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法律学小辞典 /ただし『違約罰』については・・・

高橋和之 他編 『法律学小辞典(第5版)』(有斐閣、2016)
はしがきがいいですね。
はしがき「も」ですね。

「最近ではインターネット上で法律用語も検索可能となってきているが、本辞典の最大の強みの一つは、説明内容の正確さにあると確信しており、理解の正確さを確認するためにも大いに活用していただきたいと思っている。」


ただし。
 「違約罰」の項目での、「給付されるものが金銭であるときは、特に違約金といい、」との、違約金を違約罰のうちの給付対象が金銭であるものについての呼称、と捉えているように読める説明には、違和感があります(法律学小辞典(第5版)36頁)。
 
 私は、ずっと、例えば次の中田先生の説明のように、違約金には①損害賠償の予定の場合(別途の損害賠償は不可)と②違約罰の場合とがある、違約罰とは損害賠償とは別の債務不履行に対する制裁であって、損害賠償は別途可能、というように理解していました。

 すなわち、違約罰は、違約金のうちの、特に損害賠償は別途可能な損害賠償とは別の制裁の趣旨のもの、という理解です。違約金には、この「違約罰」以外に「損害賠償の予定」の場合もあり、民法は後者と推定している(民法420Ⅲ)、という理解です。

 潮見先生の次の説明も、同様の理解を前提にしているように思われます。

 「違約金」という用語は契約書によく見られる用語ですので、法律学小辞典の説明は、契約書記載の文言をめぐるやりとりに疑義を生じさせてしまうようにも思います。

【中田『債権総論(第4版)224頁】
 「違約金」と呼ばれるものは、①上記の損害賠償額の予定である場合と、②違約罰である場合がある。①は、現実に発生した損害に代わるものである。②は、債務不履行に対する制裁であり、合意の内容により、違約金とは別に実損害の賠償を請求し、又は、違約金を超える実損害の賠償を請求することができる(能見=大澤・新版注民(10)Ⅱ665頁)。どちらか明確でない場合は、損害賠償額の予定(①)であると推定される。

【潮見『民法(全)(第2版)264頁】
 違約金とは、債務不履行の場合に、債務者が債権者に支払うべきことを約束した金銭をいう。違約金は、損害賠償額の予定か、違約罰かのいずれかであるが、420条3項は、賠償額の予定であると推定している(これに対して、利息制限法4条2項は、違約金は賠償額の予定であるとみなしている)。

【法律学小辞典(第5版)36頁】
違約罰

 契約を結ぶ際に、当事者間で、債務不履行のときには債務者が債権者に対して金銭その他のものを給付することをあらかじめ約束することがあるが、その場合の金銭その他のもの又は約束そのものを違約罰という。債務の履行を心理的に強制することを目的とした一種の私的制裁である。給付されるものが金銭であるときは、特に違約金といい、民法の規定によれば損害賠償額の予定と推定される(民法420③)違約金以外の違約罰についても、この規定が準用されている(民法421)
                                以上

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