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中毒になる歌声 イタリアのシンガーソングライターMahmood

唯一無二の中毒性のある歌声と確かなラップスキル、幅広い作曲センスを併せ持ち、ファッションアイコンとしても注目を集めるイタリアのR&BシンガーMahmood (マムード)”Soldi”で2019年のサンレモ音楽祭(イタリア最大の音楽イベント)で優勝、ユーロビジョン準優勝してからと言うもの新曲をリリースするたびイタリアのチャート上位に入る人気歌手。発表曲はすべてイタリア語によるもの。2020年にセカンドアルバムをリリース予定。

1紹介 衝撃のBarrio

私が彼を知ったきっかけは2019年リリースの Barrio(スペイン語で近所)モロッコで撮影されたMVは曲と合わせて地中海地域の若者の生活の美が迸る作品なのでぜひ見てほしい。炎の前で歌うMahmoodのカリスマ性が溢れている。


スパニッシュギターのイントロにM I.AのPaper Planeを想起させる撃鉄を起こすサウンド、畳み掛けるような歌唱に中毒性のあるキャッチーなサビ。 Rosaliaのファンならきっとハマるだろう。踊れる曲だ。銃を模した振り付けも覚え易くてライブで聴きたい。 Mahmoodのどこかに傍観者の視点があるような淡々とした歌声と西洋のポップスではあまり聞かない節回しに惹きつけられた。

歌詞 Lyricstranstlateからの引用 M.Naomiさんによる訳です

君のために死んでも何にもならない
ぼくはこの道から落ちて後ろの海から去る
ぼくは君を呼んでいたと 君が言った                    近所で僕を探して
暗闇の中にいたみたいに
夜には君に会う
僕の家は素敵に見える
「君のためじゃない」と君は言う
でもこの近所に来てぼくと踊って
近所にはいつもたくさんの音がある
たくさんの                                最後のキスは簡単だ
そしてぼくらはカルタゴみたいに落ちる
決して イシスみたいに消えないで
決して

ファンの考察でこのMVは歌詞の意味と重ねてモロッコ人の青年二人の世間から隠れた恋愛ではないかと言われている。MVは車を運転する青年が思い出すもう一人の青年と過ごした時間の記憶と思考で、曲の最後に車が向かい合わせになるのは車を運転していた二人の青年が出会うということ。「夜君に会う」と言う歌詞と一致する。Mahmood自身は解釈は個人に委ねるとインタビューで語る。また、バルセロナのライブではプライドフラッグを持ってこの曲を歌った。私は地元讃歌と受け取ったけどその解釈もなるほどなと思う。

2.Mahmoodのプロフィール

本名Alessandro Mahmoud 芸名のMahmood(マムード)は本名と英語のMy moodの掛け言葉。ファンからの愛称はAle 1992年イタリア・ミラノにサルディーニャ島出身のイタリア人の母とエジプト人の父の元に生まれる。5歳の時に両親が離婚、母方で育つ。小学校のクラスには中国人やロシア人のクラスメイトがいる多国籍な環境で育ったと語る。イタリア語、サルディーニャ語、スペイン語、英語を話す。ライブでアラビア語の曲を歌ったり、Soldiの歌詞には父からかけられた言葉を入れているのでいくつかのアラビア語は知っているよう。「100%イタリア人で、カトリックです」とサンレモ音楽祭のインタビューで語っている。同時に彼は、国籍やセクシュアリティで分類されたくない。僕の人生ではなく、僕の音楽で判断されたい。「私は同性愛者だ」と宣言することでは何も変わらない。この区別を続ける限り、同性愛は決して普通のことにはならない」と語る。


3.キャリア概略

                            子供の頃からピアノを習い、8歳から歌の勉強を始め、多くのコンテストに参加した。人生で最初に歌った曲はLucio BattistiのEppur mi son scordato di te Lucio Battisti.


Amy WinehouseのRehabを歌う16歳ごろのMahmood.16歳でこの渋い歌声。

2012年に多くのミュージシャンを輩出するミラノの名門音楽専門学校CPM音楽学校に通い始める。同校でボーカル、作曲、ピアノを学ぶ。同年、イタリア版XーFactorに出場。3話目で敗退。

2013年、ファーストシングルFallin’Rainをリリース。iTunes Danceのトップ10に入る。
この頃から英語の曲のカバーをYoutubeにアップし始める。


ボローニャのプライドでAloe Black のI need Dallarを歌うMahmood.アメリカのソウルシンガーのような歌い方もできる。

2015年、同じ音楽学校に通うMarcello GrilliとFrancesco Fugazzaとコラボし、この頃からMahmoodプロジェクトを開始する。

2016年シングルDimenticaでサンレモ音楽祭の新人部門に参加し、ファイナリストに選ばれる。同年、ユニバーサルミュージックイタリアと契約。

2017年の夏、ラッパーFabri Fibraに客演したシングルLunaがリリース 。 またファーストアルバム収録のUramakiもこの年リリース。

2018年、GuèPequenのSobrio feat Elodie を制作する。 Marco MengoniのHola (I say) feat Tom Walkerを始め彼のアルバム3曲に制作として参加している。
 2018年9月21日最初のEP Gioventù bruciata (Island Records)リリース イタリアチャート6位

2018年12月、サンレモ音楽祭の出場者として2人の初出場者を選出するテレビ放映されたコンペティション、サンレモジョバンニの第2話で1位になり、シングル「Gioventù bruciata」は第2ファイナルで演技する演技の中で批評家賞を受賞。 Einarとともに勝者に選ばれる。これにより、シングルSoldiで2019年のサンレモ音楽祭に参加。

2019年2月 ファーストアルバムGioventù bruciata(直訳:焼けた若さ 映画理由なき反抗のイタリア版タイトル)をリリース               他にもMahmoodと共に曲を制作する売れっ子プロデューサーDardustとCharlie CharlesがプロデュースしたシングルSoldiでサンレモ音楽祭優勝。       サンレモ音楽祭優勝の経緯はこちらの方のブログに詳しいです。視聴者投票での順位は低かったものの、審査員票を多数獲得して優勝した。 http://sheilabirlings.blog.fc2.com/blog-entry-6397.html


彼の代表曲。Soldi(金)イタリアチャート1位、ほか欧州の国々のチャートにもランクインした。この曲はMahmoodが5歳の時に出て行ったエジプト人の父についての愛憎を歌ったもの。曲の構成が面白く、手拍子が癖になる。個人的に歌詞が刺さった。似たような育ち方をした子供は日本にも沢山いる。

同じ方によるSoldi(金)の和訳と素晴らしいMV考察  http://sheilabirlings.blog.fc2.com/blog-entry-6402.html

4月 Charliie Charlesにフィーチャリングした "Calipso"でイタリアチャート1位を獲得。 

                           
5月オランダに次いでユーロヴィジョン準優勝。              MTVヨーロッパ最優秀イタリアアーティスト受賞                                    9月  Barrioをリリース                        2020年 1月Rapideをリリース サンレモ音楽祭2020に参加する歌手Elodieの曲AndromedaをDurdastと共に制作。

4.Mahmoodの音楽性

彼は自身の音楽をモロッコのポップスと説明する。 幼い頃父親が家族を離れる前に聞いていたアラビアンミュージックが彼の最初の音楽的記憶だそう。彼の歌唱の節回しやサウンドにアラブ音楽の影響が見て取れる。母親の故郷サルディニア島の文化と民間伝承にもよく通じていて、聴いて育ったイタリアのアーティストは Lucio Battisti,Lucio Dalla、Paolo Conte。また成長すると共にイタリアのラップもよく聞いたそう。Mahmoodは最大の影響を受けた歌手にFrank Oceanを挙げ、「彼の音楽はとても自由で、ストレートかゲイかに関係なく誰でも自分のものだと思える。本質が性格とエネルギーだから、性的指向は関係ない。」と Rolling Stones誌に語っている。
また好きなアーティストにRosalia、ジャスミン・サリヴァン、トラヴィス・スコット、SZAを挙げている。コラボしたいアーティストに同年ユーロヴィジョンに出場したアイスランドのロックバンドHatariを挙げた。

個人的にFrank Oceanのラップと歌のいいとこ取りの歌唱はMahmoodにも共通すると思った。Rosaliaとコラボして欲しい。ナスと油並みに絶対合うと思う。

よく共作しているプロデューサーはDurdastとCharlie Charles.またラッパーの曲にもよく客演している。ベテランラッパーMarracashに客演したNon Sono Mara (La Pelle)では歌からラップへのシームレスな移行が見事でアグレッシヴなので是非聞いて欲しい。彼のラップでは一番好きだ。




Mahmoodはリリシストとしても卓越している。ここではないどこかに行きたい思いや恋人とのうまくいかない関係を歌った歌詞が多い。            こちらのサイトに日本語訳をアップしてくださっている方がいます。感謝https://lyricstranslate.com/ja/mahmood-lyrics.html            以前は歌詞を書いてから作曲していたが今は作曲してから歌詞を書くそう。   個人的に好きな歌詞はギリシャ神話の女神カリプソをモチーフに誘惑から逃れ自分の欲しいものをつかめと励ますCalipso「もうどこに心を置いてきたかわからない 多分もう心は無くなった/曲がり角には100人のセイレーンがいる 誰も君の心を探しはしない 今自分の心がどこにあるか思い出せ」と友達みんながバカンスに出かけてしまいミランの街で一人きりの夏を歌ったMillan Good Vibes「生きることがあまりにも厳しいなら生き残ってどうなる お前にムカついても意味がない いいバイブスだけをくれ」。            


ギリシャ神話とエジプト神話、「Uramaki」や「任天堂」「一緒に中国に逃げよう」など東洋や日本のモチーフもよく出てくる。Mahmoodにとって東アジアは現実からの逃避場所なのかもしれない。ポケモンとドラゴンボール、漫画が好きで日本にいつか行ってみたいとインタビューで語っていた。日本でライブして欲しい!サマソニかフジロックの偉い人Mahmoodを呼んでください。彼が日本に来て失望しないといいな。

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5.ミュージックビデオ

2018年から彼のミュージックビデオを監督するのは写真家としても評価が高いAttilio Cusani. RosaliaとCANADA監督並みに相性がいいこの二人は今後要注目。RapideのMVは特にどこをスクショしても壁紙になるような絵画のような美しさだ。カメに乗るマームッドが歌い、柱を押してヒビを入れる。ファンの解釈で亀はベルギーの芸術家ジョン・ファーブルのトマス・モアのユートピアを基にした彫刻Searching for Utopiaのオマージュで柱は安定の象徴を自身で破壊してしまったことを指すのではと言われている。


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6.ファッションアイコンとして

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Mahmoodは2019年バーバリーのホリデーキャンペーンにも起用された。雑誌の撮影でもいつも映りがいい。彼は体に気を使うのは好きだが、流行は追わないそう。柄シャツが最高に似合う。時々ドラゴンの柄や中華風の刺繍のシャツをステージ衣装にしている。伝統的な男らしさの塊のような容姿の人がレースやスカートを着てもクールに決まるのは新鮮だった。

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7.ギャップの魅力

パフォーマンス中はシリアスでクールな佇まいだがインタビューでは地に足がついていてにこやかで可愛らしい。アイドル的な見方をするファンがいるのもよくわかる。

ユーロビジョンの時のイタリア公共放送によるインタビュー英語字幕あり 公共放送が何聞いてんの?って質問ばっかりしてます 毎日恋に落ちるよって答えた時のMahmood可愛すぎですね


歌声・ラップスキル・作曲能力・カリスマ性を併せ持つMahmood、きっと日本でもすぐ人気が出ると思うので今すぐチェック!




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