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昭和セピア色のこんなハナシ ep07. 「スエーデンの男の子」の巻

大きなお屋敷

スエーデンとフィンランドがNATO加盟申請書を提出した、とのニュースで急に思い出した。スエーデンと言えば、こんなことがあったと・・・。

僕が小学3年生だったか、いや4年生だったかなぁ、近所にやたら大きなお屋敷が建てられた。この辺にある普通の民家の10倍、いやもっと広い敷地に、いわゆるガレージ付きで、門扉から数メートル入った少し小高い位置に、その豪華な建物が見えた。

一体、誰が住んでいるのだろうと、のんちゃんもたかしクンも、近所の子供たちは興味津々だった。親に聞いても分るはずもなかった。

ある日のこと、大きな車(多分キャデラック)がガレージの前の駐車スペース(ゆうに7,8台はとまれる)に入ってきた。車から降りてきた人たちは、背の高い大きな外国人が3人か4人か、僕は本当にびっくりしてしまった。

その車の前方には小さな旗が付けられていた。よく見ると、青地に黄色の十字模様が見えた。多分、あれは国旗なんだろうなと、なんとなく理解はできた。運動会などではためく万国旗を何度か見ていたからだ。

早速、旗の模様を調べたくなったけれども、僕はまだ世界地図は習っていないし、兄の教科書すらどう調べていいのかも分からなかった。

そうだ、今度学校の図書室で調べられるかも知れないと、内心ワクワクしたような気もする。

世界地図とか、世界の国旗とか、それなりに何とか調べたんだろうと思う。そう、あの旗はスエーデンの国旗だった。なぜここにスエーデン人が住むようになったのかは分からないけれど、今思えば、おそらくスエーデン大使か公使の私邸だった可能性は高い。

金髪の男の子

とある日、たまたまそのお屋敷の近くで遊んでいたら、金髪の男の子が出てきて、言葉は通じなくても子供同士のコミュニケーション的な相通ずるものがあったのかも知れず、何はともあれ一緒に遊んだ。

年齢的には僕より2~3歳位は小さいと思われた。いわゆる坊ちゃん刈りの金髪で青い目、何とも不思議な気もしたが、すぐに馴染めた。

そうこうしているうちに、そうだ、ぼくんちに行こうよ、となって我が家に連れてきた。汚くて狭い小さな家だ。母さんはびっくりしていたが、どこの子?とはならず、あの大きなお屋敷の子とすぐ分ったようだ。

「おやつ」らしきものは無かったのだが、たまたま食パンがあって、外国人だからパンなら慣れているだろうとのことで、母さんはありあわせの缶詰か何かから急遽サンドイッチを作ってくれた。

僕たちはお腹が空いていたのもあるが、男の子と一緒に母さんの作ってくれたサンドイッチを食べた。言葉は通じないけれど、身振り手振りで何とか気持ちが通じ合えたようだった。

お家で心配しているだろうからと言って、母さんはその子をお屋敷まで送ってあげなさいと・・、僕に促した。

お屋敷の前で、バイバイと手を振って別れた。男の子が1時間少々、行方不明になりおそらくメイドさんらは心配したはず。きっと叱られたに違いない。今なら警察も含めて大騒ぎだろうと思うけれど、あのころはそんなのどかで平和な時代だった。

あの子は今・・。まぁ、多分覚えていないだろう。それとも、狭い路地の奥まったところの汚なく狭い家で、おいしくもないサンドイッチを食べた記憶は残っているのだろうか・・?

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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