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体に負担をかけにくい効率的なカーディオの処方

減量中の人や、将来生活習慣病が怖い人に贈ります。

脂肪を代謝するには?

脂肪とはそもそも、マクロ栄養素の一つであり、人間が活動する際に欠かせない栄養素の一つです。つまりは、活動によって消費してしまえば良いことになります。

炭水化物がエネルギーとなって消費されることはもちろんですが、タンパク質や脂質も重要なエネルギーの元となります。

そもそもエネルギーとはどういうものなのか。

アデノシン三リン酸という物質があります。こいつはATPと呼ばれます。
アデニン(核酸を構成する塩基の1つ)とリボース(糖の1種)からなるヌクレオシドであるアデノシンに3つのリン酸が付いた化合物です。リン酸部分の反応によって、生命活動に必要なエネルギーが媒介されます。生物のエネルギー変換全般(エネルギー代謝)において中心を占め、「エネルギー通貨」の役割を果たしていると言われています(なんだか難しいですね)。

どうやらATPという物質がエネルギーとなる物質らしいです。

じゃあこのATPはどういう過程で発生するのかということになります。

ちなみに以前、私自身が書いた記事にATPが紹介されているものがあります。こちらなんですけど(宣伝)

上の記事で書かれていることは「嫌気性代謝」過程になります。つまり、無酸素での過程なので、糖質を使用する過程となります。

しかし、脂質を代謝する過程としては「好気性代謝」過程と呼ばれる有酸素運動での過程となります。これが脂質を代謝してくれる過程です。


脂肪をエネルギーに変える過程のお話

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こちらがATPを生み出す過程になります(パワポで一生懸命作りました)。一番上の3つは馴染み深いマクロ栄養素ですね。

左側にあるのが嫌気性代謝過程になります。最終的には2ATPしか産生出来ません。

対して、好気性代謝過程となるTCA回路、電子伝達系では最終的には32ATPを生み出せます。元々、この過程の頭にはアセチルCoA(コエンザイムエー)という物質から始まりますが、これらは脂肪酸、アミノ酸、そしてグルコースが乳酸になる前の物質であるピルビン酸から成ります。そのため、好気性代謝過程においてはマクロ栄養素すべてを消費することになります。

しかし、上の図ではガッツリ端折ってますが、脂肪酸からアセチルCoAになるまでの過程はβ酸化といい、めちゃめちゃ複雑です。すごく時間がかかる代わりに、たくさんのエネルギーを生み出す事ができます。アミノ酸の場合は、「ロイシン」のようなアミノ酸が、「アセチルCoA」に直接変換されます。脂肪酸の場合は、「脂肪酸」がβ酸化されて、大量の「アセチルCoA」を生じます。

話は変わりますが、減量の際には、色々な減量方法があります。ローファット、ケトジェニックダイエット、ローファット+ローカーボ・・・。色々存在しますが、オーバーカロリーになればいずれの方法でも太ってしまいます。脂質を抑えていても、脂肪は増えます。その理由は、摂取したエネルギーが過剰なとき、アセチルCoAが「β酸化」のほぼ逆のルートで、脂肪酸になるからです。TCA回路で活躍するアセチルCoAですが、アセチルCoAは「脂肪酸」だけでなく、「グルコース」や「アミノ酸」からも変換されます。したがって、どんな食生活をしていようと、食べ過ぎた分は、アセチルCoAを経て脂肪となるのです。

それでは、頑張ってこの「アセチルCoA」を消費してATPにして燃やしてしまうことが減量をすすめる一助となりそうな気がしてきました。


脂肪を代謝する過程を活発にするには?

再三になりますが、脂肪を脂肪酸にして、アセチルCoAにする過程は、さっきの図でいうと「好気性代謝」過程になります。では、この過程を活発にするにはどうしたら良いのか?

かんたんに言うと、題名の通りカーディオ(有酸素運動)となります。筋トレのような無酸素運動下では主に糖質を消費するので、うまく脂肪を消費されません。

では有酸素運動と無酸素運動がありますが、その「境目」を皆さんは考えたことはあるでしょうか?
例えば、グラウンドを走ってるとしましょう。軽いジョギングと100m全力疾走では、前者が有酸素運動、後者は無酸素運動だと思いますよね。
では、タイムを狙う400m走くらいでは?1km走では?フルマラソンは?どんどん早くなる学生時代みんな大嫌いだったシャトルランは?

このように、軽い運動では有酸素運動100%ですが、徐々に負荷量を上げることで無酸素運動の割合がどんどん増えていくことになります。脂肪を消費したいカーディオでは100%有酸素運動をしたいですが、負荷が低すぎるといい効果は得られませんよね、ただ疲れちゃうだけです。

それでは、「ギリギリ無酸素運動が混ざらない強度の有酸素運動」が出来たら最高じゃないですか?それを解決してくれるのが「ATポイント」という概念になります。

ATポイントの概念と利点について知る

ATってなんでしょうか?ってところからです。

嫌気性代謝閾値、無酸素性作業閾値
PeakVO2と同様に健常例、心疾患例いずれにおいても身体活動能力の指標として、また、生命予後指標として重要であるが、PeakVO2と異なり、持続的な運動が可能な運動強度、すなわち運動によって想起されるエネルギー代謝が、進行性の変化を伴わずに容易に定常状態に達する「中等度」の強度である。

なんだかよくわからないですね。

簡単に言うと、無酸素運動が混ざらないので、解糖系がなるべく働かず、好気性代謝過程のみを動かして、アセチルCoAを消費しながら持続的な運動が可能な負荷ということです。

負荷も軽すぎず、真ん中くらいって感じです。

このATポイントで運動するメリットというのがいくつかあります。

1.長時間運動することが可能
2.疲労物質である乳酸(賛否両論ありますが)の持続的上昇がなく、アシドーシスとならない
3.血中カテコールアミンの上昇がない(交感神経活性が最低限になる)
4.運動強度に対する心機能の応答は保たれている(心臓病の人向け)

これらが示すことは、疲労物質が溜まりにくく、且、好気性代謝過程のみを活動させながら、交感神経系の活性を抑えて有酸素運動を行えると行ったことになります。

どうしても筋力トレーニングをしていると、交感神経活性が優位となりやすく、自律神経失調とまではいかないにしても体調を崩しやすい方というのがいらっしゃるかと思います。その際に、今回ご紹介させていただく負荷量での運動で、交感神経活性を抑えることが期待できます。

ちなみにカテコールアミン(カテコラミン)はみんな大好きアドレナリンとかのホルモンの一種です。出すぎると大変ですよねこれ。

では、このATポイントですが、人によって違うんじゃないですか?体力によるじゃないですか?という疑問が出てくると思います。

ATポイントを調べてみよう


個々人のATポイントを知る方法はいくつかあります。

その1 心肺運動負荷試験

病院とか大学にあります。一般の方は出来ません。
僕は出来ます(職権乱用)。選択肢から除外します。


その2 カルボーネンの式を使う

そもそもATポイントの指標って何?ってところに話を戻すと、心拍数や呼気ガス分析をした結果です数値なのですが、言ってしまえば心拍数がわかればATポイントがわかります(というかVO2とかわかっても、普通の人は別に何も出来ない)。

カルボーネンの式はこちら
(220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数

安静時心拍数は筋トレも何もしてない時に測って下さい。
運動強度は筋トレしてる元気な若い人なら60%、アスリートクラスの体力があるなら70%でも良いです。
ちなみにご家族のお父さんお祖父ちゃん達に使う場合には低体力なら20~30%程度で良いでしょう。

心拍数は脈診と言って撓骨動脈で10秒間の脈拍を測定し、6倍するとだいたい出ます。アップルウォッチなどの機能を使用しても良いです。

その3 ボルグスケールを使う

以前のNote(また宣伝、こちら)で紹介したボルグスケールというものを使用します。このNoteの中では「旧ボルグスケール」と呼ばれるものです。ボルグスケールの強度に10をかけると、脈拍数とだいたい同じになると言われてます。11~13の負荷がだいたいATポイントとなります。


運動処方

というわけで運動処方です。運動内容を決める基本的な項目となります。

種類:運動中の心拍血圧モニタリングが容易で、強度が一定に保ちやすい種目を選択。
強度:目標心拍数の設定、borg scale、カルボーネンの式など。
持続時間:目標HR付近で5~10分は維持、cool downを欠かさない。
頻度:週3日(2日で運動の急性効果は消失)。

この4項目が基本です。種類は自転車エルゴメーターやトレッドミル歩行など屋内で行えるものが良いでしょう。屋外ウォーキングなどでも良いですが、天候や気温、交通の流れなど運動を阻害する要因が多すぎるので、あまりおすすめできません。

強度は、設定した目標心拍数付近で、それを超えないようにします。

持続時間はだいたい30分程度で、目標心拍数の時間帯は10分以上は持続するとより効率よくエネルギー消費ができます。筋トレ後にやると、心拍数上がりやすいかもしれませんね。

頻度:上記のとおりです。それ以上は疲労や筋質変化などデメリットもありそうです。


補足事項

・UCPについて
有酸素運動をしすぎるとUCP3の活性が抑えられて、代謝が落ちるという話もあるようです。基礎代謝、筋量等との関係性などもあると思いますが、勉強不足なのでよくわかりません。上記の通り、週3で1日30分程度なら、あまり心配しなくても良さそうですけど。

・カーディオでカーフって発達するの?
トレッドミル歩行で傾斜をある程度付けると、カーフの毛細血管が発達するのでパンプするかもしれないです。10%前後が良いと思います。ただしそれをやるときには速度は快適歩行くらいのゆっくり目にして下さいね、多分怪我しますよ。


以上です。あくまで参考程度にして下さい。有酸素運動をするときには脂肪と一緒にタンパク質もエネルギーに変わっちゃってるので、高タンパク食は欠かさないでくださいね。

それでは、ヤケ食いしないようにバキバキを目指してください。


おわり

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