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山を眺められる、部屋に暮らして。

私が地元の宇都宮で小学校4年生まで暮らしていたのは、子ども部屋の窓から男体山が眺められる家でした。母親が買い物に出かけ、ひとり留守番をしているあいだ、その窓に腰を掛け、手すりの間から出した足をブラブラとさせながら、お菓子を食べる。寂しさと心細さを、ぼんやりと遠くの山を眺めることで、紛らせていたように思います。その窓からの景色は、25年以上経ったいまでも、鮮明に思い出すことができる。きっと、人生ではじめて好きになった景色は、あの部屋からの景色です。

そしていま、ランドネ編集部員として働きながら、窓から山の見える部屋で暮らしはじめました。場所は、福島県の檜枝岐(ひのえまた)村。尾瀬の玄関口にある、人口550ほどの村です。“暮らす”といっても、1カ月間という期限付き。

なぜ檜枝岐にいるのかというと、今年で10周年を迎える『ランドネ』で、新たに始動しはじめた「編集部のお引越し」企画。山歩きや自然の魅力を伝える編集部が、地方にもうひとつ拠点を置くことで、より深く、より読者のみなさんのためになる情報を発信できるのではないか、と考えたからです。

時間をかけ、何度も足を運び、好きになる。そして、本当におすすめしたい“こと”や“もの”を見つけたい。見つけたものは、みなさんと共有したい。
また、アウトドアが好きな方たちに向けて情報発信をしたいという地方自治体のみなさんと一緒に、新たな地元の魅力を探したり、素敵なお土産を作ったり。そんなこともできたらいいな、と思っているのです。

檜枝岐村のいまは、新緑の季節。山々の黄緑と青い空のコントラストが、本当に美しい。朝目が覚め、カーテンを開けると、窓の外に広がるその色に、何度も驚き、ため息が漏れる。そんな毎日を過ごしています。

尾瀬は、私の好きな場所のひとつです。通いはじめて10年。知っているつもりだった尾瀬や檜枝岐ですが、暮らしはじめて1週間で、いくつもの発見と驚きに出会っています。6月下旬までのあいだ、ここで暮らしながら、私が本当におすすめしたいと感じる“もの”や“こと”を、紹介していきたいと思っています。

尾瀬の雪解けが進むなか、来週末からは、帝釈山のオサバグサ祭りがはじまります。1カ月後、窓から見える山の景色が何色に変わっているのか、いまから楽しみです。

ランドネ編集部 安仁屋円香

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