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【編集後記】みそしる戦争の編集を担当して、感じたいろいろ

お久しぶりです。アンジェロです。

今回はノベルジャムで担当した作品である「みそしる戦争」について書いていこうと思います。

編集目線で作品が話されるのはなかなか新鮮だと思います。読み終わった後は、きっとみそしるの味が変わっていることでしょう!

よろしくお願いします!

作品について

まず、最初に「このnoteが初見だよ!」という人に向けて作品について書きます。

作品あらすじ
朝ごはんは和食派という共通項があるヒモの男とその彼女。しかし、二人には決定的な溝があった。みそしるの好みである。白味噌派のヒモ。赤味噌派の彼女。二人の間で勃発するみそしる戦争。
その最中、事件がおこり、塞ぎ込んでしまう彼女。
ヒモはそんな彼女を救うべく、とある料理に挑む。
ヒモが味噌汁戦争を経て、絆を取り戻し、自らの人生を再び歩き始める成長物語。

タイトルで「みそしるの好みで戦争する話?」「キノコとタケノコ戦争?」みたいな感じを抱く人が大半だと思います。

半分正解であり、半分は期待を裏切ってくれる作品です。

作風としてはコミカルなタッチで描かれ、喧嘩とヒモの少しふわふわした地の文のコントラストが味わい深い作品になっています。(みそしるだから味わいとかそういう意味ではない)

内容については多く語ることはできないですが、「食事の好みで喧嘩」という誰でも共感しやすくけれど、なかなか思いつかないテーマですよね。

親や兄弟、恋人と料理の好みで合う合わないみたいなことは一度は経験すると思います。

中でもみそしるというのは地方や家庭、親の好みに強く影響されるものです。特に、みそしるというのは、味噌の種類、味付け、中に入れる具などなど、その人の食べ物観が見えやすいものですよね。

食べ物観=その人の持っている価値観というのは広げすぎですが、その登場人物(作者も)がどんな人物かがわかる作品です。

僕自身も親とご飯の好みでバチバチした経験があり、感情移入して楽しく編集させていただきました。

著者について

↑紹介文を見ていただくと分かりますが、学生デザイン事務所の社長さんです。

巷で噂の「すたーとあっぷ」というやつらしいです。学生で挑戦できるのは、すごいですよね。あとDJもやっていたとか。(どこかのラッパーと張り合えそう)

ちなみにチームではよく名前を間違えられてました。僕も間違えました。笑

しかし、今回はデザイナーではなく、著者で参加でした。小説をあまり書いたことがないとのことということから、かなり挑戦的なマインドをお持ちです。

ちなみに、ヒモを飼ったことはないとのことなので、実体験ではないみたいです。

そんな太田先生のnoteがこちら↓

表紙について

表紙はデザイナー枠で参加の新月ゆきさんに担当していただきました。

さすがというべきか、2日目の22時には表紙は完成していました。

表紙のオーダーとして、かの有名な「ちびまる子ちゃん」で知られている「さくらももこ」先生のエッセイ風というものがありました。

そのオーダーとみそ汁の温かみをミックスしたのが今回の表紙です↓

(表紙を見る限り、新月先生も赤みそ派ですね。仲間発見!)

ちなみにタイトルの「みそしる戦争」には男っぽい文字が欲しいということで表紙文字を僕が書くことになっていました。

が、字が綺麗ではないのでボツになったのは作成秘話ということにしておきます。(男飯に見た目が悪い字で、本当に申し訳ない)

実際の工程

いろいろ書きました。ざっくりと第3回ノベルジャムでどんな風に「みそしる戦争」が紡がれていったのかを書いていきます。

初日:お題「」が発表される。

家というお題に少しだけ悩んでいた太田先生。しかし、プロット案3つ提出し、取捨選択、統合を重ねプロットは早々に出来上がりました。さっそく書き始める太田先生。

そうして、初日は執筆時間があまりなく、チェックポイント1の「プロット提出」を行い、そのまま終了。

プロット作成時には太田先生の書きたい「家訓」があったため、アイデア出し&プロット組み立てがスムーズでした。

2日目:執筆→完成まで

9:00:会場でひたすら作品を書く太田先生。

13:00:「みそしる戦争」の初稿戻しが終了。プロットと初稿戻しを見ても、分かりにくいですが、作品の方向性が見えてきている状態です。

校正面にかなり手を入れました。大体の骨組みは完成しつつも、骨と骨を繋ぐ肉を書くのに苦労されている様子でした。(作家あるある)

22:00:ほぼ完成。

この時点でほぼ完成していました。肉付けがほぼ終わった状態です。

他の参加者がふんふん唸っているときには完成されていました。

著者の家訓を優先しようと思い編集として内容面にあまり突っ込まなかったら、怒られたのも制作秘話。

家訓や書きたい要素などの大枠が決まっており、それがきちんと描けていたため編集としては誤字脱字、校正面を中心に見ました。

3日目:あらすじ等を確認し、提出

2日目にほとんど終わっていたので、ほぼ形を変えず提出。

ざっくりですが、3日間での制作過程です。

書きたいことが明確だったので、肉付けに苦労されていた以外のペースは良かったです。僕に編集経験がないなか、手探りでやっていく中で順調に進んでいくのは大変ありがたかったです。

編集をやって感じたこと

前述の通り、僕個人は編集経験がないなか、手探りで編集を行い初日はなかなかやることを見つけられず、3日目はやることが多すぎて死にかけていたりしました。

そんな中で着実に小説を書き上げていく太田先生にはいろいろ助けていただきました。

内容については著者の中に「家訓」があり、書きたいことがあったのでそれを優先しました。

が、それが同時に反省すべきところもいくつか見えてきました。

気持ちを伝える大切さ

今回の編集経験で分かったのは、どこかが面白いっていうのをきちんと伝えるということが編集として大切なことであるということを強く感じました。

きっと、今回参加した著者は誰しもが「面白いかな?」という不安と焦りを抱えながら書いていたと思います。

ふと、自分が作品を書くときには物語のセオリーに沿って三木一馬氏のいう「精巧なホムンクルス」を作成することに重きを置いて作成しつつも、心ではいつも「面白いってなんだろう?」と思いつつ書いていました。

また、僕が前回、著者で参加したときも「面白いとは?」という迷走をして、プロットを2日目夜でもブレまくるということもありました。

そんな不安を少しでも取り除いて、著者と作品を作り上げていくためには、自分が面白いと思うところをたくさん伝えるということを大切だと感じました。

逆に、バランスをとる難しさも感じました。

面白さを伝えるのとは逆に、より面白くするために作品の良くないところを挙げる必要が出てきます。

それを挙げると、めちゃくちゃ落ち込む作家さんは結構います。(僕も時々ぐぬぬってなってシナリオ分析します笑)

作品=自分と考えたり、単純に自分の実力不足を突き付けられてショックを受けたり、自分の込めた想いや意図が踏みにじられたと感じるのでしょう。(なろう界隈を見ているとそんな感じ)

だとしても、その作品を正当に評価できる「作品に対する真摯さ」と相手のハートの強さを信じる「作者への信頼」が必要だと強く感じました。

今回、僕に足りなかったものは上げるとすれば、上記2点でした。それが出来れば、さらに作品をより良いものにできたのかなと考えています。

終わりに

つらつらと書いてきましたが、「みそしる戦争」には制作者が各々葛藤をしたり、それぞれの思いを抱えながら書いた作品です。

そんな悩みや産みの苦しみなどの大変なことがたくさんある作品ではありますが、内容はコメディタッチ。白みそに赤みそ混ぜるみたいな感じですね。

どの作品でも苦労や思いがあると思います。そんな制作者の思いを心の片隅に置いてこの「みそしる戦争」を読むと、また違った味を感じさせてくれるのは間違いないでしょう。

ぜひ、1度だけじゃなく、おかわりしていただければ幸いです。この本に携わった料理人冥利に尽きるので。


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