インド諸事情 07

◆人の森

インド。
ガイドブックにあった。
「インドは人の森」だと。

ぼくは今、その森の中に在る。
そう、ここは確かに森なのだ。

いや、<人×3>と書くべきか。

この森は自然の森に寧ろ近い。堂々とした巨木もあれば、その影の下、立ち枯れつつある、木々たち間引きする事もなければ、枝を落とすこともない。ただ、自然にまかせ、育つ木は何処までも大きく、千林の梢に登る。しかし、一本の巨木の下、数多くの日光を遮られた木々が忍ぶように息づいているのもまた事実なのだ。
人間の森の中で、ぼくは彼らと同じ空気を吸い、同じ大地を踏みしめている。

ニッポンも亦、人々の森に違いない。

きれいに、間引きされ、不要な枝は切り落とされ、真っ直ぐに伸びてゆく木々。美しい森の姿。しかし、間引きされた木々の立場は?切り落とされた枝々は?

ぼくらは何かを忘れてしまっている。

それは何?

ぼくの落とされてしまった枝は何?

ぼくは今、この自然に近い人間の森の中で、森林浴をしている。この国の木々と同じ空気を呼吸して失った何かを取り戻そうとしている。

インド。
そう、それは確かに。
人間の<人×3>だった。




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1995年に初めて行ったインドの旅のエッセイと諸事情 (by tatsuhiko)
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