メインヒロインが重すぎる Vol.02
ヒロイン:久保 史緒里さん
校門を出て史緒里の家までの帰り道
史緒里:ふんふんふ〜ん
お昼休みの不機嫌が嘘のように機嫌の良い史緒里
普段は学校から離れてから繋がれる手も、校門を出てすぐに繋がれた
しかも恋人繋ぎ
✕ ✕:ごめんな?お昼
史緒里:いいよ〜。やっと私たちが付き合ってることが世間にバレた訳だし
✕ ✕:そ、そうだな
”みんなにはいつか俺から言うから”なんて言い訳して、史緒里と付き合ってる事はなるべく隠していた
しかし、お昼休みの廊下での出来事で今までの努力は水の泡に
明日の朝には3年生中、いや下手したら学校中で噂されることになるだろう。
学校全体でも、トップクラスに人気のある史緒里と付き合っていることがバレたのだ。
俺も変に注目を浴びてしまうのは避けられない。
✕ ✕:明日からからかわれるんだろうな〜
史緒里:そ、そうかも。なんだか恥ずかしいね
頬を染めて恥ずかしそうにしている史緒里
ほんと、変なスイッチが入らなれけば清楚で透明感のある美少女だな
たまに見せる儚なさを帯びた表情は、触れたら消えてしまうんじゃないかと錯覚する程
そんな彼女と色々と話しながら帰っていると、話題は新クラスの話に
✕ ✕:どう?クラスは慣れてきた?
史緒里:うん!山と梅が居るから毎日楽しいよ〜
✕ ✕:あー、あの2人ね
”私の親友達です”なんて言って、紹介してくれた小悪魔系の子とすらっとした子が脳を過ぎる。
あの子たちもきっとモテるのだろう
史緒里:ほんと、同じクラスになれて良かった
✕ ✕:ね。クラス替えの前の日すごい緊張してたよな
史緒里:小学校も含めて初めて3人一緒のクラスになれたからさ、毎日が最高
✕ ✕:史緒里が楽しいなら俺も嬉しいよ
史緒里:もう、✕✕君ったら〜。私の事大好きじゃん
繋いでいない方の手で肩をバシバシと叩かれる
細いのに意外と痛い。どこにそんな力が…
史緒里:あ、そういえばさ!昨日なんだけどね
✕ ✕:うん
史緒里:高校1年生の子が教室に来たんだけどさ、その子がすっごい可愛くて
✕ ✕:1年生?
史緒里:ああ、山に恋愛相談に来てたの
✕ ✕:なるほどね。で、どんな子だったの?
史緒里:さくらちゃんって言うんだけど、色白で細くて顔も小さくて…
史緒里:お名前もひらがなで『さくら』らしいんだ。
史緒里:なんか本人が名前の通りすぎてさ。親御さんのネーミング天才すぎ
✕ ✕:おお。”The少女漫画のヒロイン”って感じの子だったんだ
史緒里:そうそう。よく分かってるじゃん
✕ ✕:史緒里から散々、女の子の話聞かされてるからね…
アイドル研究会に所属してるだけあって女の子のリサーチには抜け目のない史緒里
アイドルはもちろん、校内の可愛い子もある程度把握している
その辺の男子高校生より可愛い子に飢えている気がするのは、気のせいということにしておこう。
史緒里:今年の1年生は最高だな〜
✕ ✕:前、相談来てた子だっけ?その子も可愛いって言ってたもんな
史緒里:あー遥香ちゃんね。
✕ ✕:ああ、そうそうそんな名前だった
史緒里:あ。遥香ちゃんで思い出したんだけどさ、
史緒里:さくらちゃんと遥香ちゃん、超仲良しらしいんだ!!!
急に熱が入った様子の史緒里
✕ ✕:お、おう。そうなんだ。
史緒里:遥香ちゃんとさくらちゃんペア最高
史緒里:ほんと、シンメ組んで欲しいくらい
✕ ✕:シンメ……?
史緒里:シンメトリーの略だよ、簡単に言うとペア的な感じかな?
✕ ✕:な、なるほど。
史緒里:もぅ、前も教えたでしょ。
✕ ✕:そうだったっけ?ごめんごめん
アイドルの知識0の俺にはカタカナの用語を覚えるのは難しい
ちょっとずつ覚えていくしかない
史緒里:✕✕のクラスには可愛い子居ないの?
✕ ✕:え、史緒里ならもう知ってるだろ?
史緒里:3年生はリサーチ不足で…
✕ ✕:知らないなんて珍しい
史緒里:✕✕君が私の知らない所で、3年生の可愛い先輩達とイチャイチャしてると思うと気が狂いそうだから。
✕ ✕:お、俺のことなんだと思ってるの?
史緒里:し、信用はしてるけどさ。男の子って可愛い子に弱いでしょ?
史緒里:それに、✕✕君かっこいいから向こうから寄ってくるかもじゃん
✕ ✕:べ、別にそんなことないけど
史緒里:ちゃんと自覚して?気をつけないと、変な虫ついちゃうから
✕ ✕:変な虫って……
史緒里:まぁ、それは一旦置いといてさ。
史緒里:居ないの?クラスに可愛い子
✕ ✕:俺のクラスね〜。
✕ ✕:えーーっと……
ようやく覚えたクラスメイト達の顔を順番に思い出していると
幼馴染のあいつの顔が脳をよぎる
✕ ✕:ん〜、あ、あす…
史緒里:は???
やっば。
何言ってんの俺は
クラスメイトの顔を思い出すのに必死で、どデカい地雷を踏み抜いてしまった。本日2回目
ここは何とか誤魔化すしか
✕ ✕:あ、あすさ、頑張って探してみるよ…うん。
史緒里:その言い訳で逃げられると思う?
”あす”まで言ってしまったのだ、もちろん逃げ切れるわけも無い
史緒里:飛鳥さんの事でしょ?
✕ ✕:は、はい。
ここは素直に認めるしかない。
正直に言えば罪が軽くなったりは──
史緒里:ちょうどよく、私の家着いたし上がって。✕✕君に分からせてあげるから。
……しないよね。
✕ ✕:いや、それは親御さんに悪いからさ……
史緒里:今日親帰り遅いから。
どうやら逃げ場はないらしい
史緒里:上がりなさい。早く
✕ ✕:は、はい。失礼します……
───────
俺は今、
史緒里の部屋で床に正座させられている
史緒里はというと、ベットに座ると上から軽く睨みつけてきている
史緒里:何か言うことは……?
✕ ✕:さっきのはそういう意味で言ったわけじゃ。
史緒里:じゃあ、どういう意味なの?
✕ ✕:えーっとそれはその……
史緒里:私だってわかってるよ飛鳥さんが可愛いことくらい
史緒里:しかも、✕✕君とは幼馴染な訳だし。
史緒里:飛鳥さんは私が知らない✕✕君の顔だって知ってると思うの
✕ ✕:べ、別にそんなことはないって
史緒里:黙って聞いて。
✕ ✕:は、はい。
史緒里:✕✕君が飛鳥さんのこと好きとかそう言う目で見てないってのは頭ではわかってる。
史緒里:頭ではわかってるけどさ……
こちらを弱々しく見つめている史緒里
頬を1粒の涙が伝う
史緒里:ごめんね。こんなに重い彼女で……
史緒里:分かっててもどうしても不安になっちゃって……
✕ ✕:俺が悪い。ほんとごめん不安にさせて
史緒里:今まで付き合った人にこんな気持ちになったことなかったんだけどね
史緒里:✕✕君だけは、絶対誰にも取られたくないから…
✕ ✕:史緒里以外に好きな人が出来るわけないよ。
史緒里:うん。信じる
✕ ✕:絶対裏切らないから大丈夫
俺の言葉に安心したのか、勢いよく胸に飛び込んできた史緒里
史緒里:大好きっ!
✕ ✕:ちょ、ちょっと足痺れてきたかも
史緒里:じゃあ〜、一緒にお昼寝しよ?
彼女に促されて、小さめのベッドに2人で入る。
史緒里:ふふ。暖かいね
✕ ✕:そうだね。
史緒里:一緒に居ると落ち着くね
✕ ✕:俺も
史緒里:私ね、
史緒里:✕✕君のことどうしようもないくらい好きなんだ。
史緒里:だからさ、ぜーーったい。誰にも渡さないから
そう言って抱きついてきた史緒里
他の女の子と親しげに話しているだけで、自信を失ってしまう史緒里
世間一般では、重い女の子の部類に入るのだろう
そんなちょっぴり(?)メンヘラな彼女
そんな彼女を世界中の誰より可愛いと思ってしまう俺もとっくに君の沼の中なのだろう。
〜つづく〜
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?