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anone テレビの価値。

ポスターの撮影をさせてもらった日本テレビのドラマ「anone」が来週、最終回を迎える。

気づいている人もいると思うけど、俺はテレビを見る習慣がなくなったので「テレビ番組の感想」をSNSに書いたことがほとんどない。過去にテレビに関わる仕事もしていたし、作る側、出る側の知人も多いはずなのに、なぜ見なくなったのか。

そこにはわかっている理由と、まだわからない部分がある。

テレビは「退行させるチカラ」と「先に進めるチカラ」で成り立っている気がする。毒にも薬にもなるということだ。テレビからは数多くのことを学んだし、同時にウンザリした経験がある。

そして単純な比喩をしてしまうと、毒か薬かではなく、もうテレビというサプリメントを飲まない生活になったのかもしれない。年齢もあるし時代の変化も勿論ある。テレビのニュースではまったく扱わないニュースがインターネット上にはあるから、恐るべき「情報の断絶」も起こっている。

テレビのコンテンツは変わったかもしれないが、その視聴の仕組みは「会社に行く前に見て、夕方家族と食卓で力道山を見るモノ」からさほど大きくは進化していない。深夜の3時にニュースが知りたければネットで見る。放送している時間にこちらが合わせないといけないテレビでは不可能なことだ。

生活の習慣が変わったことでメディアは変化していく。ネットにはネット自体の情報以外に、多くのテレビ発信のコンテンツが内包されているから、全体のサイズで言えばネットの方が大きくなってしまっている。選択する競争相手ではなく、飲み込まれてしまっているのだ。

若い頃、山崎努さんが演じるカメラマンの生き方に、かなりの影響を受けた。「早春スケッチブック」以外も山田太一作品は大好きだ。もし自分が「早春スケッチブック」や「ふぞろいの林檎たち」をテレビで見ていなかったら、ドラマの中で山崎努さんが言う「骨の髄までありきたりな人間」になってしまっていたかもしれない。

テレビのドラマが世相の上澄みをマーケティング的になぞるようになって、多くの人が「それなら映画を観るわ」「ネットで面白映像でも見るわ」と言うようになった。昔とは違う選択肢が無限にある。

「anone」は、俺が見た数少ないドラマのひとつである「東京ラブストーリー」坂元裕二さんの脚本。山田太一さんと同じ「こんなカンジのドラマをやっておけば若いOLは見るんじゃないですか?」というような価値観と正反対の作り手だと思っている。

まだまだテレビには「時代を前に進めるチカラ」がある。俺がこの番組に関わって、演出の水田さんや日テレの土屋さんと直接ドラマの中身について話せたことには大きな価値があった。

ポスターの写真を撮ることは「宣伝」だから俺にも推奨責任がある。自分が関わった仕事を知人に薦めるとき、それが誇らしいコンテンツやプロダクツでない限り、自分の首を絞めることになる。死活問題だ。

Huluでは全編が見られるので、出遅れた人もぜひ第一話からじっくりと見てほしいです。広瀬すずさんの演技は言うまでもなく、周囲の演技派にも感動します。よろしくお願いいたします。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。