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カイロの野良猫、地中海のミュージシャン①


思い出の始まりは、大抵いつも憂鬱だ。

憂鬱であればあるほど、後で見返せば人生の礎レベルで心に残りやがるし、撮った写真や交わした会話全てが宝物になる。ざけんな。



久しぶりの空港は、時間が22時という時刻を過ぎているせいか、それとも平日なせいか、天井の高さを余計に感じられるほど空いていた。


人間の目では見えない小さな脅威に、僕らの生活や人生までもが、大きく変えられてしまった。


そんな世界中が巻き込まれた未曾有のパンデミックを、このタイミングで肌に感じながらも、

「こんな状況でも日本を出る人って意外といるんだな」

なんて、このために10年用のパスポートを取った自分を、他人事のように感じていた。



ここまで気の乗らない海外は初めてだ。なぜかと言えば、自分が企画したり、行きたいと思って決行した物ではなく、とある友人からまるで居酒屋に誘われるノリで


「来月、エジプト行けるんだけど来るー?」

などと、なんとまぁ腑抜けた具合で物事が進んでしまったからである。





6月の頭に、急ピッチで引っ越しを終えた。

引っ越したと思ったら、荷解きも終わらぬまま、1週間半ほど大学の友人の結婚を直接祝うために、東北は石巻に滞在していた。


そして東北から帰ったと思ったらそのまますぐにエジプト。

部屋に散らばった段ボールから、なんとか荷物を寄せ集めた。


久しぶりに開けたスーツケースからは、ずっと無くしてたと思っていたキャンプ道具がわんさかと出てくる。そこにおったんかワレェ!!




社会人2年目になるが、案外学生時代よりも自由に行動しているなあと、俯瞰してみたりする。

在宅勤務というコロナ禍唯一の恩恵を、このギリギリのタイミングでフルに使おうとしているのだから。

きっとこの先の人生も、こんな感じで生きていけるんだろうと、ぼんやりと思っていたし、今でも思っている。



今回、なぜ海外に行くことになったかというと、すごく簡単に言えば、「社会的に成功した人が、未来ある良い感じの若者に世界というものを見せてあげたい」そんな理由である。

多分もっとちゃんとした意味があるのだろうけど、良い感じの若者ではない僕の浅はかな理解なんぞこんな物である。



「ウホ!!海外に無料でいけるぞーーい。」

くらいしか考えていない。むしろ無料だから行くのである。無料じゃなかったら行くわけがない。


そう、この旅は、そのなんかすげぇ大人のご好意で、現地までのフライト、現地の滞在費まで全て無料だったのだ。

しかもエジプトでの滞在はカイロ一の高級ホテル。


さらに驚きな点が、そのツアーが終わって、エジプトに何日滞在しようが、どの国へ行こうが、To日本へのフライトの費用も出してくれるという超太っ腹っぷり。


世の中にはお金を持ち過ぎた人がたくさんいるのは、ここ最近のSNSでなんとなく感じていたが、まさかその恩恵を自分が受ける日が来るとは夢にも思わなかった。

そうやって若い人に還元する超弩級お金持ちもいるんだなぁと、ますますこの資本主義の世の中って、見えない部分が支配しているんだと恐れ慄いた瞬間である。

26歳独身、家賃6万、貯金-380万の自分からしたら、遠いお話過ぎて、結局空港に到着しても一切の実感がないまま、ふわふわしていた。ワシ、本当に出国できるんですかねぇ?


そんなこんなで、一緒に今回の旅を周る人たちと、チェックインカウンターで合流した。


そう。今回の旅はエジプトでのツアーがざっくり組まれていて、そこには同世代の方々20名くらいが参加するのだ。

先発組と、後発組に分かれていて、後発組の僕たちは10人ほど空港に集まった。


知っている顔はほとんどおらず、なんならその中の数名は既に知り合いのようで、人見知りの自分は、一気に殻に閉じこもった。

幸いにも、今回僕を誘ってくれた友人と、もう一人友人が一緒にいたので死ぬほど助かった。もし一人だったら空港着くまでに引き返していたかもしれない。

人と会う時モードを振り絞って、軽い挨拶を済ませ荷物を預ける。


夜ご飯を食べていない人がいて、みんなでお店を探したけれど、ものの見事に全てのお店が閉まっていて、「機内食出るのかなー」なんて心配がっていた。


そんなちょっとした発見なのかハプニングを後に、飛行に乗り込む。幸い隣の席は今回誘ってくれた友人だったのでちょっと安心した。




いつだって飛行機はワクワクする。

離陸の瞬間はこんな歳でも外を思わず見てしまうし、陸上生物である自分が生まれ落ち、さっきまで踏み締めていた土地を、普段見上げている遥か上空から見下ろすのは非日常感でしかない。

自分がいた場所が、こんなにも綺麗だったことを知る。

地上にいるときは、薄汚くて暑くて混み込みしたところにしか思えないが、一歩引いてみるとこうも違って見えるのか。

そりゃ隣の芝は青くも、1000万ドルの夜景にも見えるってわけだ。


飛行機の中では特に何か起こるわけでもなく、モニターに内蔵されている、なんとも言えないゲームをしていた記憶しかない。

友人はゴルフゲームをしていて、僕はトリビアクイズに割と時間を咲いていたと思う。


もちろん夜のフライトでも機内食は出た。飛行機ってすげーな。


PSPのみんゴルの方がマシ



気づいたらトランジット先のドバイに着いていた。

同じ飛行のビジネスクラスかなんかに、ガーシーがいたらしいけど、あんな黒光おじさんには全く興味がない。後から中東にいることを知って、ことの信憑性が上がったりした。


カイロ行きのフライトまでは、10時間前後ほど時間があった。


もし一人で来ていたら、空港内の飲食店か何かに座って、ひたすらにTikTokかYoutubeを見て過ごしていただろう。


人と行くのは面白いもので、自分にない考え方をもらったり、普段絶対しないような行動をして、そこで何かが起きたりする。


今回も、「トランジットの間にドバイを堪能しよう!」となにやらスゴイことが始まりそうなノリになった。

海外経験の薄い僕は
「へぁ?トランジットって外出れるんですか??」

とポカンとしていたけれど、さすがイケてる同世代。ささっと空港職員に聞いて、気づいたらドバイの地に降り立ってしまった。


まるで自分はターミナルみたいじゃないか。

トムハンクス、やっぱすげえ!



ドアを開けた瞬間に広がる熱波。重苦しい湿度。

これだ!

久しぶりに来た海外を五感で感じ、テンションが上がった瞬間である。


せっかくだからと、世界一高いビルであるブルジュハリファを見にいこうと、タクシーに乗り込んだ。


ちなむとこの時も、一緒にいる人が誰が誰だかわからないし、名前も一致しないし、なんかその場のノリで話していた気がする。


車内から見た景色は、想像の通りだった。

砂漠の上に近未来の都市がポンっと乗っかっている様で、その土地の文化や色があるかと言われれば、全くと言っていいほどない。

これがグローバリゼーションでちゅよ〜、と説明するのにはベストな場所だと思う。



と発見とも落胆とも言い難い感情をぐるぐるさせてながら、車内で話していたらブルジュハリファについた。

写真下手で伝わらない….


なんていうか痛い。首が。デカすぎて上まで見れない。

近くで見ると意外と安っぽくて、是非間近で見てほしい。プラスチック感がある。



たまたま一緒にいた奴らが、クリエイターだったこともあり、おもむろにブルジュハリファの前で撮影を始める。


どこでも撮影できるし、ここで撮ろう!ってなるのがスゴイな〜って思った(クソ一般人の感想) 


普段自分が見てるコンテンツが、こうやって作られてるんだってのは、初めて間近で見れたので結構感動した。


警備員が来て、ここでやるな!みたいなことめっちゃ言ってたのは笑ったけれど。


しかしまあ暑い。ってか暑さに加えて湿度がやばい。

正直、税制の面でドバイに住むの良いですよ〜などとYoutubeで言っている方々をたまに目にするが、こんな土地で過ごすくらいなら、高い税金払って日本の避暑地にいた方がマシだと思った。


まぁ高額納税とは程遠い人生なのですけれどもね。



わりとボロクソ書いているけれど、たまたま入った超高級ショッピングモールのお菓子屋さんのお兄さんは、めちゃめちゃ試食させてくれたし(しかもこれが美味い!)

いい笑顔。結局買ってねぇけど。すまん。



ドバイ一の超絶高級ホテルとか、ありえん綺麗なビーチとか、人工島リゾートで有名なパームアイランドとかを案内してくれた、Uberのドライバーさんは死ぬほど良い人で、一気にこの土地が好きになった。


おすすめのビーチは、白い砂浜に、海の色がどこまででも綺麗で、ドバイのイメージが大きく変わった。

入ってみたらぬるま湯くらいの水温で一瞬で出た。ふざけんな。すんげぇ楽しかったけどね。

ゴミも一切ないし綺麗である。湘南なんて入ってられないのである。


ビーチで砂まみれになって車に乗ってしまっても嫌な顔1つせず、なんなら俺らが遊んでる間に人数分のミネラルウォーターを買ってきてくれたり。

もう湿度でメガネ曇るし、優しさで前が見えない。

Uberの運ちゃん。ナイスガイだぜ。


そのままバザール的な場所に連れていってもらい、割と強引な客引きに異国を実感した。

香辛料と、変な置物と、謎のTシャツばっかりで、欲しいものは1つも見つからなかったけども。

カモが来たぞみたいな顔すんじゃねぇやい


とまぁ、トランジットにしては十分すぎるほどドバイの全てをみた気がする。逆に他見るところあんの?(絶対にある)

観光でわざわざ滞在してまで行くかと言われたら、行かないかな。今回の数時間で存分に堪能できた。


そんなこんなでドバイの空港へ。

俺らに素敵な旅をプレゼントしてくれたUberのドライバーともここでお別れだ。

乗っていたみんなでチップを渡したら、最初すごい謙遜していた。

いやいや。お前が今日のMVPなんだが????


僕らの冒険と思い出の対価が、この地へ出稼ぎに来ていた彼にとって、少しは腹の足しになったことを願うばかり。




遊びすぎたせいか、死ぬほど汗だくになった。

何を勘違いしたのか、長袖長ズボンで中東の6月をエンジョイしようと言うのはさすがに不可能である。


こんなんで飛行機なんて乗れたもんじゃない。


と思ったら、「空港にシャワーあるんじゃね?探そうぜ!」
と誰かかおもむろに言い放った。

「え?空港ってシャワーなんてあるんですか??ゴールドカード持っていないけど僕も入れますか???」


結果。シャワー、無事発見。

こいつらすごい。俺が知らないことたくさん知ってる。一生ついて行こうと思った。

タオル忘れて、偶然外に放置してあったペーパータオルで全身拭いたのは良い思い出。2022年トップレベルでスッキリしたと思う。


こんな盛りだくさんの出来事を経て、やっと目的地のエジプトへ向かうことに。

行きたいと思ったことなんて一度もない国だったけど、色々な国へ行ったことのある友人が「マジでエジプトが一番良い」って言ってた理由をこのあと実感することになる。



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