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「一次情報にあたれ」 田中泰延

昨夜は大阪の「WILD BUNCH」で行われた『ウィーアーリトルゾンビーズ』のトークイベントに、顔やカラダを出してきた。

田中泰延さんと長久允監督の、深みのある軽はずみなおしゃべりを堪能した。この映画の解説というよりは、CMプランナーである監督がなぜ映画を作るのか、なぜ田中さんが映画を観て面白がるのか、を知ることができて、入場料8000円の元は取れたように思う。

田中さん渾身の解説スライドに俺の顔とツイートが映し出されたときは、驚くと同時に、ビックリした。田中さんが読み上げた俺の言葉を観客が真剣な顔でメモっていたのを見て、「適当なことを言ってどうもすみません」と、心の中で三平師匠のモノマネをしたほどだ。

俺は自分が観て、好きになったモノ、好きになった作家を応援したいといつも思っている。SNSの口コミで広がった『バーフバリ』や『カメラを止めるな!』などがいい例だけど、コミュニケーションってポジティブな方が世の中が動くし、何より圧倒的に楽しいんだよ。悪口とか、批判じゃなくて。

誰からも宣伝費をもらっていないのにこの映画とこの監督をホメるのは、広告宣伝を仕事にしている俺としては赤字なんだけど、貼り紙などの大事な部分は赤い字で書くものだから、それでいいのだ。

すべてを経済やマーケティングや観客動員数や日本映画の伝統や因習や怨念に忖度していると、新しいモノは生まれない。生まれようとしてもへその緒が首に絡みついてしまうのだ。

田中さんに会う前に本を読んで感想を伝えたかったんだけど、東京駅の本屋には売っていなかったので、いただいた本を帰りの新幹線で読ませていただいた。感想はただひとつ。「これは俺が書いた本なんじゃないか」と思うほど、コピーライティングの役割や文章を書くことへの態度が似ていた。もしかしたら俺の盗作かもしれない。裁判も辞さない。

その中で、「一次情報にあたれ」という章がある。書く前に調べることの重要性が書かれている。これはすごく大事なんだけどサボっている物書きは多い。自分が知らないことを平然と書く。ネットで誰もが知りうる情報を加工しても、文章の価値はゼロだ。

noteでもお馴染みになってきた平林勇監督は、会社にいたときに俺のアシスタントで、会社を辞めた1999年からは仕事場をシェアしている。俗に言う「20世紀」からの付き合いだ。CMディレクターをするかたわら世界中の名だたる映画祭で短編映画が評価されている監督。

あるとき、彼の紹介記事がネットに出たので、俺がそのことについて書いた。するとまったく知らない田舎のオッサンからリプライが来て、「いや、それは違う。平林監督はそんな考えで作っているのではない」と言われたのだ。平地だったのに、俺は崖下に転げ落ちた。

俺は何十年も平林監督を近距離で見ていて、映画の構想の中にスチール写真を使いたいというときは俺が撮り、脚本を読ませてもらって助言をしたりしていた。それをどこの誰だかわからないオッサンが「いや、それは違う」じゃないんだよ。

今回の『ウィーアーリトルゾンビーズ』も、たずねたいことがたくさんあったから長久監督からマンツーマンで直接聞いた。男同士だからチンツーチンだけど。あの部分はなぜそうしたのか、なぜそうしなかったのか。結果がどうあれ、作り手が何を考えていたのかという一次情報に勝るモノはこの世に存在しない。

すると、「あんたはそうやって本人に会えるからだ」と言われるのだが、俺は別に映画雑誌の編集長でもないし、映画ライターでもない。自分が興味を持った人や作品に愛情を持っているから、できるだけ本人の口から聞きたいと思って今回のように大阪まで行くだけだ。時間とお金を使わずに動かないヤツは妬むな。

長久監督のキャスティング方法を聞いたけど、愛と敬意を持って人と接すれば、同じ魂を持っている人には必ず到達する。それがデヴィッド・リンチであろうとキム・ギドクであろうと。「あんな人とは会えないだろうな」と田舎の東洋人が決めつけていることなんか、デヴィッドは知らないし。「聞きたかったら会いに来ればいいじゃん」と言うかもしれない。流暢な英語で。

というわけで結論は、「一次情報にあたるべきなんだけど、俺のところに来るのは面倒くさいのでやめてください」です。ちなみに定期購読マガジン「Anizine」のメンバーにはコメントを書く欄があるので、そっちでよろしく。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。

ありがとうかつサンキュー
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ワタナベアニ

写真家・アートディレクター。着ぐるみの中は繊細です。1964年生まれ。現在「ロバート・ツルッパゲとの対話」出版準備中。