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【逗子・葉山 海街珈琲祭vol.7】「THE FIVE BEANS」は、葉山のコーヒーカルチャーをリードする。今までもそしてこれからも

湘南エリアのコーヒー好きなら知らない人はいない、この地のパイオニアが葉山にいる。コーヒーがまだ根付いていなかったこの街に、コーヒーのカルチャーを芽吹かせた存在。今の葉山にコーヒー店やロースターが増えてきた、ひとつのきっかけをつくったと言っても過言では無いはず。

御用邸の目の前で、葉山を行き交う人や時代の流れを見つめ続ける、小さなお店。このお店こそが「THE FIVE BEANS」。葉山のコーヒーカルチャーの歴史をつくり、そしてこれからもこの街の暮らしをコーヒーで彩り続けていく。

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「THE FIVE BEANS」が、ここまで辿ってきた道筋。


「この時期はイベント出店とか子どもの運動会重なっちゃって、ドタバタでほんとすみませんね」

緊張して扉を開けた私たちが拍子抜けしてしまうほど、物腰柔らかで優しい印象の男性。この方が、葉山の森戸海岸で生まれ、この地でコーヒーカルチャーを牽引してきた森嵜さんその人である。

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キャリアのスタートは、意外にもコーヒーでは無かったという。大学を出て、冷凍食品の商社にサラリーマンとして働く。営業職として従事しながら、研修として全国様々な工場に入り現場を見続けてきた。

「そこで、食べ物を工業製品のように扱うことに違和感が生まれたんですよね」

2年少しでその会社を辞め、学生時代からサーフィンをやっていたというつながりもあり、当時サーフボードを取り扱いはじめたパタゴニア鎌倉店で働くことに。サーフィンをしながら、海の近くで働く喜びを強く感じていた。

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「いい波来たら仕事放っても乗りに行きたいじゃないですか(笑)でもこの辺りは波が来てる時間が短いから、いつでも海に行けるよう手に職つけて自分で仕事したいなって」

パン職人、家具職人、そば職人。調べていく中で、ふと目に留まったのがコーヒーだった。横浜にあったUCC初代ブラジル駐在員の社長がやっていた、小さな貿易会社で働くことに。焙煎もやってルートで回って卸もやって、コーヒーの仕事の全てを経験することができた。

時代はちょうど、スタバが日本に入ってきて、少しずつコーヒーも良いものが出回るようになってきた頃のこと。

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「グルメコーヒーコンテスト(今のカップ・オブ・エクセレンス)で優勝した、グアテマラの豆を取り寄せて焼いたんです。その味は今でも忘れられないですね」

こんな美味しい豆があるんだ、という衝撃。コーヒーの「幅」がまだまだ広くは無かった当時の日本で、色んな種類の豆を集めて、しかも地元葉山でコーヒーの仕事ができたら楽しいのではないか。

そのためには、まず良い豆が必要だった。

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「その時にたまたま本屋で立ち読みしてたら、ユニカフェというコーヒーの商社から独立した人の記事を見つけて、すぐ電話しましたよね」

そこで関係性が生まれ、良い豆を適正価格で卸してもらうことができるように。今なおその関係はつづいている。特に当時はコーヒーのグループに入って始める方が多い風潮がある中で、小ロットだと良い豆を仕入れることが難しいという背景があった。それでも腰越のコーヒー店さんだったり、人とのつながりがあったからこそ、森嵜さんは個人ではじめることができたという。

「30歳になる頃から4年くらい、知り合いにシーカヤック併設のカフェバーで働かないかって誘われて。断ってたんですけど、豆売っても良いってことで働くことにしました」

週末は朝9時から夜中まで基本一人で回し続けるほど、忙しく働く日々。それでも少しずつ森嵜さんが焼いた豆に、お客さんがつき始めることで手応えを感じることができた。

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「そしてそのあと、一色の山の中の家に焙煎機入れてやっていたのですが、その時に今の物件に出会ったんですよね」

不動産屋に問い合わせたところ借り手がついていて落胆するが、キャンセルが出て契約することができた。そしてこの場所に来て11年、当時はロースターが数えるほどしか無かった葉山の街には、コーヒーの風景が当たり前に見られるように。

葉山の街に、コーヒーの風が吹いた。

波に乗るように力を抜いて自然体で。これからも葉山の街を盛り上げ続ける。

「コーヒーの産地って全部波が良いところが多い気がしませんか?」

世界の農園を見に行きながら、ついでに良い波にも乗ってくる。旅をするようにコーヒーとサーフィンを楽しんできた。自然のすぐ近くで自然体で、森嵜さんはコーヒーのクオリティを今日も追求し続けている。葉山に波は無いけれど、この海街で飲む「THE FIVE BEANS」のコーヒーは特別に美味しい。

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「東京でコーヒーのコンテストにも出たんですけど、僕はもう少し自然体でコーヒーを気軽に楽しむのがいいかなって、今は思ってます」

豆や技術への飽くなき探求やこだわりは大前提の話。その上で、もっと気軽に、緊張しない楽しいコーヒーを、森嵜さんは淹れてくれる。豆は中南米が中心で、アフリカやインドネシアの個性的な風味のものを厳選。香りや酸味が豊かで、苦味はおさえられたコーヒーを、ぜひ海街珈琲祭でも味わってほしい。

「やっぱり生まれ育ったこの街が自分には合っているので、この街に似合う自然体のコーヒーを淹れていきたいですね」

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そんな「THE FIVE BEANS」では、基本的にコーヒーを頼むとタンブラーに入れてくれる。このタンブラーを持った人が街や海を歩いているシーンは、葉山でひとつの風景となっている。

「街の中でコーヒーを楽しんでもらいたいという想いもあります。ただそれ以上に単純に、自分のお店の紙カップがゴミとして捨てられていたら悲しいじゃないですか」

自然や街、コーヒーに対する想い。それらを全て持った森嵜さんだからこそ、「THE FIVE BEANS」が多くの人にとって暮らしの中心であり続け、愛され、共感を生み続けられるのだろう。

「それに、タンブラーを返しにきてくれるときに、「今日はどちら行かれたんですか?コーヒーの味どうでした?」って会話ができるじゃないですか。コーヒーを通してコミュニケーションが生まれる一方通行じゃ無いのが、自分らしいかなって」

コーヒーを渡して受け取ったら関係性が終わる、そんなの面白く無いから。森嵜さんから受け取るコーヒーには、またここに戻ってきてくださいねというメッセージが込められている。

「THE FIVE BEANS」のロゴにある綺麗な花のように、葉山の人たちの日常にとって、そして葉山を訪ねてくる人たちの時間に、彩りを与え続けてくれる存在なのだ。

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「あ、これ「タコノマクラ」っていう海洋生物なんですよ。ちょっとコーヒー豆みたいでしょ?」

どこまでも遊び心たっぷりで、自然体を貫き通す森嵜さん。これからも森嵜さんがいる限り、葉山の街の風景にコーヒーの香りが溶け込み続ける。

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「THE FIVE BEANS」
住所:〒240-0111 神奈川県三浦郡葉山町一色2037
営業時間:open 火曜及び第2,4水曜定休
>Facebookページはこちら

「THE FIVE BEANS」の絵も描いていただいた、林靖博(Rainy)さんのイラスト展示ブースもお楽しみに!

今回の海街珈琲祭では、台湾人アーティストの林靖博(Rainy)とのコラボ企画で、出店全店舗のイラストを描いていただいています。
11月16日には原画の展示もありますので、ぜひお楽しみしていただけますと幸いです!

ファイブビーンズ

取材 / 写真 / 文 : 庄司賢吾・真帆(アンドサタデー 珈琲と編集と)

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