏に抜けると見せる動きは実はバイタルエリアで間受けする為のスペース作りでもある
ギュドアンも一瞬の判断でアグエロへの足元のパスを選択してそれを察したデブライネも絡む3人目の動き出しも見事な阿吽の呼吸だ

先制点のシーンと同様に敵を中央に引き付ければ両WGにスペースを与えられるしそのまま中央突破を図ってもいい

中盤を4人にしてもまずシティの最終ラインにプレッシャーをかけなければスペースを作られてしまう上に4人,5人とビジョンを共有するシティの連携を防ぐのは簡単ではない

ハーフスペースの支配者デ·ブライネ

ハーフスペースを活用する選手はとにかく捕まえずらい理由を簡単に言うと中間を取られると誰が捕まえるのか迷いやすいからだ

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