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実は国策でもあった?地域間交流のこれまで

こんにちは、「〇〇と鎌倉」の狩野です。
前回の投稿から、あっという間に1か月が経ってしまいました💦
(前回の記事はこちら↓)

昨今注目を集め始めている「地域間交流・連携」ですが、時代を遡ってみると、実は1980年代からその意義がとなえられており、1990年代以降は国の事業としても推進されていたことがわかりました。
今回は、これまでにどのような地域間交流・連携が行われてきたのか、その成果や課題などをまとめてみました。

地域間交流と一口に言っても、その定義や目的はそれぞれですが、これまでに国や自治体が主導して進めてきたものは、大きく以下の3タイプに分けられそうです。(他にあったらご指摘ください💦)

1.農山漁村活性化を目的とした、農漁村都市の交流(農林水産省)
2.
豊かな体験活動を目的とした学校⇔地域の交流(文部科学省)
3.文化交流を目的とした姉妹都市同士の交流(各自治体)

それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1.農山漁村⇔都市でつながる

農林水産省では2007年に「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律」を制定し、以降10年以上地域間交流を推奨した交付事業を行っているようです。ここで言う「地域間交流」とは、あくまで農山漁村⇔都市の交流を指しています。

「地域間交流」とは、「都市の住民の農林漁業の体験その他の農山漁村と都 市との地域間交流」をいうこととされている。
(農林水産省 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律より)

地域間交流の意義として、大きく下記の2つが言及されています。
1.都市と農村に住む人々が交流を通じて新しいライフスタイルを作れる。
2.「人・モノ・情報」の循環で、都市と農村の共生・対流を促進できる。

ただし、実際に行われている事業は、道の駅や農林漁業体験施設、研修施設などのいわゆる箱物をつくるものが主で、地域と地域がつながるというイメージよりは、交流人口を増やすための政策という印象です。

ちなみに、2018年度は実施事例が500地区ほどあったそうですが、「目標設定があいまい」「目標未達の場合の検証が弱い」ということで、会計検査院から改善要求がされていたようです。交流事業というのは、概して短期的な成果が望めるものではないものの、継続するためのモチベーションに影響する部分ではあるので、「地域間交流の成果の図り方」を考えることにも意味があるかもしれません。

2.学校⇔地域でつながる

文部科学省では2003年~2004年の2年間、「豊かな体験活動推進事業」の一環として、地域間交流プログラムを全国約800の小中学校で実施。体験活動のモデルづくりや、調査研究を目的に各校が独自に設置した委員会による交流エリアの選定、プログラムづくりなどが行われていたようです。

本研究会においては、都市部から農山漁村や自然が豊かな地域に出かけて農林漁業体験や自然体験を行ったり、農山漁村の子どもたちが都市部において都市生活や職業等の体験を行ったりするなど、異なる環境における豊かな体験活動を「地域間交流体験活動」としてとらえることとした。(文部科学省WEBサイトより)

この活動の主な意義として、下記の3つが挙げられていました。
1.生徒が交流を通じて、豊かな人間性や社会性を育める。
2.学校が交流を通じて、教育活動の充実・改善を図れる。
3.多様な教育機会は、特色ある地域づくりにもつながる。

この時に実施されたプログラムは大きく2タイプ。ひとつは「非日常体験」をポイントにしたもの、もうひとつは「交流」に重きを置いたものです。

1.「非日常体験」重視タイプ
内陸部の学校の生徒が海沿いの地域に行って漁業体験や自然観察をしたり、都市部の生徒が火起こしなどの田舎体験を行ったりするようなもの。1泊2日などの短期で実施されるケースが多かった模様です。

2.「交流」重視タイプ
2校で一緒に米や野菜を育てたり、年間通じて交流するもの。多様な交流をテーマに、インターナショナルスクールの生徒宅でホームステイをしたり、都市部の生徒が離島の住民と交流するようなプログラムも。

1のような非日常体験プログラムは、「地域間交流」に限らず現在も全国の小中学校で活発に行われています。2008年度からは、文部科学省・農林水産省・総務省が連携した「子ども農山漁村交流プロジェクト」も始まり、都市部の子どもたち向けに、農山漁村での長期宿泊体験活動の取り組みが推進されています。

年間を通じた交流重視のプログラムを組んでいるような学校では、交流先地域の産業や自然、歴史などを学ぶ授業が教科ごとに組まれていたり、一時的な体験で終わらない工夫が感じられます。教員と生徒だけでなく、自治体や各種組合、保護者などを巻き込み交流を行う学校もあり、そういった広がりを踏まえてか、2010年度予算からは、文部科学省内での地域間交流というテーマが、「豊かな体験活動推進事業」から、「学校・家庭・地域連携協力推進事業」のメニューに転換され、国の委託事業ではなく、地域の主体的な活動を補助する事業になりました。

現在も地域間交流を継続している学校はありますが、学校主体で交流地域(学校)を選定してプログラムを組んでいるため、教員の問題意識やモチベーションに大きく左右されるところもありそうです。
また、交流先地域の農繁期に教員が手伝いに行ったり、お互いの特産物を地域で販売するような関係を築いているケースもあるようなので、積極的に地域間交流を継続している学校のインタビューもいつかしてみたいです。
面白いケースがあったらぜひ紹介してください!

……と、3つ目の姉妹都市に触れる前に結構長くなってしまったので、今回はこれくらいで。
次回は、全国の自治体で1,700件以上(!)も結ばれている姉妹都市を通じた交流や課題についてまとめてみたいと思います。


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