人生で一度言ってみたい言葉

某月某日

歯医者さんの日。その日は先生が「予想外のことが起こった」と何度も連発する日だった。私が、(この人少しは色んなパターンを考えて行動したほうがいいのでは?)と、思い始めた頃、私の隣で治療されていた人が、「すみません。口をゆすぐコップがありません」と言っていて、隣の人にも予想外のことが起こっていると思った。

某月某日

のび太くんとセワシくんってドラえもんとの仲の良さでお互い一瞬でも嫉妬はなかったのかなと考えたけどわからなかった。

某月某日

三歳の息子が逃走中という番組にずっとはまっている。息子の為に録画したものを何度も繰り返し見ている。息子は一番最初に捕まった人のファンになったらしく、録画した逃走中でその人が捕まるたびに「最初から見る!」と言って巻き戻しを要求する。私は何度も捕まり続けるこの人を解放してあげたい。

某月某日

夫がチャーハンを作ると言うので、待つ。夫は昔チェーン店の中華料理屋さんでアルバイトをしていたらしく、チャーハンがうまい。作りながら夫が、「今考えると、お客さんにバイトの男子高校生の作ったチャーハン食べさせるってなんか申し訳なかったな」と言ったので、「私はむしろお金を払ってでも男子高校生の作ったチャーハン食べたいですよ」と言うと、「そう?」と安心していた。私は昔男子高校生だった夫のチャーハンを食べる。

某月某日

遊びに夢中になりすぎた息子がトイレに失敗し、床が濡れていた。私が「あ!」と言ったら、息子が「ハンターが放出された」と言った。

某月某日

家族でケーキを買いに行く。買っている最中に外が大雨になる。優しい店員さんが「雨が落ち着くまで店内で雨宿りしてください」と言ってくれ、お言葉に甘える。夫が「今、自分は美味しそうなケーキに囲まれて、世界一幸せな雨宿りをしている」と言う。雨が弱まった頃、夫が焼き菓子を何個か追加で購入していた。外に出て夫は、「店内をじっくり見ていたら、あまりにも美味しそうだったから」と言い、「こんなにじっくり見たのは初めてだ。焼き菓子コーナーは楽しい」と言っていた。

某月某日

午前中、外を歩いていて、ふと、周りの人全てから自分が置いてきぼりをくらっている気持ちに襲われる。こんなにも天気が良くて気持ちが良いのに暗闇に飲み込まれる。私は、(アーティストの誰か、人込みで突然不安に襲われる女をプロモーションビデオのワンシーンに使ってくれないかな。サビに行く直前とかに使えないかな)などと考えて暗闇から脱出する。

某月某日

『星のカービィ ディスカバリー』というゲームをして、カービィはすごいなと思う。カービィは大きな穴に落ちても何度も挑戦する。自分が負けなければ何度でも仲間を復活させられる。困難を乗り越えてゴールにたどり着いた瞬間、ダンスを毎回全力で踊る。そして可愛い。そんなカービィだからか、カービィの仲間は私だったら泣きながら「許してください。ここは駄目です。絶対に嫌です」と言いそうなとんでもない土地に行っても「楽しい」と言っている。カービィは見習いたいところが沢山ある。

某月某日

よく行く歯医者さんで先生が「〇〇さ~ん」と呼んだとき、別の人が返事してしまい、その人が「やだ!私〇〇さんじゃないのに返事しちゃった!」と恥ずかしがっていたら、先生が、

「よ~し、オレが呼んだらもうみんな返事しちゃえ~!」

と言って、みんなで笑った。楽しかった。

某月某日

スーパーで買い物をしていると、女性のお客さんが店員さんに向かってお弁当の内容と貼られたシールの内容が違っていることを教えてあげていた。

店員さん「あ!すみません!ありがとうございます!助かります!」

女性「いえ、さっきから色んな人が前を通っていて、絶対に気づいてるはずなのに誰も言わないから…」

良いことをするのにも言い訳は必要なんだなと思った。

某月某日

Tさんに会う。Tさんは夢を叶え、その夢を常に進化させて頑張っている。そんなTさんは言う。

Tさん「思うんだけどさ、あ、今まで全く知らなかった人とかは別としてよ。仲が良いのは前提の話よ。今の私と一緒にいて、「どうせ私なんて」とか「私なんかと」って態度をとられるよりも、強かに近づいてくれたほうが私は安心するの。私達ってさ、『夢』があるでしょ。『夢』叶えたいなら私を利用してよって思うの。「友達を利用してまで…」って人もいるかもしれないけどさ、その程度の『夢』なの?って思うの。今の私の立場も一生のものかわからないし、そのときその人が『夢』叶えてたらさ、そんときは助けてねって思うの」

某月某日

髪の毛をドライヤーで乾かす。ドライヤーがごおおおおおおおと大きな音を出す。その大きな音に邪魔されながらも、微かに、息子の笑い声が聞こえる。ひとりの人間ではないし、ごおおおおおおおおと、このドライヤーの大きな音と同じくらい、息子と私の間には隔たりがある。私の中では全人類ドライヤーの音を挟んで生きている。でも、ごおおおおおに邪魔されても、息子が笑っているのが確認出来たらそれで嬉しい。あなたが笑ってるから髪を乾かしている私も笑ってるよと思う。

某月某日

人生で一度言ってみたい言葉、私を信じて

終わり


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