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船に乗って近くの離島へ行く

1人で行くつもりだったけど、インド人が予定を聞いてくるので、仕方なくあなたもくる?と誘った。
インド人は私のことを恋人だと勘違いしてると思う。シャイでコミュニケーションが苦手なインド人が日本在住1年でやっとできた友達、それが私。私にはインド人が何も知らない赤ちゃんに見えている。


私は自転車を船に持ち込んで渡る。インド人は現地で電動自転車をレンタサイクルする。
島は海から突き出た山。アップダウンが激しい。私の自転車はすぐに手押し荷物になった。そういう現地情報を事前に調べたりしないのだ。
汗がドバドバ出て、持ってきた水筒の水はすぐになくなった。公衆トイレの水で補給した。無限に水が確保できるのはいい。水をたくさん飲んだが、全部汗で出ていってトイレが必要なかった。

坂を登りつめて、さぁ下りだというところで、私は自転車のブレーキの効きが弱くなっていたことを思いだした。普段は慣れた道ばかり行くので不便がなく忘れていた。急な坂だとほぼ機能しないブレーキだった。大丈夫かなと思った頃には坂を下り始めてしまった。いつもあまり深く考えず行く。
止まらない。坂が終わらない。どんどん加速する。知らない道、どこまで続くのかわからない恐怖。このまま加速し続けて1番下まで止まれない可能性もある。その間加速し続ける?その間車がたくさん来たら?止まるには自転車ごと木が茂っている道の脇にぶつかって行くしかない。
いや、もう止まれないのだ、このままなるようになれ。人生には後戻りはない。ビリビリ危険な今この時も、家でのんびり安全に過ごしている時も状況は変わらない。恐怖をアドレナリンに変換。肩の力を抜こうと努力する。実は楽しいのではないかと思ってみる。開き直って猛スピードの中バランスをとることに集中したら、いつしか登り坂をつかまえて止まることができた。
死ぬかと思った。死にはしなかった。手がいつまでも震えていた。インド人がもうやめてくれ、自転車を修理してくれと言っていた。その真っ当な進言を神経質すぎ、と片付けた。ちゃんと怖かったのに、スリルに味を占め、その後何回かアンコントローラブルな坂下りをした。下るのは頑張って登った報酬だ。下り坂があるのに押して歩くなんてもったいない。危険思想。
自転車を修理しないと。

インド人は登り坂を越えたあたりで電動自転車のバッテリーの減りが70%になって一日保つのかと心配して騒いでいた。神経質だ。70%で心配してどうする。万が一、0%になったらなったで押して歩けばいいのだ。インド人が神経質なので、私はいつもより余計にワイルドに振る舞いになっているように感じられる。変な相互作用。いや「互」なのかはわからないが。

宗教上の理由で、インド人は日曜日は動物性のものを一切食べない決まりらしい。その島はうどんが名物だったが、だしに魚が使われているのでNG。インド人はお弁当を持参してきていたが、私1人だけレストランに入るのも変だな、どうしようと思っているうちに、お店があるゾーンを過ぎて食料の手に入らないところまできてしまい、やむなくインド人のお弁当をシェアしてもらった。チャパティにスパイシーな野菜煮込みを挟んだもの。

坂登りで疲れ、軽い熱中症で頭が痛くなった。私はお昼すぎには帰ることにした。電動自転車のインド人は元気で、まだいたいと言うので、私だけ船に乗って帰った。

帰って昼寝をして、銭湯に行った。疲れた分気持ちいい。飛んだ。

沢があると水に触りたい
いいちこの広告みたいになったらいいなと思って撮った
S字構図だ、と思って撮った
船内のサビ
お気に入りの一枚

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