見出し画像

ナイフを振り回すなよ。お金の話。

「お金の問題はやっぱり大事だ」と、我々関東の人間がしぶしぶ認め始めたのは、ほんの10年くらい前からのことだ。

俺たちが子供の頃は、人前でお金の話をするのは下品であるという教育を受けてきた。その江戸前感覚がわからない人は落語の『ひなつば』を聞くといいです。「お金に心が支配されるのは卑しい」という倫理を守れる余裕があった時代が続いたからとも言える。雇用にも年金にも経済成長にもそれほど不安がなく、あえて経済の話に目をつぶっていても何とかなっていたからだ。

でも今はまったく状況が違う。誰かがひとたびお金の話をすれば、「我々庶民はそんなに稼いでいない」「経済的な現実と感覚がズレている」と炎上が始まる。全員がナイフを構えている状態だから、怖くて誰も具体的な話ができない。

「たくさん余る」という人に悩みはないはずだが、毎月の少ない収入から家賃や光熱費や税金や養育費やポルシェのガソリン代などを払い、残る金額の少なさに日々悩まされている人は、誰かが儲かっているらしいと言う噂話に敏感だ。それを、「金儲けの話ばかりするあいつは下品だ」という論理にすり替える。

もちろんお金の有効な使い方の話と、下品な金儲けの話は違う。

俺もギリギリのところまでは言うけど、それ以上は通りがかりの人にナイフを振り回されても面倒だから言わない。というわけで、ここからは「Anizine」のメンバーにだけ続けます。

ここから先は

759字 / 1画像

Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

この記事が参加している募集

お金について考える

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。