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【ゲーム感想】Pineapple on Pizza

BGMを買って、スタジオを支援しよう!!

ここから本編。

2023年ゲームオブザイヤー

クライマックスの音楽が最高過ぎるので、ぜひ自分でそのカタルシスを感じてほしい。

ということで一部界隈でめちゃくちゃ話題になっているこちらのインディーズゲーム「Pineapple on Pizza」を遊んでみた。
無料で遊べるので、ちょっと気になる人はぜひ遊んでほしい。

やたらアクの強いゲームだなあと思っていたら、石に突き刺さった剣をアーサー王のごとく引き抜くゲーム「The one who pulls out the sword will be crowned king」を作ったスタジオだった。

以前こちらのゲームが話題になっていて、すでに遊んでいた。
ちなみにこちらのゲームは、他プレイヤーが引き抜けば引き抜くほど物理的に長くなる「ゆうしゃのつるぎ」を引き抜くゲームだ。
遊べる苦行を作ったスタジオが、遊べる地獄を作ったわけですね。




さて、日本でも唐揚げにレモンをかけることを発狂するほど嫌がる人がいるが、海外では「ピザにパイナップルを載せること」を蛇蝎のごとく嫌う人がいる。
というか私もその例に漏れず、ピザに乗っかったパイナップルが嫌いだ。あと酢豚に入ったパイナップルも。それからシュラスコで一緒に供されるパイナップルも。
デザートとして頂く冷たく甘いパイナップルは好き(多少アレルギーはあるが)なのに、暖かくなった瞬間駄目だ。

もちろんそういうパイナップルもすべからく愛する人もいるだろう。
でも考えてほしい。

楽しくピザを食べようとしていた友人たちの集まりに、空気を読めない貴方がパイナップルを載せたピザを提供する。
パイナップルなんぞのっかったピザ、この世に存在する時点で悪
(言い過ぎか)なのに、それを貴方が友人たちに食べることを強要する。
するとどうだろう。テーブルは阿鼻叫喚の地獄絵図となり、友人たちの雰囲気は最悪。空気の読めない貴方は仲間たちからハブられること待ったなし。

このゲームはそんな悲劇を可愛らしいCGを使い、似つかわしくない凄惨な内容で表現している。
「お前にとってはどうでもいいことでも、周囲の人にとっては致命的になりかねないことなんだからな」ということなのか。陽気な島民たちが明るいBGMの流れる中、凄惨な状況になって行くのは皮肉が効きすぎていて、初見プレイ時は茫然とすることうけあい。

細かな作りこみがすごすぎる

ということでここから先はゲームとしての感想。
ネタバレ全開。

一言でいうと作りこみがすごすぎる最強のバカゲーだ。
2023年ゲームオブザイヤー最優秀賞はこの作品でいいと思う。

すぐ分かるのはBGMの盛り上がり。
ゲームスタート時点から流れる音楽は陽気そのもの。南の島の楽園でのびのびと、思い思いに生活するNPCの生活を表現しているかのようだ。
ところが島の中央の火山から溶岩が流れ出し、凄惨な光景が繰り広げられ、「この可愛いCGで使う??」と疑問に思うくらい迫真の悲鳴を上げるキャラクター達を盛り上げるのもこの陽気なBGMだ。
しかも悲鳴が上がり始めるタイミングで曲はさらなる盛り上がりを見せ、ポップなメロディにストリングスが追加され、コーラスまで参加する。

山が噴火し始めたタイミングではなく、島民に被害が発生したタイミングで盛り上がりを見せるというのもニクい演出。

更に、可愛らしい島民のキャラクターたちは皆それぞれ個性的な死にざまを見せる。
溶岩に飲まれる直前まで踊る者、逃げて船で脱出を図る者、高所から飛び降り溶岩と関係なく死ぬ者、炎に逃げ道を阻まれ思い切って走り抜けた結果火だるまとなる者…。
個人的に好きなのは、赤ちゃんをだっこしたお母さんキャラクターとその連携。

めちゃくちゃな数のNPCが存在するにもかかわらずその一人一人が個性的に逃げ惑うので、何度でも遊びたくなる中毒性がある。
こうしたNPCの作りこみが非常に細かいので、ぜひ実況だけでなく自分で遊び、お気に入りのNPCの死にざまを見届けてほしい。

そして最後のタイトル回収に至るムービー。マジでこのネタを最後にやりたいがために、ここまでゲームを作りこめる人はなかなかいないだろう。
そういう意味でいらん男気を感じてしまう。
そこも含めて、ぜひ実況ではなく実際に遊んでほしいなあと思ってしまうゲームだ。

こんなに制作者の悪意を感じるゲーム、そうそうない。
思えば昨今、様々なことに関して「お気持ち表明」する人が増えた。
その結果ノイジーマイノリティのせいでオーソリティが生きにくくなること、やりにくくなることも増えた気がする。
このゲームはそういう風潮に対する皮肉でもあるのかもしれないなあ、とちょっとそれっぽいことを考えてみた。
まあパイナップルとピザの相性が悪いことは皆様ご承知おきの通りだと思いますので、ただパイナップルがピザに乗っていることへの殺意を表現しているだけだと思いますが。

それはともかく

是非悪意マシマシ殺意マシマシパイナップル死すべしゲームを味わってもらいたい。
実績をフルコンプしたあとの言い知れぬ高揚感、あとから襲い来る虚無感、頭から離れないBGMとけたたましい悲鳴。何もかもが最高。
2023年ゲームオブザイヤーはお前だよ。

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