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西郷吉之助@西郷どんの魅力 共感力について

「主人公の魅力が全然わからなかった」と言う声が意外と多かったので、「共感力」と言うスキルについて噛み砕いて解説してみますね。これから評価されるヒューマンスキルですし、多くの人がこれを持っていると思いますので、参考になれば幸いです。

多様化時代に重視されるヒューマンスキル

共感力を分解すると以下のようになります。

想像力

相手の立場に立って物事を考えることができる。
相手の真の望みを想像できる。

②思いやり
相手の真の望みに心から同意できる。応援できる。
相手の過ちを許すことができる。

③アサーティブネス
相手が受け入れ可能な言葉で話すことができる。
相手が理解可能な言葉で話すことができる。

④誠実
日常的に周囲と友好的なコミュニケーションをとるために努力できる。
またそれを長期間維持できる。

この4つのスキルの複合スキルが「共感性」「共感力」と言われるものになります。

「共感力(共感性)」は残念ながらあまり理解されているとは言い難い心の能力なので、歴史ドラマの主人公の魅力として伝わりにくかったのかもしれません。

ただ人がいいだけ、相手の感情に寄り添うだけ、相手に同意するだけと誤解されたかも。実際は、想像力・自己抑制力・表現力というかなり高度な知性を必要としますし、誠実もね、友好的な態度を維持するってほんと大変な努力と自制心を要することです。

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以前はですね、「郷に入れば郷に従え」というように、時間的にも空間的にも、後発者に対して先発者から教化・同化が行われるのが常識でした。また、「長いものには巻かれろ」という風に、多数派あるいは経済力・武力などのリソースを多く持つものに従うことで、集団は秩序の維持を図りました。

しかし現代、徐々にですが、他人の様々な価値観・嗜好をそのまま認め、あるがままにただ同じ時間と空間に隣り合って存在しあうという新しい「多様性社会」が生まれつつあります。

教化・同化は行われないけれども、同じ時間と空間を共有していることから、異なるもの同士の間でも円滑なコミュニケーションを取らなければならない。

その上で出来るだけ共存共栄を目指さなければならない。

そのような場合に最も必要とされるのは相手への「共感性」「共感力」ではないか。

そのように考えられることから、実はデザインの世界では、今後「共感力」の評価の見直しが進んでいくことが示唆されています。

(デザイン世界では、時代の目指す方向性を早めに見出す、ということが非常に重要なので、世界的な〈社会の気分〉というものが常に分析されています)

明治維新のbefore-after

共感力を「西郷吉之助」の魅力の中心に据えたことは、かなり冴えた設定でして、ドラマの中の吉之助の原動力である「自分よりもか弱いものに寄り添い、守る」という説明でもありますし、さらに彼の求心力の原点にもなりうるわけです。

さらに、戊辰戦争で彼はその力をあえて使って周囲をコントロールし、自分の隠された目的である「侍が刀を腰に差して踏ん反り返っている時代の終わり」を導く。そして彼が西南戦争で滅びていく理由もまた共感力です。

「共感力」によって、西郷どんの西郷隆盛像は、明治維新の以前と以後、島津斉彬の下での出世から西南戦争での破滅まで一貫したものになりました。

毀誉褒貶の激しい人物ですが、変遷したわけではない、とすることができたのはなかなかすごいことだと思います。

明治新政府的多様性()

というわけで、放送中は主に認知心理学ですとか、文芸批評の面から、共感性(共感力)すごいなーとか、共感性を設定するのはかなり現代的な西郷隆盛の解釈だなーと思っていたわけですよ。

しかしですね、よくよく考えてみると、薩摩・長州・土佐・肥前に加えて、旧幕閣、公家衆までが角を突き合わせていた明治新政府って、現代的多様性にものすごく近い組織なので、西郷隆盛のカリスマの理由としての共感力は、実際に意外といい線えぐってなーと私などは思うわけです。

というわけで、共感性の解説でした。

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