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薬物とクラブ~「私はやらない」を言えるシーンであって欲しいという願い~

※この記事は3月24日にオンラインコミュニティ「アニソンDJ作戦会議」に投稿した内容を加筆修正したものです。原文と追記で一部の内容に重複がありますが、ご容赦下さい。

※このエントリーで触れるテーマには様々な観点があります。例えば、薬物依存で逮捕・起訴された人が生み出した芸術作品の処遇や、刑罰か支援かという問題など。今回は、それらは一旦脇に置いて、場所的にも社会的にも狭いシーンにおける功罪、中でも「クラブ全般の発展やイメージ」という観点での悪影響について論じています。

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さっき見ていたabemaTVの #アベプラ で元NHKでジャーナリストの堀潤さんが、ピエール瀧さんの逮捕・起訴に絡んで珍しく反社会的勢力への資金の流れについて言及されていたのを見て、元々クローズスペースで論じていたことだけれど、やはり公開してスタンスを表明しておこうと思い、このエントリーをUPします。

まだアーカイブがあがってないですが、そのうちくるかな?
https://abema.tv/video/title/89-66

それでは以下、エントリー本文です。

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ピエール瀧完オチ&「入手元」30年来の盟友の妻の逮捕で次なる疑惑の目は
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/1320049/

電気グルーヴのピエール瀧さんのコカイン所持逮捕の件で、瀧さんに薬物を譲ったのが田坂さんということで「すわ、DJ TASAKAさんの親族か?」と噂が流れたのも束の間、奥さまと確定したようです。

DJ TASAKAさんは電気グルーヴの初期からの盟友でツアーサポートなどもするテクノの重鎮DJ。TVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』でも使われた名曲「TIGER TRACK」を生んだ故KAGAMI(2010年に急性心不全で他界)とDISCO TWINSというユニットを組んでいたこともあります。それもあって、2016年にageHaのBOXで開催した『GEKKO NIGHT Bonus Track -The Ageha Plan-』にもゲストDJとして出演していただいたこともあります。

僕も強く影響を受けた『エウレカ』と縁の深いテクノシーンのレジェンドの1人であり「ショックだ…」みたいな声も聴かれます。ただ、個人的にはそこまでの驚きはありませでした。

だって、元来がそういうカルチャーだったのですもの。

そういう観点から、クラブ関係者が薬物で逮捕された時に僕がいつも感じる、SNS上の白々しくも気持ち悪い違和感について少し書かせてください。

クラブに薬物はあるし、温床という側面もある。

それは否定のしようもありません。そして変えていくしかない。

「クラブは音楽を純粋に楽しみたい人が集まっている」
「不心得な一部のせいで悪く言われたくない」
「ほとんどの人はやってない」

などと言っても、あるものはあるのです。そこから逃げても何も始まらないので、まずは認めるしかないと僕は思っています。

実例もあります。証人は僕です。

直近だと、昨年のあるイベントのお手伝いで渋谷のクラブに行ったら、箱を借りてる側のスタッフが時間の無い中で一生懸命に準備をしているのに、喫煙所付近を通ったらぷぅ~んと臭ってきました。おそらくお店のスタッフさん(アルバイトか何かかな?)ではないかと思います。流石に「なにやってんだよ…」と悲しくなりました。

その前は3~4年前。幕張メッセで開催されたEDMフェスに遊びに行った時に、目当てのDJで気持ちよく踊ってたら集団で臭ってきて嫌な気分になりました。

更にその前は2012年。新宿歌舞伎町で開催されたテクノ系のレイヴで、あろうことか白昼堂々モクモクやりだす輩が数名。そんな有様なので、イベント中も瓶は割るし、通常の喫煙ルールなんてもちろん守らないしで、結局収集がつかずラストDJのプレイ中に解散命令が下りました。その時のオーガナイザーさんの遣る瀬無い顔は忘れられません。奇しくもその時のDJブースに立っていたのは石野卓球さんでした。

人生で、直接そういう臭いに行き遭ったのは、残念ながらクラブやライブハウス、そしてレイヴやフェスだけです。たまたま立ち寄った公園やふらっと入った定食屋さんではなく…。

また、それより以前に、クラブの社会的地位向上を目指して活動を始めた団体があり、そこの所属DJの方を自分が深く関係する行政の後援を受けたイベントにブッキングしようとしたことがあり、然るべき立場にある人から「その周辺は警察権力の一部がマークをしておりいつ何があるか分からないからやめておきなさい」と強めのアドバイスを受けました。その時には「そんなものかな」くらいで、とりあえずそれに従ったのですが、その団体に近しいラッパーの方が昨年になって大麻所持で逮捕されました。

たいへん遺憾ながら、あるところにはあるんです。

もちろん、狭いといっても数あるクラブイベントの中では極一部の話で、20年近くライブハウスやクラブて遊んでいて行き遭ったのは数えるほど。そんなことは百も承知です。一方で、ライブやクラブやDJイベントに頻繁に通わなければ一生行き会うことも無かった可能性もあるし、それが一般的な感覚じゃないかと思うのです。

大事なのは身内や界隈を庇うことではない。

僕は、アンダーグラウンドミュージックはドラッグなしでは成立してこなかったのは確かだと思っています。テクノやハウス、ヒップホップだけではない。ロックもフォークも全部そう。

ドラッグを吸って作った音楽や作品そのものにも罪があるとは思いません。ローリングストーンズも、エアロスミスも、ニルヴァーナも、マリリン・マンソンも大好きで、それは今も変わりません。でも、今は時代が変わりました。

日本は法治国家で、やはり違法薬物所持はルール違反です。「やっちゃいけないことは、やっちゃいけない」です。(一部解禁派の方は少々お待ちを)

どうしてルール違反がいけないかというと、一般的に「ルールを破る奴は悪い奴だ」というイメージが付いてしまうから。

じゃあ、なんで「ルールを破る奴は悪い奴だ」とイメージが付くといけないのかというと、クラブユーザーがことあるごとに口にする「クラブのイメージを良くして色んな人に楽しんでもらいたい」という目的に反するからです。それがクラブシーンのマジョリティの想いなら(本当にそうなんだったら)、影響力がある人がそれをやっちゃ、そりゃいかんでしょう。

じゃあ、どうすればいいんだ…となる訳ですが、僕個人としては次ように考えています。

「確かに、クラブにはやってる人もいる。でも、私はやらないよ」と、本当にやっていない人がちゃんと声を発することではないかと。

できてるようで、できていません。

そして、オーガナイザーやDJ、VJなど発信側を担っているのであれば、兎にも角にも自分のイベントでは禁止薬物はやらない、させない、持ち込ませないことを宣言し、徹底することではないかと思うんです。

"推定有罪"を跳ね返すために各個に反論する。

世間のイメージが「クラブ≒薬とか喧嘩とかありそうで怖い」だとした時の「クラブは音楽を純粋に楽しみたい人が集まっている」という反論がいかにも空虚なのは、その反論には当事者がいないからです。

「"私は"やっていません」

でも変な帰属意識なのか見えない同調圧力なのか、それが言えない、言いづらい。理由を推測するに、「私」を主語に否定すると「その他の例外」を暗に認める≒身内を売ることになるからではないかと感じます。でも、それは単なる身内への甘さやその先にある狭い社会の中での保身にすぎませんよね。

主語が「クラブは」だとクラブ全体論から逃れられず、いつまでたってもグレーです。でも、「私は」ならば自身が潔白なのは確定なのだから、それを言った人が信用されていれば安心する人はするでしょう。

その反対に相対化された"黒"も顕在化します。それはそれで地下に潜ってどうせ続くのでしょうが、結果として白と黒に(例え上っ面だけでも)分かれることはできます。

「クラブ全体のイメージを良くする」は達せられないかもしれないけれど、結果として「それほどイメージの悪くないシーンも作れて、そこなら安心してこられる人が増える可能性が生まれる」のだから、達成度ゼロの今より、半分でも達成できるならそちらを選ぶべきでは?と思うのです。

それでも一部の禁止薬物を容認したい人たちは?

これを言うと無責任極まりないのですが、僕は大麻解禁論には全く興味もなく勉強もしておらず、「医療大麻くらいなら解禁してもいいんでは?(知らんけど)」程度の意見しか持ち合わせていません。

結果としてなるようになればいいと思っているのですが、これに血道をあげている人もいますよね。実際、実はそれほど体に悪いものではないのかもしれません(良いこともないとは思いますが…)。でも、やはり日本は法治国家で、所持も使用も禁止です。

それでも解禁に命を懸けたいのなら政治的活動を起こして、世論に問うて、法改正をすれば良いのです。もし日本が独裁国家で、本当は体に良いものが不当に禁止されているなら隠れてコソコソやるのも止む無しですが、法律を変えられるのですから(風営法のように)。

「法律で決まっているから」とは別のダメな理由

全く関心がないなりに「身体にそんなに悪くないから大麻解禁だ」では、これはありえないとは思っています。それが、冒頭で触れた堀潤さんの言う反社会的勢力への資金の流れ。

最初からそうだったかは分かりませんが、今の日本で禁止薬物を簡単に解禁できない理由として、それが購入ルートによっては反社会的組織の資金源になり得るからというのが少なからずあります。

これだけ社会が反社会的勢力の排除に動いている中で、それこそ過剰コンプライアンスではない、本来の意味でのコンプライアンスではないでしょうか(いや、それ以前の話でしょ…とすら)。

「いやいや、そういう勢力も社会一般とは別のレイヤーで独特のセーフティネットを形成している」という向きもあるでしょう。でも、百歩譲ってそうだとしても、他にも色んな"しのぎ"がある中で、他人の身体と人生を壊しかねないものを売るようなことを許容できるものでしょうか。そこに資金を与えることを。

それに薬物依存症の方も被害者だというならば、売った側は明確に加害者であり、売人には「薬物は他人に迷惑をかけていない」は成立しない訳ですから。

アニクラはまだ平和だから守りたい

アニクラはそういう面ではまだ平和です。カルチャー的にも禁止薬物に接する必然性もない。でも、今クリーンだからこそ油断したらいけないと思います。

やっぱり色んな人に安心して遊びに来て欲しいし、悪い道にはまるリスクは限りなくゼロにしたい。特に「クラブ」に基本的には良いイメージは持っていないであろうアニメファンです。「クラブでアニソンを聞いたら楽しいよ!」って伝えるのは、ただでさえ一定のハードルがあるのに、これ以上に「クラブ≒怖い」になるのは困ります。

だって、一部のアニソン専門箱を除いて、基本的にはそういうドラッギーな(と敢えて言いますが)カルチャーと共にあったシーンと遊び場を共用しているわけですから。たとえ、そこにいる人たちが禁止薬物と100%無関係だとしても、「そこ、大丈夫ですか?」と何も知らない人が不安に思うのは致し方のないことです。

だからこそ「クラブは怖いところじゃないよ!」ではなく、自分を軸に、禁止薬物はやらない、させない、持ち込ませないを伝えること。少なくとも、自分と、自分のイベントに遊びに来てくれた人だけはちゃんと守る。大きな主語を振りかざすのではなく、とにかくそれを粛々とやることではないかなと、思うのです。

だから改めて、僕はこれまでもこれからも…

そういうことはしませんし、
やらせもしませんし、
持ち込ませもしません。

これまで同様、安心して楽しめる環境を作り続けることをお約束します。

とはいえ補足

冒頭申し上げた通り、あまり欲張ると論点がブレるので本文では避けましたが、やはり①薬物依存で逮捕・起訴された人が生み出した芸術作品の処遇や、②罰か支援かという問題も本来避けて良いものではない程度に重要だと思うので、自分のスタンスを述べておきます。

①薬物依存で逮捕・起訴された人が生み出した芸術作品の処遇

本文の通り、作品に罪はないでしょう。そんなことを言い出したらキリがない訳ですから。だから、この過剰自粛・過剰コンプライアンスがクレームを過度に恐れてのことならば、逆に過剰自粛に対するクレームをガンガン入れるっていう方向は結構ありだと思っているし、少なくともネットやSNS上ではそうなっているのは、良いなと思ってます。

②罰か支援か

「依存症の方も被害者である」のは真実でしょう。ただ、だから治療を優先する為に非犯罪化するべきというのも極論のような気がしています。個人的には、犯罪ではありつつ刑事罰を与えるより治療を優先するというのが良い落としどころなんではないかなと。

ちょっと遠回りなのですが、クラブで禁止薬物をしない自分とやっている誰かを相対化しないのは"身内と自身への甘さ"だと言いましたが、一方で「クラブは音楽を純粋に楽しみたい人が集まっている」言説は"実はやってる"人の名乗り出づらさと罪悪感を増すだけではないかとも思います。

「ダメなものはダメ。だから罰を受けなさい」ではなく、「あなたも被害者なのだから悪くない」でもなく、「ダメなものはダメ。でも大丈夫。仕組みを使って治療しましょう」というのが(すぐそうできなくても)理想形じゃないんでしょうか。

#アベプラ にも自身も依存症を克服した代表の方が出ておられましたが、こういう団体さんの活動がもっと増えれば良いのですけれど。
http://darc-ic.com/

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アニソンDJ作戦会議 [note掲示板]

アニソン系野外DJフェスティバル『Re:animation(リアニメーション)』オーガナイザーが主宰するオンライン会議室「アニソンDJ作戦会議」報告用のnoteです。オンライン会議室の受付窓口も兼ねています。アニソンDJがもっと楽しくなる、興味がある方の役に立つ情報を発信します。

アニソン系DJイベント主催者に役に立ちそうな話

過去に別アカウントで書いていたnoteから抜粋したバックアップです。
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