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看護師のわたしがすずめの戸締りを見て感じたこと

すずめの戸締まりのメッセージとしてわたしが感じたことは、以下だ。

「他者では無く自分で自分を救えるようになってほしい」


すずめの戸締りは、自分1人では向き合うことができないつらい闇と向き合わさせられる作品だ

つらい闇から心を救済してくれる作品だ


映画の最後、すずめが幼い頃の自分に声をかけるシーンでは特にそれを感じた。

震災後、常世でもういない母を必死に探し泣きじゃくる幼いすずめ

現代から来たすずめを見て、幼いすずめは「お母さん?」と問いかける。

幼いすずめに現代のすずめはそんな自分に「本当はもう分かってたんだよね」と声をかける。

そして、「鈴芽はこの先ちゃんと大きくなる」と自分を救う言葉をかける。

一般的に現代の映画やドラマでは、誰かが誰かを救うストーリーになっていることが多い

しかし、すずめの戸締りは、自分で自分を救うストーリーになっているのが印象的だ。

みんな、思ってる。

辛い過去と向き合うのは苦しい

1人で生きるのは辛い

けれど、すずめの戸締りを見ていると、どんな辛い過去でも乗り越えられる気がしてくる

自分を救ってくれる優しい恋人や、親などいなくても心の闇は解消できる気がしてくる。

この作品は、全体に「東日本大震災を忘れないで」というメッセージを盛り込んできている

例えば、震災の辛い過去を持った主人公、震災後の風景、心のトラウマを呼び起こすようなけたましいアラーム音などで

そのメッセージは強く伝わってくる

けれど、この作品のメッセージは、「東日本大震災を忘れない」だけにとどまっていないと思った。

震災被害者だけにとどまらず誰しもが持っている辛い過去を認め救ってあげる愛がこもっていた。

医療職として働く私にとっては、つらい状況にもがき苦しむ患者さんへの関わり方に対しても考えさせられるきっかけにもなった

わたしが勤める回復期リハビリ病院には、さまざまな状況の方が入院される

バリバリ仕事をしていた若い方が脳梗塞で半身麻痺になり自分の身の回りのことを何一つできなくなっている

子育て中のママが突然、手足が動けなくなり、子どもと会えない状況になっている

そんな患者さんを見て、人生経験の少ないわたしはどんな言葉をかけたら良いのか分からず、困る。悩む。

傲慢にも、「わたしが辛い状況の患者さんを救わなければ」という使命感に駆られる。

けれど、この作品を見て、わたしは患者さんを救わなくていいんだと思えた。

ただ寄り添えばいいんだと思った。

すずめが、大臣を通して自分の過去と向き合えたように

青年を追うことで自分の過去と向き合えたように

ひとは、自分の過去と真摯に向き合い辛かった自分の心を自分で認めてあげれると前を向ける。

だとするならば、わたしは患者さんを救う必要なんて全くない

ただ、患者さんの話にじっくりと耳を傾け、患者さんが自分と向き合うことができるお手伝いをしたらいい

そうしたら、患者さんはきっといつか自分の状況と向き合い辛い現状を受け入れることができるようになる

前を向けるようになる

わたしなんかの言葉は患者さんを変えることはできない

だから、わたしは患者さんの持てる力を信じただ隣で患者さんが自分と向き合うお手伝いをしたいと思った

自分の「看護」では無くて患者さんの「持っている力」をもっと素直に信じてみようと思えた

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