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神の料理人マサシ

「かつてここは何もないのに作物が育つってんのに気づいた奴がいてな。それで人を集めて村を作ったんだが、しばらくして神を名乗る奴が現れた。ここは私の土地だ、使うなら貢物を寄越せと。その貢物が人だったんだが、当時の村長が頭を利かしてな。今は人が少ないから30年待ってくれ、そしたら村も人が増えるからまとめて出すってな。そして今が30年目、また神が現れた。まとめて300人差し出せだとよ。そんなの知らんと今の村長が突っぱねたら一斉に作物が枯れた。そんでビビってみんな逃げ出しちまった。これが半年前の話さ」

 店主は古ぼけたカウンター席でただ一人のふかし芋にかじりつく白い異邦の服の男を見た。じっくりと芋を咀嚼し話を聞いてるのかどうか見て取れなかった。

「残ってるのは俺みたいな行くあてのない奴と訳アリもんだけ。客がいなくなったら流石に俺もどこかにいくがな」

 男は芋を酒と一緒に飲み込み、顔をあげた。

「面白い話だ。その神さんにはどこに行けば会える?」

「ここから出て右手の道を進めば洞窟があり祠がある。そこに現れるらしいが、俺は見たことなくてな。詳しくは近くに住んでるやつに聞いてくれ。ところで神に会ってどうする気だ?」

「俺はそういうのにお供え物をするのが趣味でね。ちょいと俺のモノになびくか試してみたいのさ」

 店主は歯を見せ苦笑いする。

「村長が金や宝石、珍しい絨毯、色々なものを祠に置いたが神は現れもしなかったと聞いたぜ」

 男はニヤリと笑った。

「俺のは凄いぜ。どんな金銀財宝よりもだ」

 店主と男の目が合う。男の瞳にはハッタリ、狂気ではない確かな意思が燃えていた。

「それは面白い。期待してるぜ」

 店主は相変わらず歯を見せ笑いながらも、その言葉に他意はなかった。

「ところでさっき食べた芋と酒はここで作られたものかい?」
「ああ、そうだ」

「ならいくつか欲しいね。いいお供え物になりそうだ」

【続く】

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます