第2回 2軒リーチに形テンで無スジを押すかどうか迷ったら


はじめに

本当の期待値の話を書くつもりだったのですが、2軒リーチのケースも考えてみたいので前回の続きを書きます。こういう計算って、私の知る限り、本やネットで見たことがないのですが、私の勉強不足でしょうか(そうだとしたらスミマセン)。

ルールについては、特に断りのない限り天鳳に準じることにします(ルールについて言いたいことはいろいろあるのですが、それはここでの本題ではないので)。

ルールによって実は打ち方はそんなに違わないと言われていますが、形テンの押し引きの話ではルールの違いが重要だったのかもしれません。というのは、複数のテンパイ者への当たり牌を切った時に、頭ハネなのかダブロンなのか、あるいは三家和は流局なのかは重要ですから。ちなみに、天鳳ではダブロンはあり、三家和は流局となっています。

3人リーチがかかっていて、全員に通っていない無スジを勝負!通ればラッキー。逆に、3人がロンといえば、三家和で流局となってやっぱりラッキー。一番アンラッキーっぽい三家和が一周回って(?)ラッキーになるのはなんかおかしいですね。

スミマセン。話が脱線しました。


2軒リーチに形テンで無スジのラスト牌を押すか

2軒リーチがかかっている時に、ラスト牌を形テンで押すかどうかを考えるのが今日の本題です。便宜上、2軒リーチと言っていますが、本当は形テン以外のテンパイならばリーチではなくても構いません。

自分以外の3人のプレイヤー(i=1,2,3)に対する無スジ本数をsiとすれば、他家iへの放銃率はpi(=1/si)となります。他家iに放銃した場合の打点をxiとします。

自分以外のテンパイ者(形テンではないとする)が2人(i=1,2)のとき、他家1,2の両方に無スジ1本を押したとき、「当たる/当たらない」の2通り×2人=4通りの結果があり得ます。それぞれのケースが実現する確率は下の表で与えられます。

例えば、他家1に放銃して他家2には当たらない確率はp1(1-p2)で与えられます。運良く2人とも通る確率は(1- p1) (1-p2)です。他家1,2の残りスジがそれぞれ4本だとすると、p1=p2=1/4。それぞれへの放銃率が1/4でも、両方に当たらずに運よく当たらずにテンパイ料をもらえる確率は(1- p1) (1-p2)=(3/4)^2=9/16=56.25%です。


押した場合の期待値は、各ケースの確率にその場合の点数をかけたものの和、つまり下の表をすべて足し合わせた値-p1 (1-p2) x1 -p1 p2 (x1 + x2) -(1-p1) p2 x2 + (1-p1) (1-p2) 1000になります。
確率(1-p1) (1-p2) で2人に通った場合だけテンパイ料1000点をもらえるので、プラスの数字になります。


押した場合の期待値と降りた場合の期待値の大小関係で、
-p1 (1-p2) x1 -p1 p2 (x1 + x2) -(1-p1) p2 x2 + (1-p1) (1-p2) 1000 > -1500
ならば押した方がよくて
-p1 (1-p2) x1 -p1 p2 (x1 + x2) -(1-p1) p2 x2 + (1-p1) (1-p2) 1000 < -1500ならば降りた方がましとなります。右辺の1500は、2人聴牌の時のノー聴罰符からきています。  


結果

このままでは解きづらいので、p1=p2=p、s1=s2=s、x1=x2=xと単純化しましょう。他家1と2は、通ってないスジの本数は同じ(通ってないスジ自体は異なってもよい)で、捨て牌からだいたい同じくらいの打点に予想されると仮定します。
そうすると、上の式はちょっと簡単になって、両者に通っていない無スジを押すときの損益分岐打点は
1000 (1 - p)^2 - (1 - p) p x - p ((1 - p) x + 2 p x)=-1500
を満たすxとなります。
ただし、4・5・6について、片方のスジは通っていると仮定します。でないと、2つのスジ、1・4と4・7を勝負することになってしまうので。



上の表は前回の損益分岐打点の表に「他家2人テンパイで2人の無スジを押す」のケースを加えたものです(黄色のハイライトの列)。「他家2人テンパイで1人の無スジを押す」ケースであるブルーの列の数字と比べてください。他家2人に危険牌を押して放銃となるとき、他家1にだけ放銃、他家2だけに放銃、他家1・2両方に放銃の3パターンがあるので、損益分岐合点は半分より小さくなります。みーにん(2017、p.80)によれば、子のリーチ・非一発・ロン和了の和了素点は5300点です。リーチ一発の和了素点は7600点です。一発の1ハンをハイテイロンの1ハンに読み替えれば、この数字はハイテイロンの和了素点の目安となりそうです。これらを考慮すると、あんまり勝負できませんね。残りの無スジが7本以上はないと、2軒リーチに2人の無スジを押す割りが合わないようです。

3軒リーチに無スジを押す場合には、もっと割が合わない(損益分岐打点が小さくなる)と予想できますが、それはまた別な機会に。

なお、形テンの押し引きではラスト1牌を考えていました。ただし、それがハイテイではない場合は、その後に他家のツモ和了りや横移動があるかもしれません。ラスト1牌を考えている状況から、残り牌数は3以下のはずなのでそこは無視しています。


次回はいよいよ期待値の話を。皆さん、よい週末を。ちなみに私は土日とも仕事ですw



参考文献

みーにん(2017)『「統計学」の麻雀戦術』竹書房。

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