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秋末陽菜というひと。

先週までやっていた舞台「濡れた音色に、またあした。」にて任せていただいていた役、秋末陽菜の話をします。

これは、わたしの思う、わたしの、秋末陽菜のはなしです。なので、逆班の横田さんのおもう秋末とも、観たひとが感じた秋末とも、おそらく違うと思います。
だから、わたしの中の、秋末のはなしです。
シンプルにネタバレになるので、お気をつけください。




秋末陽菜という人間は、きっと、ある程度親に大事にされて育ってはいるんだろうな、と、思います。
仲が悪いわけでもなくて、本当に普通。
冒頭の電話は、母親との電話です。
心配、されているのだと思います。
大丈夫か?ご飯はちゃんと食べているのか?など。
仕事はうまくいっているのか?という質問に対して、固まってしまい、大丈夫なフリをしてしまうのは、職場で酷いパワハラを受けていて、本当の本当は、人に助けを求めなければいけないレベルの精神状態なのに、心配をかけまいとしてしまうからなのでした。

秋末陽菜が自殺志願者を集めて殺しているのにはいくつかの、ほんとうにいくつかの理由があります。そして、きっかけが。

そのきっかけというのが、彼女が死に損なったこと。
秋末陽菜も最初は本当にただの自殺志願者で、あの掲示板で集まった人たちと一緒に、集団自殺を決行しようとしていました。
ですが、最後の最後、薬を飲む瞬間に、怖気付いてしまった。死ねなかった。
が故に、薬で苦しむ他の人たちをみることになってしまった。苦しんでいるその姿を、自分に対してパワハラ等をしてくるひとたちが苦しむ姿と重ね、快楽を覚えるようになってしまった。
ほんとうは、自分に酷いことするひとたちのこと殺しちゃえばいいのにね。それはできなかったんだろうな。
秋末陽菜は、強くあれなかったから。
どうしようもなく、弱かった。

それがきっかけで、掲示板で自殺志願者を集めては、ころす、というのを繰り返すようになってしまった。
快楽のため、ストレスの捌け口として。
これが、人殺しを始めた、きっかけ。

秋末陽菜が殺す人間には条件がある。
どうしようもなくこの世に絶望していること。
本当の本当に死にたい、死ぬことでしか、もう救われないところまできてしまっているひと。
だからなんども、踏みとどまるチャンス、まだ引き返せると口にする。
秋末の信条なんだと思う。

終盤のみんなが死ぬシーン。
本当にあの時ひとセリフごとに感情が違うくらいのレベルでいろんなものが同時に秋末の中に存在していて。
たとえば、皆が苦しんでいるところでは快楽であったし、生き絶えてしまったところでは、かわいそうにと思っていたし、でもこの人たちは、死ぬことで、救われたんだ、とも思っていたし。
こういう人たちを、片付ける、というセリフの片付けるは、わたしの中では救うの意味で言葉を吐いていたり。

それから、いい加減こんな事やめなきゃいけないと思ってる、みたいなことをいうところは、本当にやめなきゃなとも思っていたし、そこにいるはずの、心白に、助けを求めていました。
まあ気づかれないし助けてももらえないんですが。
もう多分、後戻りできないところまできてしまっていて、だから、その行為を続けることによって、彼女は、ギリギリ生きていられる、んだと思います。

あの瞬間
・苦しむ人をみることで快楽を得る
・本当に死にたい人を殺してあげることで救っている
・こんなこと辞めなきゃいけないと思っている
(辞めさせて欲しい)
・生きるために必要な行為
などの色々が同時存在していました。

人間は、矛盾した感情を同時存在させる生き物だと思っているので、そういった意味では、秋末陽菜をどうしようもなく人間にしたかった、というのはあります。

夏目ちゃんの頭を撫でてから髪を掴むというのは、わたし提案のアクトだったのですが、「心の底から死にたいと願っている人間」への可哀想とか死ねてよかったねとかそういうなんか、慈しみ?同情?みたいな気持ち(秋末自身も元は自殺志願者なので)と、「同意のうえで人殺しができるなんて気持ちがいい」という快楽殺人者みたいな感覚をセリフ毎に体現したいなと思った結果でした。好評でよかった。

秋末陽菜には村雨心白は見えません。
ですが、彼女がいるところには雨が降るということ、彼女が近くにいる人間は、本当に死にたいという感情を持っていたり、はたまた死んでしまう人ということは認識しており、状況から推測して、見えないけどいるんだな、と思うことはありました。
小屋に向かう道中も、小屋でみんなを殺すときも。
どこにいるかはわからないけれど、おそらくこの空間にいる、ちかくにいる、とおもって、「また次も。」という言葉を心白に対して投げてました。

だいたい喋ったかな。わかんないな。
書き忘れがあるかもしれませんが、わたしの秋末陽菜は、こういう感じです。でした。
普段はこういう役についてのことってあんまり書かないんですけど、今回はダブルキャストだったこともあり、その違いも、楽しんでもらえたら、というやつです。

あのあとも、彼女は、きっと、同じことを繰り返し続けるのだと思います。捕まったり、はたまた、死んだりしなければ。


最後に。
これは、フィクションのおはなしです。
実在する人物・団体等は一切関係ありません。

それではまた。どこかで。

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