見出し画像

ほろ酔い(?)幼馴染がめためたに甘えてくるお話

ヒロイン:井上和さん



和:○○いつまで寝てるの起きなよ

○:んん〜、あと10分……

和:○○が買い物行きたいって言ったんでしょ。早く起きてよ!

和:───って聞いてないし

……

○:んん。今何時だ

スマホに手を伸ばそうとすると

和:──14時半。

幼馴染の和が呆れたようにこちらを見ている

○:えっ、和 居たのかよ

和:もう、2時間くらいここで待ってるけど

○:まじ?ごめん

和:待ち合わせ時間決めたの○○なのにね。

和:約束の時間過ぎても来ないから部屋に来たら爆睡してるし

○:ほんとに申し訳ないです……

和:夜更かしでもしてたの?

○:うん。友達に漫画借りたんだけどさ。それが面白すぎて一気読みしちゃって

○:そのまま寝落ちしたっぽい

和:仕方ないな〜。今回は許してあげる

和:ほら、早く着替えて?行くよ

○:了解、すぐ準備するわ

勢いよくベットから起き上がり
パジャマを脱ごうとすると

和:ちょっ、ここで脱ぐのやめてよ

顔を手で覆い隠す和

○:今更、そんなこと気にしなくない?

和:気にするよ……

和:そ、外で待ってるからすぐ準備してよね

何故か頬が赤くなった幼馴染は逃げるように部屋を出ていった

何年の付き合いだよ。着替えてるところ見たくらいでなんにも思わないだろ…

テキトーに服を選ぶと、急いで準備をはじめた。

─────────

○:ごめんごめん。遅くなった

和:ねえ、めっちゃ寝癖ついてる

○:まじ、どのあたり?

和:私がなおしてあげるから。こっちおいで

カバンから櫛を取り出すと
慣れた手つきで髪を整えてくれる

和:これでよしっと

弟が2人いるだけあって、本当に面倒見が良い

和:じゃあ行こっか

○:おう、行こ行こ〜

目的地は近所の商業施設

GUにユニクロ、マック、サイゼ、ゲームセンター、映画館

俺達高校生にとって、来れば何かしら時間は潰せる充実した施設

和とよく2人で遊びに来る場所でもある

和:○○から誘ってくるの珍しいよね。何かしたいことでもあるの?

○:……服、買いたくて

和:珍しい

○:女子目線の意見も欲しいから、和にも来てもらったんだよ

和:なるほどね〜。まさか、○○が自分から服買うって言い出すなんて

○:そうだな、基本服とか興味無いし

和:なになに、デートでもするの?

少しおちゃらけた様子でからかってくる和

○:デートって言うか、後輩に”次の土日遊び行きましょ”って誘われて

和:ふ〜ん。そういうこと……

和の声のトーンが下がった気がする

和:で、行くんだ?

○:そうだね。断る理由なかったし。

○:そしたらさ、”ほんとですか!気合いいれてオシャレしてきますね”なんて言われちゃって

和:あっそ。良かったじゃん

○:知っての通り、まともな服持ってないからさ。テキトーだと申し訳ないだろ?

和:で、私に頼ったって訳ね。

○:そういうこと

和:○○にしてはちゃんと考えてるね

○:なんだよそれ。

○:だって、休日は基本、和としか遊ばないだろ?そのせいで、ちゃんとした服持ってないんだよ

和:……私と遊ぶ時も気使ってよ

○:ん?なんか言った?

和:別に〜


何故か、普段より不機嫌な幼馴染
2時間の寝坊は流石にまずかったかな?

普段から”服とかもっと気使いなよ”って言ってくる和

服買うって伝えたら喜ぶと思ったんだけど……

和:で、どんな子なの?その後輩ちゃんは

○:んー、なんて言うか妹みたいな子

和:妹みたい…か。


妹という言葉に更に険しくなる表情

○:部活のマネージャーの子

○:普段から”これ重いから一緒に持ってください〜”みたいな感じで甘えるって言うか、頼ってくれてる子でね

和:・・・

○:なんか、ほっとけないんだよ

和:……そっか。

○:俺、一人っ子じゃん?あんまり甘えられることとかないからなんか新鮮で

和:……ふーん。

○:なぁ、ちゃんと聞いてる?

和:聞いてるよ。

和:で、そんな可愛らしい妹みたいな子にデート誘われて舞い上がってるってことでしょ?

○:舞い上がってる訳じゃないけど……

和:普段、女の子から遊び誘われても断ってるくせに、今回は服まで買うってすごい乗り気じゃん

○:女の子ってよりは妹みたいに思ってるから断りにくくて

和:……ふーん、妹ね。

そんなことを歩きながら話していると
すぐに目的地に着いた。

和の方を見ると相変わらず不機嫌な様子

商業施設に入っても、早歩きでどんどん進んでいく

○:なぁ、和 どの店がいいと思う?

和:・・・

○:おーい

和:……どこでもいいんじゃない

○:和、詳しいだろそういうの。教えてよ

和:別に、詳しくないけど

○:なんで今日そんな冷たいんだよ

和:はぁ。わかったよ。仕方ないな〜

俺の言葉に立ち止まると周囲を見回して

和:んー、じゃあ、あのお店とかいいんじゃない?あそこ入ってみなよ

近くにあったお店を指さした。

普段は通り過ぎるだけで
入ったことなんて無い店

○:名前も聞いたこともないや

和:男子高校生の間で流行ってるらしいよ

○:そうなんだ、さんきゅ。

○:見てみよっと

オススメしてくれた店に入ろうとすると
入り口の前で急に立ち止まった和

○:ん、どうした?

和:私ここで待ってるから1人で見てきなよ

○:なんだよそれ。せっかく着いてきて貰ったから和の意見も欲しいんだけど

和:どうしても?

○:うん、どうしても

和:……もう、仕方ないな。

何とか一緒に入ってくれる気になったらしい

普段は入らないような
少しオシャレな雰囲気の店内へ

おお、すげえ。

自分が着たことも無いような服が並んでいて、テンションがあがる。

○:これとか似合うかな……?

和:いいんじゃない

○:じゃあー、これは?

和:それもいいと思うけど

なにやらスマホをいじっている和

俺の問いかけに少しこちらを見て
また、手元に視線を戻している

○:なぁ、真面目に見てくれてる?

和:見てるよ

○:じゃあ、これとこれどっちが似合うと思う?

和は俺が持っている服を交互に見ると

和:そっちのスウェット似たような服持ってるでしょ。ジャケットの方がいいんじゃない?

的確なアドバイスをくれる

○:確かに

和:そこに鏡あるよ。試しに羽織ってみたら?

○:うん、わかった

慣れないジャケットを恐る恐る羽織ると、鏡の前で一回転

○:自分じゃないみたいで新鮮。どうかな?

和:うん、似合ってるよ。

○:ほんと?

和:○○そういう系統も似合うと思うけど。

○:まじか

鏡に映る見たことのない自分。それでも、和に褒めてもらえると自信が持てる

○:和に来てもらって良かった。俺よりも俺の事知ってくれてる気がする

和:そ、そりゃ私が1番○○のこと見てるからね

下を向いてなにやら恥ずかしそうな様子

○:え、今更なに言ってるの?

和:もういい。知らない。

和:店の外で待ってるから。気に入ったなら買ったらいいじゃん。

超絶機嫌が悪くなった和は、あっという間に店から出ていってしまった。

どうしたんだろ……

似合ってるって言ってくれたし、これ買ってから俺もすぐ行くか。

お会計は普段買う服の4倍ほどのお値段
高校生の財布には超大ダメージだが、仕方ない。

○:お待たせ。さっきの服買ったよ

和:よかったね。

○:和のおかげだよ。ありがと

和:気に入ったの買えたんでしょ?もう帰ろ。

○:和は洋服とか見なくていいの?

和:昨日1人で見に来たしいいや。

○:わかった。じゃあ帰ろっか

和:うん。

この商業施設に来た時は、何時間も買い物に付き合わされるのがデフォルト

何故か今日は俺の洋服を見ただけですぐに帰ることになった。

───────────

○:今日はありがとな。付き合ってくれて

和:……どういたしまして。

帰り道、ひと言も発さなかった和
何やら地雷を踏んでしまったらしい

いつもなら機嫌が悪くなっても、少し経ったら普通に戻ってくれる。

明日、学校で会う頃にはいつも通りだと信じたい

○:またね?

和:うん。

よそよそしい別れの挨拶をかわすと、お互いの家に帰って行った。


自分の部屋に戻って荷物を置いて、漫画を抱えてリビングへ向かう。

○:ただいま〜

・・・

あ、そういえば今日父さんも母さんも帰ってこないんだっけ?

大事なことを忘れていた。

昨日の夜から見れていなかったスマホを開くと

「母:晩御飯は和ちゃんに頼んでるから。感謝しなさいよ。」とのLINE通知が

まじかよ。

先程の気まずい別れが頭に浮かぶ

ロック画面で確認すると、時間は16時前
和が家に来るまではまだ少し時間があるだろう

それまでに機嫌が治ることに期待するしかない

ソファに寝転がると、昨日読んだ漫画の2周目に突入した。

──────────

それから1時間半後

”ピンポーン”

和:はいるよー。

チャイムの音と共に入ってきた和

和:○○のママに夜ご飯頼まれたの忘れてた

○:ありがと

和:いえいえ〜。任せて!

○:冷蔵庫の物、何でも使っていいって

和:じゃあ、○○が好きな物でも作るから待ってて

○:まじ?嬉しい

先程の不機嫌は治った様子
よかった。

和:終わったら声かけるね

○:ありがと

しばらく経つと、キッチンから聞こえはじめた野菜を切る音やお肉の焼ける音

子気味良い音が2人だけの空間を包んだ。

・・・

ふと視線をあげてキッチンを見ると、エプロンを着て手際よく料理をすすめている和の後姿

レンジの温めボタンを押して、すぐに料理の味見をして調味料を加えて、使い終わったお皿を洗って……

ただでさえ学校でモテている和だ。

こんな家庭的な姿を男子達が目にしたら告白を通り越して、プロポーズされるに違いない

”和ファン”を自称する友人達の悔しそうな姿が脳内に浮かんで、少しの優越感に浸ると、次の巻に手を伸ばした。

─────────

やっぱ、この漫画面白すぎるだろ。

あっという間に最終巻、ラスボスとの戦闘シーン

ライバルとの共闘・恩師から最初に教わった技での決着。これこそ男子の好きな要素の詰め合わせ

すっかり、漫画の世界に没頭していた俺は

────急に来たお腹への衝撃によって現実に引き戻された。

視線をあげるとそこには、アルミ缶を持った幼馴染

和:──── へへ〜○○!

○:は、和お前それ何飲んでんの?

和:えー、なんか美味しそうだったから開けちゃった

普段よりふにゃふにゃとした様子の和
持っているアルミ缶をこちらに見せつけてくる

○:もしかして、それお酒……?

和:んー、わかんない。でも頭ふわふわする

○:じゃあ、お酒だろ。やばいって飲んじゃうのは

○:誰かにバレたらどうすんだよ。

和:大丈夫だよ〜お家には2人しか居ないんだし

和:それより、何読んでるの〜それ

○:昨日の夜読んでた漫画。
  面白くてもう1回読んでるの

和:むぅ。せっかく和と2人きりなんだし漫画は後にして


久しぶりに自分のことを”和”と呼ぶ幼馴染

いつぶりだろう。

いつもなら何も思わないはずの関係性
普段と違う様子の和に急激に胸が締め付けられる

○:わ、わかったよ。

和:えへへ〜うれしいっ。お話しよっ

俺が漫画を置いたことに満足気な和

アルミ缶の中身をもう1口、口に含む

○:それ以上飲むなよ。様子変だよ

和:ふふ。酔っちゃったかも

○:分かったから。もう飲むなって

強引に起き上がって和の手からアルミ缶を奪う

お腹に跨られていた状態から無理やり起き上がったのもあって、顔がすぐ目の前に


和:えへへ〜近いね

○:ご、ごめん。離れるよ

和から離れようとすると

和:やだ。離れない。このままお話するの

力いっぱい抱きしめられた。

○:わ、分かったから……

強くなる心臓の音が和に聞こえないか不安だ。

和:あのさ

○:ん?

普段よりも弱弱しい様子でゆっくりと話し始めた

和:今日ね、○○が誘ってくれて嬉しかったの

○:うん

和:なのに、他の子とのデートの服を選ぶとか言うから……和ちゃんは拗ねてます。

○:だ、だからデートじゃないって……

和:デートだもん。和と遊ぶ時は服とか気にしてくれないくせに

○:だってそれはさ……

○:俺らはただの幼馴染だろ?

和:嘘つき。

和:今だって、ドキドキしてる癖に


○:は、いや、別に……

和:ふふっ。ドキドキしてるんだ〜。

腕を解かれたと思ったら、さっきよりも密着する形でもう一度抱きしめられる

和:○○はぎゅーが好きなんだね

○:そういう訳じゃ……

和:じゃあ、離れちゃおっか?

○:離れなくてもいいけど……

和:素直でよろしい

○:うるせえ

和:○○あったかい〜。ぽかぽかするね

○:・・・

普段は見せない姿に照れて何も言い返せない

和:甘えてくる子に弱いんだもんね

○:え?

和:妹みたいな後輩に甘えられるの嬉しいんでしょ?だから和も甘えてるの。ぎゅ〜

○:そ、そういうわけじゃ……

和:和が甘えてー、○○に甘え耐性が付けば、○○を他の子に取られないでしょ?

○:わ、わかったから一旦離れよ?

和:やだ〜。はなれない

和:○○ものんじゃえばふわふわするよ〜。ほら、あげる

和はアルミ缶をもう一度手にすると俺に渡してきた。

和:ほら、のんじゃえのんじゃえ

○:はぁ、分かったよ。

普段と様子の違う幼馴染に密着されてから、落ち着かない胸の鼓動

アルミ缶を受け取ると、自分の気持ちを誤魔化すかのように一気に中身を飲み干した

・・・・・

あれ?

これほんとにお酒……?

口に含んだ時にあまり苦味がない。

そもそも家の両親はお酒が超弱い
お酒が家にあるわけが無いような……

手元のアルミ缶のラベル見直すと”ノンアルコール”の文字

目の前には、ふにゃふにゃはしているものの、顔色は普段通りの幼馴染

○:あのさ。和

和:ん〜?どうしたのー?○○

○:言いづらいんだけどね

和:うん〜

○:これ。ノンアルコールだよ

和:え?

僕の言葉に抱きついていた腕を素早く外した和

アルミ缶の”ノンアルコール”の文字を確認すると

和:さ、さぁ〜

和:¨ご飯食べよっか。ご飯

誤魔化すように食卓に逃げていった。

和:ほ、ほら○○も早く来てよ

○:りょ、了解

和と向かい合った位置に座ると、
2人揃って手を合わせて

「『……いただきます』」

大好物だけが並んだお皿に恐る恐る手を伸ばした。

○:おいしい。

和:お料理、冷めちゃってるね……。

和:温め直そうか?

○:いや、めっちゃ美味しいよ大丈夫。

和:そ、そっか。良かった

帰り道とはまた違った意味での
気まずい沈黙が流れる

和:あ、あのさ……さっきのあれ忘れて

○:あれ?

和:酔ったつもりになってただけだから

○:ノンアルコールだったもんね

和:うるさい、ほんとに頭ふわふわしたもん。

和:それに、○○も照れてたでしょ?

○:そ、それはだって……あんな風に甘えられることないから仕方ないだろ

思わず和から視線をそらす。

和:……嫌じゃなかった?

○:え?

和:私が甘えるの嫌じゃなかったかなって

○:嫌なわけないだろ。

○:いっつも俺が頼ってばかりだし、甘えてくれるのは嬉しいよ。

和:そ、そっか。それは良かった…

和:○、○○さえ良ければなんだけどね。

○:また今度さ……甘えてもいい?

○:い、いいよ、別に

クールで面倒見が良い幼馴染の
意外な一面を知った1日だった。

──────────

和:もぅ。やっと帰ってきた遅いよ

○:ごめんごめん。

和:後輩ちゃんに鼻の下伸ばさなかったよね?

○:なんとか。

和:揺らいでるじゃん。許さない

○:冗談だって

和:○○には私が居るんだから。分かってる?

○:わかってるよ。

和:ん。

○:ん?

和:ん!!

○:どうしたの?

和:もう、分かってるくせに。

俺の胸に勢いよく飛び込んでくる和

和:今日も酔ってます和ちゃん

○:はいはい。わかったわかった

お酒(?)の力に頼ったお陰もあって、やっと素直になれた和

それからはお酒なんて飲んでなくても甘えてくれるようになりました。

ほろ酔い(?)幼馴染がめためたに甘えてくるお話

〜おしまい〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?