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①ちょっとやってみたかったけどでも今!?

狩猟免許を取っていそいそと山へ出かけていく夫を見ても「ふーん」としか思わなかった私が、ジビエ事業を興すことになったまでの経緯とその後の展開を書いていきたいと思う。

6月初旬

わなにかかった鹿を夫が解体する横で見学している私。すると夫のケータイが鳴り、「ごめん、俺、人と会う約束してるんだった!あとよろしく!!」とどこかへ行ってしまうではないか。ちょっとやってみたかったけどでも今!?ひとりで!?!?
漫画「山賊ダイアリー」全巻読み込んではいるけど解体シーンあんまり載ってなかったぞ岡本!もうちょっと描いといてくれよ~好きだからいいけど、岡本!!

後ろ足をロープで縛られ逆さ吊りになった鹿、と私。皮を剥きはじめたところだったので、皮と肉の間にナイフを入れる。自炊歴15年ともなると皮を剥くのなんかお茶の子さいさいですよ~。しかし内臓どうすんだこれ。しばらくすると夫が救援要請しておいてくれたおかげで猟友会のおじさんが来てくれる。このおじさんは山の男であるのに何故か『海の男』感が強くて、着ているところなど見たこともないがマリンキャップとボーダーシャツがよく似合う。ゆえに私と夫は彼のことを愛をこめてこっそり『キャップ』と呼んだりする。キャップは私からナイフを受け取るとスイスイと鹿のお腹にナイフを入れ目にも止まらぬ速さで内臓を落とす。解体は何度か見たことがあるので「なんかこの鹿お腹大きいですね~」などと言っていたらなんと胎児が出てきた。なむなむ。はじめての解体で胎児。自分の出産を思い出して少し涙ぐむ…なんてことはなく、「これおいしいんですかね?」

ま、かわいいと美味しいは別ですからね。

そうこうしているうちにはじめての解体は終わった。「あと3回やれば上手になるから」とキャップは眩しい笑顔でそう言った。彼の周りはいつも海風が吹いているなあ。海なし県の山梨だけど。

他人事だった狩猟が現実味を帯びてきたのはこの頃。



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