見出し画像

当直前に知っておきたいマイナーエマージェンシーのスライド3選

当直をしていて困った時にすぐに相談できる相手がいると助かりますよね。他科コンサルトといえば、手術適応については腹部外科や脳神経外科、カテーテル治療については循環器内科などが多数を占めると思います。

しかし、時々やってくるマイナーエマージェンシーはどう対応していますか?たまたま眼科や形成外科の先生が当直していればラッキーですが、なかなかそうもいきませんよね。今回は、当直の時に知っておくと便利なマイナーエマージェンシーについてのAntaa Slideを紹介します。

眼科救急は、緑内障発作、眼窩骨折、角膜化学外傷

頭痛はよく診る救急疾患のひとつですが、脳卒中やくも膜下出血などの頭蓋内病変は見逃したくない疾患です。それと同じく目の救急疾患である急性緑内障発作も見逃せません。頭痛の患者を診察する時には必ず目の診察をしましょう。

外傷の眼窩骨折や角膜化学外傷も、急性期に適切な対処ができるかどうかが重要ですよね。当直する病院に眼科の先生が必ず待機しているわけではない場合は、ドクターK先生のスライドは要チェックです。ドクターK先生は眼科救急の疾患として、緑内障発作・眼窩骨折・角膜化学外傷をピックアップしています。

緑内障発作は高齢、女性、遠視の方に起こりやすいですが、高齢者では眼痛がはっきりせずに頭痛、嘔気、嘔吐などの非典型的な症状になることもあります。ですが、目の診察をすれば、充血や瞳孔散大(ただし中等度)などの所見をみつけることが可能です。頭痛の診察では、必ず目も診察しましょう。

眼窩骨折と外眼筋の絞扼を疑う眼球運動障害や複視がある場合には、24時間以内の緊急手術が必要です。当直後に必ず眼科にコンサルトしましょう。目の化学外傷では、目を水道水で10分以上、来院後には生理食塩水などで10〜20分洗浄することで異物を完全に除去することが重要です。眼科救急はルーチンで眼の診察を加えること初期対応が大切ですので、押さえておきましょう。

鼻骨骨折は当直帯で鼻出血を止めて、翌日早めに形成外科・耳鼻科にコンサルトしよう

顔面外傷でも比較的多いのが鼻骨骨折です。見た目にも鼻が腫れて、痛みが強く出たり、鼻出血していたりと、鼻骨骨折の診療ポイントを知らないと少し焦ってしまうかもしれません。

鼻骨骨折の初期対応をどうすればよいかわからない先生におすすめなのが、shun@形成外科先生の「救外やるなら知っておきたいシリーズ」の鼻骨骨折のスライドです。鼻骨骨折の診断時には、見た目で鼻が変形しているかどうかだけではなく、受傷前後の比較も重要です。患者のスマホや携帯に受傷前の写真があれば比較してみましょう。

画像検査はXp、CT、エコーがありますが、Xpでは骨折検出には限界があり、確定のためにはCTが必要なことが多いです。CTは水平断だけではなく、矢状断、冠状断なども追加しましょう。妊婦や小児の場合にはエコーも有用ということで、普段から使い慣れておきたいですね。

鼻骨骨折では鼻出血していることが多く、スライドでは止血手順も示されています。まずは尾翼を鼻中隔のキーゼルバッハ部位をしっかり圧迫するように、抑えるのがポイントです。血液を誤飲してしまうと嘔吐作用があるため、飲まないように喉に流れた血は出してもらうように患者に伝えましょう。

鼻骨骨折の手術時期には2〜3週というlimitがあり、腫れが引いてから評価する場合にはlimitに注意しましょう。診察や画像検査で強く骨折を疑う場合には、手術期間を逃さずにコンサルトするようにしましょう。

小児科以外でも対応することの多い肘内障、整復方法の勉強には動画が有用

休日の日直・当直中に多いのが、小児のマイナートラブルです。中でも肘内障は典型的な経過・症状で診断自体は簡単かと思われますが、整復方法やご両親への対応などのコツがあります。鈴木政志先生のスライドで、今一度、肘内障の勉強をし直しましょう。

肘内障の典型的な受傷起点は、転びそうになって引っ張った時ですが、寝返りでの上肢巻き込みでも起こります。診断ではエコーも有用で、回外筋の関節内への巻き込み(Jサイン)を確認するのがポイントです。

整復法として回内法、回外法がありますが、どちらも整復率は変わらないようです。実際には何回かやってみて、整復できなければ方法を変えてやってみるのがよさそうですね。

手技系全般に言えることですが、整復方法の手順はyoutubeなどの動画コンテンツが非常に有用です。スライドでは、おすすめの動画も紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

整復ができても、骨折の有無と可能性について常に意識しましょう。家族にも骨折の可能性があるため、1週間以上痛む場合は受診を促すことが大切です。方法を変えたり、術者を変えたりしても整復できない時は、三角巾で90°肘屈曲で固定して、翌日に整形外科などに再診指示を出しましょう。

当直帯でできることとコンサルトのタイミングを知ろう

マイナーエマージェンシーで知っておくべきポイントは、見逃せない疾患の除外と、止血などの初期対応をした後にタイミングを逃さずに専門家にコンサルトすることです。紹介したスライドのtake home massageを生かして、マイナーエマージェンシーにも焦らずに対応できるようになりましょう。

Antaa Slideは各科の検索もできるようになって、さらに使いやすくなりました。命の危険はないけれど、ちょっとした臨床の疑問を解決するのにとても便利です。

実はAntaaにはAntaa QAという機能もあり、こちらはより具体的な質問ができます。眼科や皮膚科、耳鼻科、泌尿器科など多くの科のQAが蓄積されており、ピンポイントで疑問が解決できるのも魅力です。ぜひ活用してみましょう。

文責:すたば@救急、産業医