「社長の嫁」から「私」になる方法。 アフリカ布をまとって
「それって、社長夫人じゃないですか」
夫が起業して3年。ある集まりで言われた言葉だ。
なるほど。夫が社長だと、はたから見ると私はそんな風に見えるのか。
妊娠を機に会社を辞めて子育てと夫の手伝いをしてきた4年近く。お世辞にも平坦な道ではなかった。
子どもを保育園にも預けられず、1歳にもならない子どもを見ながら仕事するのは容易ではなかった。
2人目の時は生まれる前日まで仕事したし、病院のベッドの上でも仕事していた。
無理がたたり、今も病院に通いながら働いている。
だから、「社長夫人だから安泰でしょう」「働かなくてもいいでしょう」という雰囲気には「いやいや、ちょっと待ってくれよ」と思う。
また、その一方で、私が会社としてお客さんに会うと「社長の奥さんですよね」と言われる。これも、結局自分が仕事してきたことを評価されていないような気がしてあまり嬉しくない。
とはいえ、これらは子どもが大きくなり、仕事や外に出られるようになった結果だとも思う。
今私が外に出れば、「社長の嫁」「社長の奥さん」しかないから、そう言われてしまうのだ。
だから、私はそれ以外の私を表す言葉がほしい。
そんな中、アフリカ布に興味を持った。
もともと、民族衣装には小さいころから興味があり、韓国に住んでいた時はチマチョゴリを着てみたり、バングラデシュに住んでいた時はサロワカミュースという服やサリーを着て暮らしていた。鮮やかで模様のある服を身にまとうと、私にも似合う色や好きなデザインがあるのかと知る事ができた。
一方、日本で服を見て回っても「私が着たいのはコレ」という服がなかなか見つからない。単調な色が多く、試着しても似合うものがなかなか見当たらない。だから、高いお金を払ってまで着たいという気が起きず、安売りの、もともと安い服のさらにバーゲンなどで買った服を少しだけ持っているという生活をしていた。
そんなある日、アフリカ布を知った。
アフリカ布というのは名の通り、アフリカで主に着られているデザインの布であるが、産地はヨーロッパだったり、かつては日本でも作られていたらしい。
勢いでこの本を買ったが、まだ途中までしか読めていない。
そんなアフリカ布で作ったシャツやワンピースをネットで見て、なんとなく「これが着たい!」と思ったのだ。
鮮やかなデザイン、人とは違う私が表現ができる、そんなことを感じた。
気になると仕方がなく、先月アフリカ布やその加工品を販売しているイベントに出かけてワンピースを買ってきた。
赤い木の実と紺色の蜘蛛が描かれた独特のデザインで、正直試着した時も「あの服は着れないわ」と他の人が言っていた。でも、私にはとても似合っていると感じたので購入した。
そして、そのワンピースを着ている。
やはり気分がいい。
もっとアフリカ布の服がほしい、そう思うが、アフリカ布は簡単には買えない。
近所には売っていないし、色落ちしにくい布は高いし、縫製するにもお金がかかる。
夫は「自分で作ったら」というが、去年ワンピースを作って失敗した経験があるため容易ではない。そもそもミシンもない。
さて、どうするか。今、悩んでいるところである。
でも、アフリカ布のワンピースをきっかけに気づいた事がある。
自分らしさを身にまとう事で「社長の嫁」から離れた私自身に出会えるのである。
「ああ、これこれ、これが私」と実感することができる。
誰かの何かではない、私自身になれるのだ。
だから、私自身を見つける事をもっとやっていきたい。
まずはもう少し、アフリカ布について調べ、手に入れたいと考えている。
そうすることで、「社長の嫁」と言われても気にならない、私になれると信じている。
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