館ミステリー靴下探偵物語その3

登場靴下
流石紫央(さすがしお)…靴下探偵。くるぶしソックスの右足用
流石りあ…くるぶしソックスの左足用。紫央と二人で一組
スケスケ…シースルーの靴下。
雪月花陽炎(せつげつかかげろう)…右足用。相方の左足用を田辺さんに無くされる

登場食品
干しいも…紫央たちが箱の中で出会った干しいも

登場人物
田辺さん…恐怖の館の主
あんり…田辺さんの友達
はるちゃん…田辺さんの友達

※この物語は事実をもとにしたフィクションです。靴下の名前は田辺さんが考えてくれました。

↑この続きです


流石りあ「きゃーっ!あなた誰よ!」

思ってもいなかった先客の存在にりあが思わず悲鳴をあげた。物を見た目で判断してはいけないが、どう考えてもこの先客がオレたち靴下と同じ個室の中にいるのはおかしかった。

干しいも「おいおい、いきなり悲鳴をあげるなんて失礼なお嬢さんだな」

先客は軽く微笑んでおり、そこまで怒っていないようだった。

流石紫央「すまない。今日は色々あってちょっと神経が過敏になっているんだ。オレたちは今日この家にやってきたばかりの靴下だ。よろしく」

干しいも「よろしく。オレは干しいもだ」

流石紫央「干しいも…靴下売り場の店員の話で聞いたことがあるぞ。食品だよな?」

干しいも「Exactly!オレは蒸したサツマイモを薄く切って乾燥させた食品だ。そのまま生で食べても良いが、火であぶるとうまいぞ」

流石りあ「ちょっと待ってよ!なんで干しいもと靴下が同じ空間にいるのよ!私たちが同じ空間にいておかしくないのは実家からの仕送りの箱くらいよ!」

干しいも「そうかい?干しいもと靴下が同じ空間にいるのはそんなにおかしいかい?」

流石紫央「いや、干しいもは最近美容方面でも評価されているからお友達へのプレゼントの袋の中に干しいもと靴下が一緒にいてもおかしくないぞ」

スケスケ「ちょっと、そういうことじゃないでしょ!プレゼントでもらったとして、家で開封した後、干しいもと靴下が同じところにしまわれたらおかしいでしょ?」

オレは改めて想像してみた。

流石紫央「はっ!それはおかしい!干しいもと靴下は住む世界が違い過ぎる!」

スケスケ「あんた探偵でしょっ!しっかりしてよ!」

干しいも「くくくっ…あんたたちおもしろいな」

流石紫央「おい、オレたち褒められたぞ。良かったな」

流石りあ「バカにされてんのよ!」

干しいも「バカにしてはいないさ、ただ、改めてあんたたちはこの家に来たばかりなんだって思ってさ」

流石りあ「どういうこと?」

干しいも「オレはさっき自分を干しいもだと言ったが、あれは半分嘘なんだ」

干しいもはそう言うとその場に倒れこんで、「立ち話もなんだな」と言った。実際は動けないから、たまたまずり落ちたことを格好良く言ったんだろう。

干しいも「オレは元干しいもなんだ」

流石りあ「だからどういうことなの?今も干しいもにしか見えないわ」

干しいも「この家に来たやつらはみんな名前がスナフキンになるんだ」

流石紫央「おい!何を言っているんだ!」

干しいも「あんたたちももう靴下ではない。スナフキンだ!」

流石りあ「やめて!私たちは靴下よ!」

流石紫央「おい!何を言っているのかさっぱりだ!ちゃんと説明してくれ」

干しいも「良いだろう…少し長くなるぞ…」

そう言って、干しいもは倒れたままの姿で話始めた。

干しいも「あのときはオレもまだ自分のことを干しいもだと思っていたっけ…。ある日、田辺さんがこの部屋で大騒ぎしていたんだ。

田辺さん『ない!GUCCIのピアスがない!』

ってさ。それから、

田辺さん『パスタソースも消えたよ!靴下なんて5足も片方がない!なんで?!』

流石紫央「靴下の片方が5足も?!…大事件じゃないか!!」

オレは思わず大声で叫んでしまった。干しいもは「ここじゃそれが日常さ」と、当たり前のことのように言って、また話始めた。

干しいも「田辺さんはそこら中を探していた。必死に探していたよ。あいつらの名前も呼んでた。

田辺さん『GUCCIのピアス―!パスタソース!靴下ー!いたら返事してー!』

って。田辺さんは悪人じゃない。それでも消えたやつらは出てこなかった。疲れ果てた田辺さんはとうとう座り込んだ。

田辺さん『どこにもない…。あんりが物にも住所を作って、その住所に置くようにすればなくなることはないし部屋も片付くって言ってたっけ。はるちゃんは実際に住所を作っているって言ってたな…だからあの子の家はいつもキレイなんだよ…』

オレは落ち込む田辺さんをそっと見守っていた。干しいものオレを食って元気を出して欲しかった。干しいもは食物繊維は勿論、カリウムやマグネシウムも豊富なんだ」

流石りあ「【物に住所を作る】って【元あった場所に戻す】を現代人に刺さるように言い換えたのね」

干しいも「そして田辺さんはついに決めたんだ…!

田辺さん『物に住所ってなによ?!うちの物は全部住所不定だよ!!
うちの物はみんな旅人!!みんなムーミン谷のスナフキン!!
春になっても戻ってこないスナフキン!!』

※本家のスナフキンは春なるとムーミンに会いに戻ってきます

その日からこの館の物たちは全員スナフキンになったんだ」

流石紫央「ちょっと待て!何も解決していないぞ!」

スナフキン(干しいも)「だからあんたたちももうスナフキンなんだよ!」

流石りあ「いやー!私は靴下よー!」

流石紫央「オレたちは靴下だ!スナフキンじゃない!」

スケスケ「みんな落ち着きなさい!私たちは靴下だし、あんたは干しいもよ!」

スナフキン(干しいも)「まぁ良い。ゆっくり自分たちがスナフキンであることを認めて行けば良いさ」

流石紫央「オレはスナフキンにはならないぞ!オレは靴下探偵流石紫央だ!」

スナフキン(干しいも)「話したいことは終わったし、オレは少し眠るよ。免疫力の向上が必要になったら呼んでくれ」

言いたいことだけ言って、干しいもはオレたちに背を向けた。干しいもの話を聞いたりあは泣いていた。

流石りあ「私は靴下よ…靴下の流石りあ…持ち主の足の保護と保温、そして足元のおしゃれのお手伝いをする靴下よ…」

流石紫央「あいつの言っていたことは気にするな!オレは靴下探偵流石紫央だ!」

スケスケ「「私たちだって靴下よ!靴下の羽衣石翠(ういしすい)と羽衣石爽(ういしさや)よ!」」

流石紫央「おい!スケスケってそんなに格好良い名前だったのか!」

流石りあ「後、ちゃんと二人いたのね!途中からおかしいと思っていたのよ!靴下は二人で一組なのになんでスケスケだけ靴下なのにひとりなのかって!」

スケスケ「「今までずっと言葉を2人でシンクロして同時に言っていただけで、ずっと二人いたわ」」

流石紫央「よし!これで今までのつじつまは合うな。で、二人とも雪月花陽炎のことが好きなのか?」

羽衣石翠「違う!爽(さや)が好きなのよ!」

羽衣石爽「違う!翠(すい)が好きなのよ!」

流石りあ「ふふふっ初めてシンクロしなかったわねっ」

さっきまで泣いていたりあが笑って、オレたち全員笑いあった。この恐怖の館でも仲間たちがいればなんとかなると思っていた。

スケスケが2人同時にいなくなるまでは

つづくかもしれない


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