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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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お知らせ:博士の普通の愛情

今、短編の恋愛小説を数本書いています。更新が滞っていて申し訳ありません。今のところ、コンビニの店員に惚れてしまう話、離ればなれに暮らしているふたりの話、熟年夫婦の海外移住の話、などが書けました。

エンドロール:博士の普通の愛情

この歳になると便利な仕組みが使えるようになることを若者に教えておきたい。それが時効だ。トップギャランが「胸に棘刺すことばかり」と歌った青春時代は、あとからほのぼの思い、笑いながら味わうことができる。今日の話は、いま映画館の座席に座っているひとりの中年男性の40年前の出来事だ。 彼はイラストレーターを目指す専門学校生。当時はイラストレーターが時代の花形だった。『イラストレーション』という雑誌には公募のコーナーがあり、そこに自分の絵が掲載されることを誰もが夢見ていた。彼もそのひ

窒息する:博士の普通の愛情(無料記事)

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ブルーのハートマーク:博士の普通の愛情(無料記事)

『愛してる。いつまでも私の娘』 ある女優から聞いた話で一番心に残った言葉です。もちろん状況や具体的な部分はアレンジしていますから、ここからの話はフィクションだと思って読んでもらえればよく、間違っても「あの人のことですか」などと聞く人はいないと信じているので本人の許可をもらって書いています。 「私は日常的に大勢の人から、綺麗ですね、素敵ですねと言われていました。若い頃からです。それらの言葉がいつの間にか心の奥底に沈殿していってしまい、誰とも個人的な付き合いができなくなってし

タイプと年齢:博士の普通の愛情

こゆきさんからいただいた 「好きなタイプは?」「何歳までならオッケーですか?」という質問の正解を教えてください。 というお題にお返事。質問の正解ということは、そう聞かれたときにどう答えたらいいのか、ということでしょうか。取りあえずそれで進めますが、皆さんは明確に「好きなタイプ」ってありますか。背が高い、スポーツマン、優しい、など自分が相手に求める容姿や属性や性格などをどれくらい重視するのかってことですよね。 容姿についてはルッキズムがいまだに幅をきかせていますよね。普段

マガジン内容を一新:博士の普通の愛情

恋愛小説のようなものを書いてきましたが、ここらへんでインタラクティブにしようと思いました。簡単に言えば購読メンバーから恋愛についてのお悩みや持論を送ってもらい、それに答えたり悩んだりしてみようと。 とは言うものの、悩みを解決なんてできませんから聞いてもらえばスッキリするというくらいのスタンスでよろしくお願いいたします。どうなっていくのかはやりながら考えますので、まずは定期購読メンバーの皆様、コメント欄に一言どうぞ。

定期購読メンバーの皆さんへ

「たとえば一週間どこかに遊びに行ったとして、どれくらいいい写真がセレクトできますか」と聞かれることがあります。私はスマホでほとんど写真を撮らないので、遊びに行くときでも普段仕事で使っているカメラで撮ることになります。これがプレッシャーなんですよね。ちゃんとした『作品』と呼べるようなものが撮れるのではないかと淡い期待も生まれます。では、どれくらいの枚数がセレクトできるのでしょう。その答えです。

海を見ると、そう言う:博士の普通の愛情

サヤカさんは以前の職場での同僚。一年先輩だったので色々と仕事を教わった思い出がある。僕が入社して4年くらいしたときに結婚して退職し、そこからは何の連絡もとっていなかった。社長が若い会社だからか、割とクールな職場環境だ。皆で飲みに行くなんてことはなかったし、古い会社にありがちな、休日まで仕事のメンバーと遊ぶなどは考えられなかった。僕にとっては働きやすいのだが個人的な連絡先を知らない社員ばかりだから、会社を辞めるとそれきりになることが普通だった。サヤカさんもそのひとり。 5月の

三度目のウンチ

4年前に初めての本を出し、先月末に二冊目が出ました。出た、って言い方はどうなんですかね。小学生がウンチの話をしているくらい幼稚ですね。上梓とか出版とか刊行とかリリースとか色々な表現があるんですが、出版や刊行は出版社が主体であるような気がするので私が言うのは違います。上梓というのは、昔、梓の木で版を作っていたからだそうですが、今回の本は木版は使わず、デジタル作業がメインのはずですからしっくり来ません。 下品な言い方で恐縮ですが「考え」というのは排泄物のようなものですから、ウン

次に書く本と、鳥の子育て。

「最近、鳥の子育て動画ばかり見ている」という投稿をしているのですが、反応が極めて薄いのが残念です。皆さんちゃんと見たことがあるのだろうか、と涙ぐむ思いです。親鳥が与える餌である虫や小さなトカゲなどの見た目に拒否反応があるのかもしれませんが、それは私たちが日々食べている肉や魚も同じことです。 まず、巣の中の雛鳥はまだ目が見えていません。親が戻ってきた気配を感じて大きな口を開けてピーピー騒ぐのですが、親は雛鳥の口に割と乱暴に餌を突っ込みます。そんなに大きなものを飲み込めるのか、

シンクロニシティ:博士の普通の愛情

YouTubeを見ていると懐かしい曲がアップされていたりする。いい気分になるんだけどそれも長くは続かない。僕が若い頃に MTV やベストヒットUSA が始まった。それを毎週録画しておいて飽きもせずに毎日朝まで観ていると早起きの父親が起きてきて「まだ起きていたのか」と怒られるということがよくあった。 今でも当時の音楽ばかり聴くのは、粘土をこねて作られた自分という人形には、その頃の音楽が砂粒のような不純物としていつの間にか練り込まれているからだと思う。古い曲が流れてきたとき、カ

ありがとうございます:すべてのマガジン

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』 発売されて、Amazonのランキングが出ました。 このカテゴリはこちらで指定することができず、Amazonで振り分けられるようです。現在は「教育」などにもカテゴライズされている模様。 写真の教則本だと思って買った人から「まったく役に立たなかった」というレビューもありますが、「文学」なので仕方ないだろうと言い訳もできます。ネットでタイトルを見て勝ってくれた人が誤解するのももっともなのですが、この本はそういった「TIPS」を勉強して

落とし物のノート:博士の普通の愛情

渋谷の仕事場近くの公園にノートが落ちていた。深夜、ベンチの上に置かれたそのノートは街灯に銀色のラメラメな表紙を照らされている。周りに誰もいないことを確認してから表紙をめくってみた。1ページ目には「メモ断片 Minox」と書かれ、次のページからは何かの脚本のアイデアのようなものが書き留められていた。罪悪感もあったが、風に吹かれたかのようにごまかしながらサッとページをめくっては周囲を見回し、Minoxという人が書いた文字を追っていった。 1:新宿の裏通りでカップルがキスをするシ

俯瞰する人:博士の普通の愛情

郊外の人がまばらな街。駅前とは言え、ここで何かを満たそうとする住民の意識の密度が小さく感じる。古い商業ビルの一階にある昭和っぽい喫茶店に入ってみる。知らない街に行ったときにチェーン店には入らない。いつもと場所を変えたことが無意味になってしまうからだ。カウンターの中には50代中盤くらいのひとりの女性がいた。昼食がまだだったのでミックスサンドを頼もうとしたら、できないと言われた。 「包丁にトラブルがあって、無理なのよ」と、過去に一度も聞いたことがない理由を聞くことができた。ピザ