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偉くないのに、なぜグリーン車に乗るのか。

狭い場所がすごく苦手なんです。「他人と肘がぶつかるような店で食事をするのが好きだ」という友人の話を聞いただけでめまいがします。

ですから新幹線などはできるだけ広いスペースを確保するためにグリーン車やグランクラスに乗るんですが、これを「偉そう」「セレブ」などと言われるのはまた別の苦痛です。

閉所恐怖症とまではいかないのですが、できるだけ大きなプライベートスペースを手に入れたい。自分が他人をわずらわせたくないし、他人からもわずらわされたくない。それだけの理由で。

グリーン車に乗るのは贅沢だという昭和一桁風の考えがあるのもわかっています。出世すると乗る、みたいな。いつかはクラウンみたいな。出張でも部長はグリーン車で、ヒラはただの指定席とか。

そういう意味じゃないんです。俺はお金持ちでもないんですが、数千円から1万円で快適さを買えるのなら、得るモノの方が大きいと自分では思っています。さっき言った「狭苦しい店が好き」という人は、ワサワサした庶民的なアジア感がいいのだと言いますが、俺はムリです。

自分ではテーブルの隙間を数人が横に並んで通れるくらい広い店を選んで行きますが、人に連れて行かれるとそうはいきません。たとえそういう店でも「イヤです」と言わないくらいの社会性と大人っぽさは持ち合わせているので、我慢しますけどね。

食事をしているテーブルの横を人が通るときに、できるだけそこに触れて欲しくない。そんな私が、友人に連れて行かれた居酒屋で、畳に置いていた手を踏まれたことがあります。悪魔のように黒くスケスケで湿ったオヤジソックスで、です。

「ああ、すんません」と黒い悪魔のオヤジは言ったのですが、俺の血圧は20くらい下がりました。そもそも低血圧なので貧血寸前です。

飛行機でもプレミアムエコノミーかビジネスくらいのスペースは欲しい。その場合、機内食がいいとか、サービスがいい、なんてことにはまったく興味はないんです。そんなのは完全にどうでもいい。部長クラスだから、みたいな意味合いはないので、ファーストクラスじゃなくていいんです。

エコノミークラスとファーストクラスには数百万円の差がありますが、それを正規で払う気はしません。新幹線のグランクラスは指定席と大した金額の差がないのに、快適さは飛行機のビジネスどころか、ファーストクラスレベルの違いがあります。なので、それは払う。

さらにもうひとつ秘密の理由があります。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。