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「ギャラなしでもやります」は、アウト。

「ギャラをどうやって決めていますか」という質問があったので、参考になるどうかは知らないけど、「写真の部屋」の記事を無料で公開する。

俺が20代の頃。駆け出しのデザイナーだったある日、今まで仕事をしたことがないプロデューサーに会議室に呼び出された。名の知られたグローバル・ブランドの企業広告を作るにあたって日本からもアイデアを出して欲しいらしく、手伝えと言われた。

巨大なブランドの仕事だから、俺に断る理由はない。できれば実績になるだろう。やる気を見せるために「ギャラなしでもやります」と言った。するとプロデューサーは「そんなことを言うならお前には頼まない。仕事というのはギャラをもらうから逃げ場のない責任が持てるんだよ」と激怒された。

若かった俺は、やる気や自己アピールの意味をはき違えていたのかもしれないと激しく反省した。対価を得られないのはプロの仕事ではなく相手に失礼だし、重要な仕事には重要であるだけのギャラがきちんと用意されていることも知った。

それからは「仕事するときに必要なモノとは何か」と聞かれたら、責任だと答えている。当たり前のようでいて実際にはとても多くのことを含んでいるのでなかなか説明するのが難しいんだけど。

簡単に言っちゃうと、友だちとカラオケ帰りに行くファミレスと、接待で使う料亭は値段も責任も違うようなこと。ギャランティはクライアントの事業規模や目的による。スタッフの知名度や実績で決まると誤解されていることが多いけど、それは違う。

一つのサービスや商品を売ることで得られる結果が仕事のサイズだから、仲良しの友人がインディーズレーベルからCDを出す時と、ベントレーの新車が発表される時、たとえ同じような内容の撮影だったとしても、そこに発生する責任とギャラが違うのは当然。

高額なギャランティが用意されていれば、準備のための費用もかけやすい。俺が昔、不用意に言ってしまった「ただでもやります」というのは、もらうはずのギャラ全部を撮影の準備のために使ってもいい、という意味だったら正しい。

たとえば100万円のギャラをもらうとして、90万円の機材をそのために借りてもいい。そうすることで自分にとっての経験値があがったり、仕事のスケールが大きくなるから。

そこで90万円の利益を確保しようとしたり、制作費が少ないからといってすべてを節約していたらとても夢のある表現なんてできないし、節約を見透かされる。

仕事を頼む人は「安い仕事を急ぎでやってくれる便利な人」と「自分にとって大事な仕事が来たときに多額のギャラを払う人」の二種類を使い分けている。自分がファミレスと料亭のどちらのファイルに入っているかは相手が決めるんじゃなく、日々の自分の態度で決まる。

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ノリだけで書いてるけどな!
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ワタナベアニ

写真家・アートディレクター。着ぐるみの中は繊細です。1964年生まれ。現在「ロバート・ツルッパゲとの対話」出版準備中。

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