愛ゆえに①

 愛は見えないが、この世に確実に存在する。
幽霊や超能力者を否定する人間でさえ、『愛』には寛容だ。

 真実の愛があるならば、本物の超能力があってもいいだろう。『愛』がチョコやカップルの日などで形成され、金に換えられているのを見て、小宮静矢はそう考えていた。

 別に、彼がオカルトマニアというわけではない。むしろ、幽霊とかいてほしくないし、超能力なんかほしくない。ただ、『愛』という存在がそれ以上に不愉快なのだ。

「貴方を愛しているから一緒に死んで」と言われた事がある人にはわかるだろうが、この世にはやっかいな『愛』も存在する。

 自分自身を魅了し、魅了されるナルシスト以外は、男女、男男、女男、女女の組み合わせの愛がある。どっちが攻めか受けかはそれぞれに任せる。
だが、片方のみの愛は、重ければ重いほど無意味であり、しつこければしつこいほど厄介だ。

 すべてが不平等のこの世では、無限に存在するはずの『愛』ですら、例外なく需要と供給は成り立っておらず、絶えず誰かが得して誰が損をして、数多ある『愛』は常に手のひらからこぼれおちていく。

 そんな中、愛を望む者はとても、とても多いが、愛を拒絶する者もいるのだ。ごく少数だが。

「……ちくしょう」

 その少数派の、小宮静矢は、恋という目隠しをしている少女から逃げていた。
なんでも、自分は彼女にとって前世からの恋人だという。

 昭和にオカルトという言葉が少し流行ったというニュースはTVで見たことあるが、自分がまさかその言葉を聞くとは思わなかった。
どこから「前世の恋人」などという過去の遺産を引っ張り出してきたのだろう。

 押し付けられる『愛』は彼にとって苦痛でしかなく、追い詰められていくこの時間はまさに地獄だった。

 ああ。また、彼女の足音が近づいてきた!

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峰岸ゆう

白昼夢

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