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高校受験塾のデータ分析能力【生徒を塾に利用されないために】

 これは人づての伝聞にもとづく話である。神奈川県の高校受験塾ステップに通っていた生徒さんは、2023年10月ごろ、あるステップ講師が「翠嵐は今年は(ステップからの合格人数が)150くらい行くから・・・」とつぶやいたことを覚えていた。前年のステップからの合格人数は132名である。生徒さんは、20人も増加を見込むとは強気だなあと感じたそうである。

 2024年2月、蓋を開けてみると、合格者数148名

 さすがのデータ分析能力でございました。この話を教えてくれた方によれば、ステップは公立の受験校選定の強制・誘導をしないらしい。つまり受験生の志望校変更に伴う変動も踏まえたうえで、統計データにもとづく予測が、入試4カ月前の時点で相当の精度で完成していたことになる。

 すなわち、あくまで憶測だが、ステップは4カ月前の時点で各生徒個人の合否予想をかなりの精度で実現できていた。端的に言うと、その生徒がその高校に合格するかどうか、かなりの精度で、すでに分かっていたのである。これは各回の模試のABC判定とは別に「ほぼ外れない○×判定」という残酷なデータを、生徒に見えないところで生成・保管しているということでもある。これは受験産業においては常識かもしれないが、外部者からすると塾組織のもつデータ分析・運用能力の一端を垣間見せられる話ではある。

 ところで、ステップは受験校を強制しないらしいと書いたが、公立校以外はかなり強力な受験校選定の「指導」があるらしい。事実、いじめ隠匿氷山の一角とする「保身第一・生徒第二」の官僚体質校長を替えても不変他責思考、そして学校運営自体の構造的矛盾といった諸々が白日の下さらされたことで第一志望者がゼロレベル激減した国立附属高校が、あたかもいまだ有力有望校であるかのような印象を植付け、「事前練習」と言い含めて大量の受験生を送り込み、結果的にその中から、本人の当初意図に反して進学することになってしまう生徒を散発させている側面は否めない。
 学校側からすると、合格者過半数が神奈川の特定塾出身といういびつな状況であるが、かねてより大学進学実績を高校外部入試組に依存してきた手前、公立進学重点校レベルの生徒を多数確保できる手段がステップによる「大量記念受験こぼれ」しか残されていない現実は把握しているはずで、その意味では同校はすでに生殺与奪をステップに握られているとも言える。

 余談だが、その学校について筆者の個人的感想を言うと、説明会で外部出身の校長が学校教育をPRする中で、他の教員は一切誰も発言せず、校長の話をなかば冷笑しながら無言で聞いていた姿が印象的であった。ある種の組織で従業した経験のある方はよくお分かりになると思うが、面従腹背の自己保身集団特有の空気であった。生徒の教育やら進学やらという面倒事に極力かかわりたくないという意志を感じた。諸事むべなるかな。ただしこれは、生徒を実験台として教育実験を行うことを運営目的の第一とする同校の職員において自然かつ本来的な指向である。国立大学附属学校は、生徒を教育実験のデータ取得と教員実習の被験者として使うために入学させていて、生徒の大学進学など学校運営上は二の次にすぎないことを、受験者側はよく理解しておくべきだ。これは学校側の公開情報に明記されている話であって、現場教員の面従腹背が法規に触れて問題化でもしない限り、疑義を呈する余地すらないのだ。

 さらに余談として、これもまた伝聞情報だが、神奈川高受業界におけるステップの最大ライバルたる臨海セミナーは、特に難関校クラスESCでは、公立受験校の選定にもそれなりの「指導」があるらしい。公立校は受験生にとって「本気の志望校」であり、数字のために無理なチャレンジをさせているとすれば不適切に思える。ちなみに臨海は、合格人数の算定基準が業界協定による統一手法と異なるという大きな問題があるのだがここでは割愛する。

 合格数の数字を稼ぐことが塾にとっての優先事項である、というのは生徒側もある程度理解していることではあるが、改めて「何のために塾に通っているのか」受験生側がよく整理して、塾との付き合い方を検証する必要がある。特に受験校選定においては「塾に利用される」ことを避け「受験生の将来のために塾を利用する」意識をもって、毅然と対応しなければならない。塾運営会社の商売上の都合の数字かせぎに、受験生の将来を賭して協力する道理など微塵もないのだから。


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