「民泊を全面解禁」ってほんと?新たに登場した「管理者」ってなに?政府による最新の「解禁」案のまとめ

2016/5/13、政府が「民泊を全面解禁」するとの報道が大々的になされました。いよいよ本格的に民泊が認められると、ネット上でも歓迎する声が多く見られました。上記報道では、「簡単な手続きで民泊が可能になる」とされていますが、本当にそうなのでしょうか?新たに登場した「管理者」とは、一体なんなのでしょうか?

政府の公表資料によれば、民泊を認める範囲はまだ限定的といえそうです。また、「管理者」の要件も明らかではなく、一部ネットメディア上では、「宅建業者に限定される可能性あり」という噂もされているようです。

民泊についての現行法規制や、政府の最新の「解禁」案について、まとめてみました。

現行法規制の枠組み

まず簡単に、民泊についての現行法規制がどうなっているか、振り返ってみたいと思います。

現行法上は、ホストが旅館業法の「許可」を取ることが必要とされています。「特区」内の物件の民泊の場合には一定の規制緩和が認められていますが、その要件はかなり限定的となっています。

1.旅館業法

旅館業法では、原則として、業者ではなく個人による民泊の場合も、すべて「許可」が必要とされています。「許可」の要件として、物件・設備についての様々な基準が設けられています(例えば簡易宿所の場合、客室の床延面積33㎡以上等)。また、民泊の運営にあたり、宿泊者名簿の作成やフロントの設置等が義務付けられています。

2.国家戦略特別区域法

いわゆる「特区」内の物件の民泊については、「認定」を受ければ旅館業法の「許可」は不要とされており、一定の規制緩和が認められています。

ただ、①「特区」内の物件のみであり、かつ、②その地区で条例が制定されていること(既に制定されているのは東京都大田区・大阪府のみ)、③滞在期間が7-10日まで(7日未満の短期滞在はNG)等、「認定」のための要件はかなり厳しいといえます。

政府による規制緩和の検討

現行法下では民泊の本格的な普及は難しいため、政府では、規制緩和に向けた議論を継続して行っています。中でも、「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」において、進んだ議論がなされてます。

これまでは、まずは現行制度の枠組みの中で対応する方向で、旅館業法の「簡易宿所」として「許可制」とすべきだとされていました。これに対し、冒頭の報道にあったとおり、5/13に開かれた第10回検討会では、現行制度とは異なる「新たな制度枠組み」についての議論がなされています。

今回発表された「新たな制度枠組み」(案)とは?

検討会資料によれば、「新たな制度枠組み(案)」の概要は、年間営業日数などの「一定の要件」を満たす民泊については、旅館業法の許可は不要とされています。もっとも、安全・衛生面の確保等のため、民泊運営の管理についての一定の規制を設けるとされています。「家主居住型」の場合には、ホストは物件の「届出」を行い、自ら管理を行うとされています。これに対し、「家主不在型」の場合には、ホストは、「登録」を行っている「管理者」に対して、管理を委託するとされています。物件の「届出」や管理者の「登録」は、「インターネットを活用した手続を基本とする」とされています。なお、仲介事業者についても一定の規制を行うとの議論がされています。

1.「一定の要件」

政府は、既存の旅館・ホテルと異なる取扱いとすることについて、合理性のある「一定の要件」を設定するとされています。「一定の要件」の具体的な内容については、年間営業日数による制限(なお、イギリスでは年90日以内、オランダ・アムステルダムでは年60日以内とされています)を設けることを基本に、1日当たりの宿泊人数や延床面積制限なども含め、引き続き検討するとされています。

年間営業日数が90日等に制限されるとすれば、民泊専用物件の運用はもちろん(コストが見合わない)、別荘・空き家等の貸し出しも基本的には認められないということになります。

2.「家主居住型」vs「家主不在型」

上記「一定の要件」を満たす場合には、旅館業法の「許可」は不要となりますが、民泊が無制限に認められるわけではありません。安全・衛生面確保のため、以下のような規制を設けるとされています。

(1)家主居住型:ホストが居住しながら、住宅の一部を貸し出す場合

ホストは行政庁への「届出」を行うことが必要とされています。また、利用者名簿の作成・備付け(外国人ゲストの場合は、パスポートの写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示などが義務付けられるとのことです。

(2)「家主不在型」:ホストが不在の場合。出張や旅行によるホスト不在の場合もこれにあたる。(→Airbnb等でホストをされている方・ホストになろうとしている方の大半は、「家主不在型」にあたるのではないでしょうか。)

「家主居住型」に比べ、「騒音、ゴミ出し等による近隣トラブル…等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確」とされています。そこで、ホストは「管理者」に管理を委託することが必要とされています。管理者は行政庁への「登録」が必要とされており、利用者名簿の作成・備付けや衛生管理など、(1)と同様の義務を負うとされています。

政府の公表資料では、「管理者」の要件や、管理者に委託する際の手数料についての詳細は明らかにされていません。一部ネット上では、「管理者になれるのは宅建業者だけに限定される(その場合は委託手数料は25%になる)」といった噂も出ているようです。今後の政府の議論次第ですが、民泊の大半を占める「家主不在型」において、「管理者」が宅建業者等に限定され、高額な手数料がかかってしまうようでは、民泊へのハードルはかなり上がってしまうのではないでしょうか。

3.「仲介事業者」に対する規制

現行制度では、Airbnbなどの仲介事業者に対する明確な法規制はありません。これに対し、「新たな制度枠組み」(案)では、仲介事業者への規制についても言及されています。具体的には、仲介事業者は、行政庁への「登録」が必要とされています。また、不適正な民泊のサイトからの削除命令、不適正な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、法令違反に対する罰則等を設けることを検討するとのことです。

終わりに

現行の旅館業法の規制は、ホテル・旅館等の事業者(B to C)を念頭においた規制であり、個人による民泊(C to C)に対しては厳しすぎる規制といえます。このことからすれば、民泊という全く新しいビジネスに対して、現行制度とは異なる「新たな制度枠組み」を作ろうという方向性自体は、大きな進展と考えられます。

他方で、上記のとおり、「新たな制度枠組み」(案)の内容自体は、民泊を認める範囲がまだかなり限定的であるように思えます。これから具体的な中身を詰めるにあたり、さらなる議論がなされることに期待したいと思います。


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Anri

メルカリでLegal/IRを担当。日本/NY州法弁護士。大手法律事務所→Stanford Law Schoolへ留学。スタートアップ業界について、法律家の目線から解説します。
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