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Situational Awareness

教官の資格を取って1年が過ぎた。自分なりにいろいろと試行錯誤しながら曲がりなりにも「先生」としてやってきているわけだが、いろいろと見えてきているところがある。

同じ時期に入学した学生を、シニアの教官と分けて担当している。シニア教官が教えるのは学生であって、ぺーぺー教官そのものを直接教育することは基本的にない。ぺーぺーは、端的に言えばシニアからやり方を盗むことでしかうまくなることはできない。もちろん、言葉で質問することはできるが、通常運航を邪魔しない範囲となると質問の答えはどうしても断片的になる。

正式に教わるときは、そこには教官同士という関係はすでになく、教官と学生に一時的に戻るということなので、こちらから「学費」を払うような事態にならないかぎり「教えてもらう」ことは基本的にもうない。だから、教えてくれることを期待することはない。だまってシニア教官のブリーフィングを盗み聞きしたり、後席から見学したり、自分から情報を取りにいくのだ。

学生だったときの興味の対象は、いかに「自分が」うまくなるのかということだった。うまくターンするときのコツとか、ファイナルをびしっと安定させる方法とか。今は違う。(もちろん興味はあるけれど)いかに「他人を」うまくするかということが目下、興味の対象だ。もう少し詳しく言うと、学生の限られた資源(時間とお金)を使っていかに最小の投資で最大の効果を出すかということだ。

そういうところはやっぱりシニアの教官はうまくて、プロだなとおもう。それぞれの学生に求められるものを巧みに汲み取って、学生がちょっと背伸びをしないと届かないような課題を適切な表現で与えることができる。また、環境づくりというか、課題を伝える言葉やタイミングも吟味されているし、それがしっかり訓練に反映されているかしっかりフォローしている。

訓練時間の使い方もうまい。例えば、強風で学生をソロに出せないときは、今はソロをやらなきゃいけない学生に対してあえて同乗フライトを行い、燃料満タンでスピードを減らして飛んでみせたりする。そこからVaと重量、突風荷重から耐空類別の話まで持ってくる。多少天気の悪い日でも学生個人の技倆と相談して相談してソロに出したりすることも出来る。ミニマはミニマで決まっているけどCH(ベース空港)の風とWL(訓練飛行場)の風は違うこともあるから、状況に依っては出せるかもしれない。学生個人個人によっても異なる。

私の場合は(特に最初の頃は)ソロの学生はソロ時間が欲しいから風が吹いたらだめだね、だけだった。工夫の余地はたくさんあることを知って、ぼちぼち応用しているが、相手が学生という「ナマモノ」である以上、一つのやりかたがいつも通用するわけではなく、難しい。そういうあらゆる「状況によりけり」に対して、つまり「たくさんの変数」がある状況で、スッと最適解が出せるかどうかが、ペーペーとシニアの違い。そしてそれは、学生のフライトタイムや進捗という結果になって見えてくる。

もちろん、フライトタイムや進捗は、飛行機のブッキング、天候、学生のキャパなど様々な外部要因が影響しているので、一概に教官の巧拙で決まるものではない。しかし要因の一つではあるわけで、自分がコミットして改善できるのはそこだけだから、ここはあえて「教官のやりかた」で結果に差が出ていると考えてみる。

そう考えた方が進歩があるからだ。

たくさんの方々からサポートをいただいています、この場を借りて、御礼申し上げます!いただいたサポートは、今まではコーヒー代になっていましたが、今後はオムツ代として使わせていただきます。息子のケツのサラサラ感維持にご協力をいただければ光栄です。