「ポケモンGO」でケガしたら誰のせい? - 事故が発生した場合の法的責任

7/22、遂に日本でも配信が開始されたポケモンGO。アメリカ・日本など世界各地で大人気となり、既に社会現象となっています。

大人気の反面、既にアメリカなどでは、ポケモンGOに関連した事故やトラブルが発生しているとのニュースも聞こえてきます。このような事故・トラブルの場合、どのような法的責任が発生することになるのでしょうか?

任天堂の責任は?ー 実はあまり関係ない?

任天堂は7/22、「『Pokémon GO』の配信による当社の連結業績予想への影響について」というプレスリリースを公表しています。上記プレスリリースによれば、ポケモンGOの開発等にかかわる3社の関係は以下のとおりです。

米国法人Niantic, Inc.:ポケモンGOの開発・配信。
株式会社ポケモン:ポケットモンスターの権利保有者として、キャラクターに関する権利をライセンス。また、ポケモンGOの開発運営協力。
任天堂:ポケモン社の株主(議決権の32%を保有)

上記によれば、任天堂は、ポケモンGOの開発運営に直接関わっていないとされています。また、ポケモンGOの「利用規約」においても、運営者等として名前が出てくるのは、Niantic社とポケモン社のみで、任天堂の名前は出てきません。よって、一次的に責任を負う可能性があるのは、Niantic社又はポケモン社であり、任天堂ではないということになります(もちろん、Niantic社又はポケモン社が法的責任を負うことになった場合には、株主として間接的に損害を被ることになります)。もっとも、上記プレスリリースでは明示されていなくても、実際には任天堂も開発に関わっていたという場合には、責任を問われる可能性はあるといえます。

Niantic社、ポケモン社の責任は?

ポケモンGOの「利用規約」については、こちらの記事等でも話題になっているところかと思います。記事にもあるとおり、「利用規約」では、ポケモンGOのプレイ中に発生した損害についてはユーザーの自己責任であること、Niantic社・ポケモン社は一切責任を負わないこと(免責)が定められています。

しかし、利用規約において免責を記載しておけば、事業者側は常に一切責任を負わない、というわけではありません。例えば、消費者契約法などの法律において、かかる免責規定が無効とされる可能性もあります。よって、上記免責規定の存在にもかかわらず、事故の発生に関して、Niantic社又はポケモン社の「過失」(注意義務違反)があるとされる場合には、Niantic社はポケモン社が責任を負うとされる可能性はあるといえます。

Niantic社又はポケモン社に「過失」があるの?

例えば、あるユーザーがポケモンGOをプレイしていたところ、ピカチュウが現れたので捕まえようとしたところ、崖から転落してケガをしてしまったという事例について考えてみましょう。そのユーザーは、Niantic社又はポケモン社に対して治療費の支払いを求めることができるでしょうか。

法律上「過失」とは、「結果を予見・回避すべき注意義務の違反」とされています。この「注意義務」として、どの程度のレベルまでの義務が求められるかによって、結論が変わってくることになります。

ポケモンGOのような、AR(拡張現実)技術を利用したゲームは、オンラインとリアルな現実世界とが融合するという新しい領域であり、その面白さは爆発的なヒットの一因になっているかと思います。他方で、上記のようなリアルな世界での事故の危険性もあるということになります。このようなゲームの提供事業者が、現実世界での事故を防止するためにどの程度の「注意義務」を果たすべきかという新しい問題について、裁判所がどのような判断をするかはまだわからないところです。もっとも、各当事者からは以下のような主張がなされることが考えられます。

Niantic社・ポケモン社の主張

Niantic社・ポケモン社としては、このような事故を回避すべき注意義務をきちんと果たしていた(=過失はない)、と主張することになります。

例えば、ポケモンGOの利用規約やアプリ、公式サイト等においては、以下のように、安全なプレイについての様々な注意喚起がなされています。

利用規約:ユーザーがポケモンGoをプレイする際の禁止事項として、不法侵入、プライバシー侵害、他者の攻撃・脅迫等を規定。
ポケモンGo公式サイト:「スマートフォンを操作するときは、周囲の安全を確認した上で、立ち止まって操作してください。」等の注意書。
アプリ起動時:「周りをよく見て、常に注意しながらプレイしてください。」という注意書を表示。

Niantic社・ポケモン社としては、これらの利用規約やアプリにおける十分な注意喚起をもって、事故を回避すべき注意義務を果たしていた(=過失はない)と主張することになると考えられます。一般的に事業者が果たすべき注意義務の程度という点からしても、この主張は説得的だと考えられます。

ユーザー側の主張

もっとも、ユーザー側の反応の余地が一切ないというわけではありません。前述のARゲームの特殊性からすれば、より高いレベルの注意義務が求められるべきであり、注意喚起のみでは十分な注意義務を果たしていたとはいえない、という主張も考えられるかもしれません。

アメリカでは、ポケモンGOのようなAR技術を利用したゲームの提供事業者の法的責任について、既に様々な議論がなされています。上記のような注意義務の程度に関しては、「崖のような危険な地域にはモンスターやポケストップを表示させないような措置を取るべきである、このような措置を取っていない以上、注意義務を果たしたとはいえないのではないか」という意見も出ているようです。

終わりに

ポケモンGOのようなAR技術を利用したゲームの提供事業者の法的責任について、今後アメリカ等において具体的な判例が出てきたり、何らかの法規制の議論がなされる可能性も高く、注目しています。

日本においてはまだ議論は始まったばかりですが、当局の関心もかなり高いといえます。内閣サイバーセキュリティーセンターからは、7/20付で、ポケモンGoに関連するトラブル防止を注意喚起する通知がなされています。報道によれば、7/22、自民党のIT戦略特命委員会でも「ポケモンGO」について意見交換がなされ、とにかく規制というよりも、地方創生等社会にポジティブな影響を与えられるよう知恵を絞っていきたい、といった議論がなされたようです。

上記のような具体的な事故・トラブルの事例が出てきた場合にどのような判断が下されるか、1ユーザーとしても法律家としても、興味深く見守っていきたいところです。


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Anri

メルカリでLegal/IRを担当。日本/NY州法弁護士。大手法律事務所→Stanford Law Schoolへ留学。スタートアップ業界について、法律家の目線から解説します。
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