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写真に驚きたい。

これは電車の中から撮ったクソ写真なんだけど、俺にとってはグッとくる風景なんだ。子供の頃、ここのグラウンドで友達と野球をやったり、ポケバイに乗ったりして毎日遊んでいた。

渋谷から1時間もかからない場所なんだけど、今は年に何度か電車で通り過ぎるだけだし、わざわざ近くまで行ってみたいというような感傷的な気持ちもない。でも車窓からこの景色が見えたときに毎回シャッターを押すってことは、俺が写真を撮っていることとも密接に関わっているんだろう。

ヨーロッパに行くと感じるのは、何百年も大きく風景が変わっていないという価値なんだけど、この工場の看板がなくなってしまったら、電車から写真を撮ることもないだろうと思う。いつも行っていた店や思い出の場所が同じ場所に同じようにあって、同じ顔をした家族が引き継いでいたりするのはうれしいことだ。

「だからヨーロッパは経済が停滞するんだよ」なんて金の亡者の意見は聞く気がしない。そんなことより住むべき場所、帰れる場所が、自分と細い糸として繋がっているっていうのはとても安心することなんじゃないかなあ。

カメラマンになりたい、という相談を受けたときには誰にでも「ぜひやってみてください」と言っている。俺は自分以外の人がどんな所に行ってどんなモノを見て、何が好きで撮って、何が興味がなくて撮らなくて、どんな衝動でシャッターを押したか、その興奮した話を聞くのが大好きだ。

いい写真を撮って欲しい。それを見て驚きたいし、俺も他人にそう思ってもらえる写真が撮りたい。それだけです。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。